Image by: ©Miyu TAKAKI

Lifestyle きっと誰も好きじゃない。

【連載:きっと誰も好きじゃない。】8人目-紳士的ですごくスマートな台湾人の彼

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 死ぬほど人を好きになったり愛したりなんてできないのかもしれない。そんな諦めの気持ちと、それでもやっぱりどこか諦めきれない自分。そこで私は、真の愛を掴むべく出会い系アプリを使ってみようと決意した。「きっと誰も好きじゃない」のかもしれないけれど。時間を共にし、話したことや出来事を、撮ってもらった私自身の写真とあわせて綴る出会い系アプリで知り合った男性とのおはなし。8人目は韓国料理レストランで会った30歳のNさん。

(文・写真:高木美佑

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火曜日@韓国料理レストラン 30歳 Nさん

彼は台湾人だった。

英語の練習も出会い系アプリを再開したきっかけの1つでもあったから、ネイティブスピーカーではない彼と会うことは本来の目的と少しずれているかもしれないが、彼と会ったのには理由がある。

私は以前に台湾人の男性と付き合っていた。
その彼とのお付き合いの仕方は、私には初めてのことばかりであった。

寝る前に毎晩電話し、空いてる時間にはLINEをして行動を逐一報告、友人と食事などにいく場合は本当に同性の友人となのか写真を撮って送らなければいけなかった。

今までの恋人とは1日に数回メッセージを送り合う程度の関係性だったので、四六時中連絡を取り合うということを私はしたことがない。
まだ信頼される段階ではないからだと、心配させないようにと最初はそのルールに従っていたけれど、その期間が長くなるにつれ疲れてしまった。

喧嘩も増え、とうとうお別れをすることになった。

「台湾では四六時中メッセージのやりとりをすることが普通だよ」とその付き合っていた男性に言われていたけれど、他の台湾人と付き合ったことがないのでそれが本当に普通のことだったのかわからない。

他の台湾人の男性はどのような感じなのだろうと話してみたくて、会うことを決めた。

元彼と彼を比べるようなことをして最低だとも思うけれど、相談にも乗ってもらいたかったし、このままでは台湾人男性に対して苦手意識を抱いたままになってしまいそうで、そうなりたくはなかった。

彼はカフェでシェフとして働いていて、ビザのために料理の専門学校にも通っている。
カフェはだいたい朝7時から夕方16時まで営業というお店が多く、彼はほぼ毎朝5時には起きていた。

メッセージが送られてくるのはいつもそのぐらいの時間だった。

私はいつも昼近くまで寝てしまっていて、返事を返すのが遅かった。
メッセージの内容も食べ物の話が多く、お互いのおすすめのお店を教えあったりした。

自然な流れで、今度一緒にご飯にいこうと話していた。

彼は週6で早朝から夕方まで働き、唯一の休みは学校。
自由な時間は夕方以降なので、必然的に夜ご飯を食べにいくことになった。

彼がレストランを決めてくれて、お店の前で待ち合わせをした。

彼はお店のテラス席に座って待っていて、あまりにも写真通りだったのですぐに彼だとわかった。

レストランへ入って、メニューをみる。
店員さんはもちろん、私たちがつい1分前に初めて会った2人だということなど知らない。

あまり注文前に時間を割くとお店に悪いので、まるで元から知り合いだったかのように座り、何を注文するか悩む。

自己紹介、のような改まった時間がないのですごく不思議な感覚に陥った。

彼は明るい男性で、友人グループの中に1人はいて冗談をよく言うおちゃらけたタイプ。
落ち着いたセクシーな男性などとは程遠いが、男女分け隔てなく接し、みんなのムードメーカーで友達も多そうだなと思った。

初めて会った人とシェアするご飯を選ぶのって本当に難しい。

正直いって苦手だ。

私は嫌いな食べ物やアレルギーなどはないが、相手はあるかもしれない。
その時の気分や体調によって食べたいものも変わるだろう。

あまり偏らないように、お肉系を頼んだらもう一品は魚系かな?とか。
汁物もいるかな?サラダは?とか。
もちろん金額も考慮しながら。

結局お互いに食べたいものを1品ずつ頼んでシェアしよう、ということになった。

ピッチャーに入ったお水を注ごうとすると、彼がやってくれた。

「台湾では男性が女性にやってあげるんだよ」と言っていた。
そういえば前に付き合っていた台湾人の彼も、紳士的ですごくスマートなところがあった。

今となっては男女どうこうではなくどちらか気づいた方やできる方がやればいいとは思うけれど、日常的に他者へのもてなしや気遣いができるのは大切なことだとも思う。

オーストラリアでの国内旅行の話。
毎年シドニーでは年越し花火が盛大にあがるらしく、彼は去年そこで年を越したらしい。

動画を見せながら「今年一緒にいこう!」と言われ、まだ半年以上先のことなのに気が早いなと思いながらも、少なくとも彼が私との時間を嫌だと思っていないのだとわかり、安心した。

