左)新津祥太、中央)井上里英香、右)鈴木淳哉
Image by: FASHIONSNAP

Fashion インタビュー・対談 Promotion

【鼎談】フリマアプリマーケティングが流行り?デザイナーズブランド3組が語るファッションビジネス

左)新津祥太、中央)井上里英香、右)鈴木淳哉
左)新津祥太、中央)井上里英香、右)鈴木淳哉
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 ファッションブランドが今、大きく変わろうとしている。ファストファッションに加え、卸を行わず自社ECを通じて商品を販売するD2Cブランドの登場など、テクノロジーの進歩により従来のモデルからビジネスシフト。転換期を迎える2018年、国内のデザイナーはどう対応していくのか。「ダブレット(doublet)」の井野将之、「ウジョー(Ujoh)」の西崎暢、「チノ(CINOH)」の茅野誉之など海外含め活躍しているデザイナーが多数在籍した「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」のプロ部門を受賞した「リエカ イノウエ ヌー(RIEKA INOUE GNU)」「ニーツ(niitu)」「クロマ(chloma)」のデザイナーが語るこれからのファッションビジネス。

 

RIEKA INOUE GNU・・・文化ファッション大学院大学卒業後、Yoji Yamamotoやオンワード、ベイクルーズで経験を積んだ井上里英香が2014年に立ち上げたウィメンズブランド。コンセプトは「着る人が自身の為に着る」。

niitu・・・Vantanデザイン研究所出身の長男 新津祥太と四男 新津志朗の新津兄弟が2011年に立ち上げたユニセックス「現代和服」ブランド。和服のように直線的で年齢、体型を選ばない服を展開。

chloma・・・モニターの中の世界とリアルの世界を境なく歩く現代人のための環境と衣服を提案する、鈴木淳哉と佐久間麗子によるファッションレーベル。

クリエーションとビジネスの両立

ーブランドの立ち上げを振り返って

新津祥太(以下:新津):僕はバンタンを卒業してから企業でパタンナーとして働いていました。充電期間を経てブランドを立ち上げたんですが、当時は生産背景などが全然わからなくて苦労しましたね。

井上里英香(以下:井上):私はヨウジヤマモト、オンワード、ベイクルーズで色々勉強できたのが後のブランドデビューにとても活きていると思っています。ただ特に経営のこととなるとやはり分からないことがことが多くて(笑)。

鈴木淳哉(以下:鈴木):パリ留学からの帰国後どこにも就職しないでそのままブランドを始めたので、当時は本当に分からないことばかりでした。

井上:エスモード在学中から卒業後はブランドを立ち上げようと考えていたんですか?

鈴木:そんなことはなくて、結構行き当たりばったりでしたよ(笑)。きっかけを与えてくれたのは、当時新宿に店舗を構えていたセレクトショップの「CANDY」です。学生の頃から作品を展示したいと興味を持って頂けて。衣装の仕事を頂いたりもしましたね。パートナーの佐久間(佐久間麗子)は就職していたので、当時は彼女の仕事が終わって2人でデザインに取り組んでいたのですが、掛け持ちするのがいよいよ大変になり、彼女が退職したことを機にクロマをはじめました。

ーデザイナーはクリエーションだけではなく、ビジネスとの両立も求められますよね

新津:毎年売上目標はしっかり設定するようにしていますね。

井上:「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」のビジネス支援の一環で、否が応でも目標が設定されるので、それに向かってという感じですね。

鈴木:第3者に入ってもらいビジネス目標を考える機会を与えてくれるのはかなり大事ですよね。

新津:いいですよね。立ち上げたばかりの頃は過去の実績がなかったので目標が立てづらかったですが、シーズンを重ねるごとに前年データが取れるようになるので、やるべきことがクリアになったと思います。

鈴木:ただ売れるかどうかわからない挑戦的なアイテムもコレクションに入れるので、その辺りは正直数字が読みにくいなと。

新津:そうですね。逆に「攻めすぎたかな?」と思っていた商品が一番に完売したりすることもあるので、ファッションって難しいですよね。ニーツというブランドにお客さまが求めているものがデザイン性のあるものなんだと思いますが。

鈴木:当たり障りのない服だったら、いくらでも安価で手に入りますからね。僕達のようなインディペンデントブランドの入り込む余地はない。普通とは違うというところでお客さまが価値を感じてくれるようなものを作らないとだめなんだと思います。