彼は本当に冗談を言ってばかりだった。

すごくおしゃべりだけれど時々私への質問を交えながら楽しく話しているので、私の方で何を話せばいいか考える必要もなく、初対面にも関わらずとても気が楽だった。

韓国料理なので少し辛く、私はよく水を飲んだ。

コップの水が減るとすぐに彼が毎回お水を注いでくれた。

よく気が利く人だなと思った。

空いていた店内も私たちが食事を食べ終わる頃には満席になっていて、テラス席まで埋まっていた。

レストランの近くには大きな原っぱのような公園がある。
夜になるとそこへネズミのような動物が現れるから、少し散歩をしに行こうとなった。

公園は暗かったけれど、目を凝らすとたくさんの動物がいた。

なんという種類なのかわからなけれど、ウサギとカンガルーとネズミを足したような生き物。
朝は現れず夜行性なので、昼まで寝ている私みたいだね、と彼がおどけた。

レストランでは賑わっていて、少し話辛かったので、ようやく落ち着いて話すことができたような気がした。

次の日、彼は朝6時から仕事だと聞いていたので、私はチラチラと時間を気にしていた。

10時ごろになり、そろそろ帰ろうかと話した。

そこから私のトラム乗り場まで歩いた。
私もGoogle Mapを使い道のりを調べたけれど、彼が全て道案内をしてくれた。
トラム乗り場へつくと、次のトラムが来るのは20分後。

「もう待つだけなので1人で大丈夫だよ」と伝えたが、「1人では置いていけないよ」と言い、ベンチに座りトラムを待った。

人通りは少なく、雰囲気はかなりロマンチック。

こういうドラマチックな雰囲気になると、どうも自分を客観視してしまう。

幽体離脱のようにもう一人の自分が体内からするすると浮上し、頭上3メートルぐらいの位置で寝そべって頬杖をつきながら、私を上から眺めている気がする。

少女漫画のようなシチュエーションにいる自分にこっぱずかしくなるのだろう。

トラムが到着する前に、彼の写真を1枚撮った。
そして彼に「次はあなたの番だよ!」と言ってカメラを手渡す。

背景をどこにするか悩んだあと、「ワン、ツー、スリー」といって1枚撮ってくれた。

「どんな男の人が好き?」と聞かれた。

私が返答に悩んでいると彼が先に答えてくれ、「食べることを楽しめて、僕のジョークを理解してくれる人」だと言った。

彼は料理を作ることも食べることも本当に好きなんだなと思った。
それだけ自分の仕事をプライベートでまで愛せて、さらにそれをパートナーとも楽しめるなんてとても素敵だ。

私は悩んだ末、「私がまだ精神的に子どもだから、子どもじゃない人」と言った。
前の彼とはお互い精神的に幼かったせいで喧嘩ばかりだったとも。

ロマンチックな雰囲気のせいか、眠気のせいか、話す話題がいよいよなくなったのか、彼はすこし静かになった。

トラムがやってきて、彼は「家に着いたら教えてね」と言ってバイバイをした。

家に着いて、メールをした。

「今日はありがとう、楽しかった、おやすみなさい」というような内容のメッセージ。
11時を回った頃だった。

すぐに返事は来たけれど、その時彼もすでに家に着いていたのだろうか?

次の日、彼は寝坊せずに仕事へ行けただろうか?

企画協力:Tomo Kosuga

高木美佑/Miyu TAKAKI
写真家。1991年生まれ、東京都在住。
男性の理想体系:平均身長・中肉中背(老後の介護を考慮して)
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インタビュー記事:若き写真家の肖像 -高木美佑-

きっと誰も好きじゃない。
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5人目-指の爪が黒く染まっていた職人の彼
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