井上:私はどんどんパーソナルなものになっていかないといけないと考えています。「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」が話題になっていますが、これからAIなどのテクノロジーがどんどん発展して、ネット上でパーツもサイズもカスタムできて、いつでも自分が欲しいものが手に入る時代が来ると思うんですよね。そうなったときにリエカイノウエヌーのような規模感のブランドが大手と同じことをしても勝てるはずがないので。ただ、この規模だからこそできることはたくさんあると思っていて。自社ECでお客さまに向けたパーソナルサービスを提供するとか、そういうことが必要になってくるんだと思います。

ri20180201_a.jpgRIEKA INOUE GNU 2018 S/S Collection

鈴木:僕はクリエーター系のブランドの強みは、お客さまに近くに感じてもらえることだと思っていて。物理的な距離感という意味だけではなく、お客さまに「私のためのブランドなんだ」などと思ってもらえるような、心の奥に入り込めるキメ細かいクリエーションがクリエーター系ブランドの武器になると思います。

新津:今はツイッターなどSNSで情報の発信もしやすいですし、フォロワーが多い人とコラボとかするとそれで名前を知ってもらえることもあります。そういうプロモーションの仕方も、小さな規模感でも工夫次第でいくらでもできるようになったことで、できることは増えたなと思いますね。

メルカリはマーケティングに使える?

ー2次流通市場が拡大しています。フリマアプリが流行っていますが、自分が作った服が出品されているかチェックしたりしますか?

全員:見ます(笑)。

井上:いくらで売られているんだろうと、どうしてもエゴサーチはしちゃいますね(笑)。

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ー作り手としてはどういった気持ちなんでしょうか?

井上:コメントによりますね。出品者の商品説明を読むと、気に入っていたか気に入らなかったのかがよくわかりますから。

新津:着用なしって書かれているのは流石に悲しいですけどね(笑)。

鈴木:ただこの状況ってかなり重要なリアリティだと思うんですよね。メルカリを見ると自分のブランドがどういうブランドと一緒に検索されているのかも分かるので、お客さまがどういう風にブランドのことを見ているかが分かる。あと中には市場に出てる数の割に出品数が少ないアイテムもあって、それはずっと着てもらえている顧客満足度の高い商品だったのかなと分析でき、次のコレクションに活かしたりします。消費者の率直な意見が反映されてたプラットフォームだと思うので、マーケティングツールとして活用すればビジネスにもクリエーションにも広がりが出ると思いますね。

ー買い方が多様化してきた中、卸売を中心としたビジネスモデルが見直されつつあります

新津:正直以前は卸は無くてもいいかなと思っていましたね。ただとても優秀な営業が入ったことで考えを改めました。ECとポップアップだけで展開していく計画でしたが、営業のお陰で卸の売上が伸びたのでだったら続けていこうと。ただ卸の売上の比率は10%以下になることもあるので、規模的にはまだまだですが。

鈴木:そういえば原価率を公表するECブランドが出てきましたよね。

新津:あれって利益確保できるんですかね?

井上:卸を一切やらないなら可能だと思います。実はうちでもその話は一度議題にあがって。ただやはり今の時点で卸がゼロになるのは困るのでなしになりましたが。

鈴木:ファッションとしての差別化が難しくなる中で、アパレル製品の強みを文字にしてネットで伝播させることができる製品は強い、バズりやすいというのはわかります。ただ僕自身はアパレル製品ではなくファッションを第一に届けたい思いがあるので、そのような手法を取ることはないと思います。

新津:井上さんは卸を増やしていきたいですか?

井上:増えたに越したことはないとは思ってます。ただ今は休業中の自社ECをしっかり整えることの方が大事かなと。自社ECだと利益率も高いので。

ニーツは何度か海外で展示会を行っていますよね?

新津:中国に3回ほど出展しましたね。やはり最初は、どのショールームを選べばいいのかなどがわからず苦労しましたが、準備が整った前回でようやく成果を上げることができました。鈴木さんは海外はまだですか?

鈴木:まだ出展したことないので、色々勉強したいんですよね。デザイン企画の仕事は一度海外企業からオファーされたことはありましたが。井上さんも海外に出展していますよね?

井上:パリは継続して出展していて、次の3月で3度目になります。やはり「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」の展示会支援が大きくて、自分だけではお金がかかりすぎて難しかったんですけど支援のお陰で継続することができています。

新津:パリは単独で出ているんですか?

井上:いいえ、ショールームにお願いしています。出展料も約5000ユーロくらいで、パリのショールームの中では良心的というか。

新津:やっぱりショールームと契約することが大事ですよね。ニーツはこれまで台湾、香港、中国に出展してきたんですが、結局ショールームを見つけてからビジネスに繋がったというところがあって。現地のことを知っている人がサポートしてくれることはかなり重要だと思いますね。

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鈴木:言葉の壁もありますからね。クロマは国内がまだまだで、海外出展は時期尚早だと思っているんですが、実はアメリカの方からの反応が良いということで、自社ECを海外向けに対応するとか、そういうところから地道にやってきたいと考えています。

他業界に負けてない?ファッションの素晴らしさ

ー今後取り組んでいきたいことは?

新津:まずはブランドのことを知ってもらうことが必要だと思っています。せっかく「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」を頂けたので、この支援を活用して僕の実家が大工なのでワークマンや寅壱といった企業とコラボレーションしてみたいですね。あと音楽ユニット「ガルニデリア(GARNiDELiA)」の衣装を作る予定です。

井上:いいですね、そのコラボ。

新津:あとはランウェイにも挑戦したい。支援のお陰でチャレンジしやすい環境ではあるので。

井上:わたしは別ラインを立ち上げ、ムスリムも着られるモデストファッションっていうのをやっていて。肌を隠さなければいけないムスリムのみに向けたものではなくて、日本人も夏に日焼けが嫌で長袖を着るように、みんな等しく肌を隠す、つまり同じものを着ることの楽しさというものがファッションにはあるんだということを伝えたくて立ち上げたんです。まだまだ日本ではモデストファッションが知られていないので、今後は認知拡大に力を入れたくて、そのため今イベントを計画しています。「Amazon Fashion Week TOKYO」の開催時期に合わせてモデストファッションを発信するイベントをできればと調整しているところです。

鈴木:なぜムスリムファッションに興味をもったんですか?

井上:単純にイスラム文化が好きなんですよ。好きでよく旅行に行って建築や食文化に触れていたんですが、そういえば日本にはイスラム文化に触れる場所があまりないなって。インバウンドで観光客が沢山来ているのに、イスラム圏の人たちに向けたサービスがないというのは勿体無いないなと感じたんです。ファッションの側から何か出来ないかと考え、始めたのがムスリムも着られるモデストファッションです。

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ークロマはどうですか?

鈴木:クロマはファッションVRショッピングサービス「STYLY」などを手掛ける「Psychic VR Lab」と米国のIT系イベントに出展する予定です。Psychic VR Labとは世界初となるMRを駆使した販売会など、さまざまな形でコラボさせて頂いていて、デジタルを駆使したファッションの新たな表現を考えています。あと皆さんと同じようにブランドのことを多くの人に知ってもらいたいというのがありますが、やってみたいこととして、コレクション発表時期や回数を独自のものにしたいと考えています。今の現代人の心の感覚には半年に一回というサイクルがあっていないような気がするんですよね。

井上:それは思いますね。年に2回はこれまでの商習慣でしかないですから。

鈴木:そうですね。海外ブランドもコレクションの発表の時期をずらしたり、See Now Buy Nowを導入したり、メンズとウィメンズを統合したりと試行錯誤していますが、それって今の商習慣が果たして現代の実情に即しているのかと疑問をもつ人が増えているからなんだと思います。

ー現在の国内アパレルの市場規模は1990年代の3分の1(約9兆円)に縮小。ネガティブな意見も多い

鈴木:僕はこの業界の人はファッションを卑下しがちだと思っていて、もっとファッションの素晴らしいところを言っていくべきだと思っていて。ITやAIの技術進歩を見ていると、ファッションってなんて古めかしいものなんだと思ってしまいがちですが、SNSが普及してより鮮明になったパーソナライゼーションというキーワードにずっと寄り添ってきたのってファッションだと思うんですよ。それぞれにカスタマイズされたスタイルを提供するっていう。「ファッションは死んだ」という言葉で冷めた態度をとるのではなく、もっとポジティブに捉えていくことが大切だと思います。

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新津:ファッション業界を褒めることってほとんどないですもんね。デザイナーとしてファッションの楽しさを伝えていく必要は確かにありますね。

鈴木:例えばニコニコ動画などで二次創作が流行りましたが、でもそれってファッションが常にやっていることで。デザイナーが一次創作だとしたら、お客さまはそれを自分なりにスタイリングして新しい価値を創るという、まさに二次創作として消費していますから。色々と見つめ直してみると、他業界をリードすることってファッションの世界には結構あると思うんです。だから僕達デザイナーはもちろん、ファッションに携わる全ての人が自信を持って、盛り上げていけばもっと楽しい業界になると信じています。

Tokyo新人デザイナーファッション大賞
1984年オンワード樫山により創設され、これまでに数多くの著名デザイナーを輩出。学生を対象とした、応募数で世界最大級のアマチュア部門に加え、2011年にスタートしたプロ部門では、世界で活躍できるデザイナーを発掘してビジネス支援を行なっている。

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