Image by: ©Miyu TAKAKI

Lifestyle きっと誰も好きじゃない。

【連載:きっと誰も好きじゃない。】9人目-華奢でお洒落なアメコミ好きの彼

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 死ぬほど人を好きになったり愛したりなんてできないのかもしれない。そんな諦めの気持ちと、それでもやっぱりどこか諦めきれない自分。そこで私は、真の愛を掴むべく出会い系アプリを使ってみようと決意した。「きっと誰も好きじゃない」のかもしれないけれど。時間を共にし、話したことや出来事を、撮ってもらった私自身の写真とあわせて綴る出会い系アプリで知り合った男性とのおはなし。9人目はオーストラリア ノースコート駅で会った23歳のJさん。

(文・写真:高木美佑

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日曜日@ノースコート駅 23歳 Jさん

オーストラリアへ来て1ヶ月ほどが経った。

最初にメッセージを送ってきてくれたのは彼の方からで、短い日本語のメッセージだった。

彼は去年一年間、日本へ留学に行っていたので日本語が少し話せて、留学中は東京に住んでいたらしい。

メッセージのやりとりをしている最中、私がおかしな英語を使うと訂正してくれたり、英語のことを色々と教えてくれた。
性的なメッセージを送ってくる人もいる中で彼はそんな気配もせず、恋愛に発展はせずとも良い友達になれそうな気がしていた。

プロフィール写真でみた彼の髪の毛は長く、華奢で、一言でいうとフォトジェニック。
センスがいい人なのだろうと思った。

彼は1人で音楽を作っている。

SoundCloudのURLを送ってくれ、音楽のジャンルはうまく言葉でいい表せないけれど天気のいい日に散歩をしながら聴きたくなるような、それでいて洒落ていてとても格好良かった。

人付き合いをする上で、根本的なところで自分と似た感覚だったり、良い・悪いとするものが自分と同じというのは重要だと思うけれど、年齢を重ねるにつれ、そもそもその事の確認作業がとても難しい。

時間もかかるし、まず自分をさらけ出す勇気も必要だし、その結果嫌われてしまうリスクもある。

その点まず最初に自分の制作物を相手に見せるということは、手っ取り早く確認できる1つの手段だなと思う。

住んでいるところも比較的近く、彼の家は自転車で20分ほどの距離。

私はまだその町へ行ったことがなかったし、彼も少し前に引っ越してきたばかりだというので、そのあたりを散策してお茶でもしよう、と話していた。

当日、とても天気が悪かった。
晴れていたら自転車で向かおうと思っていたけれど、雨も横降りで風も強く、とても自転車に乗れるような天気ではなかった。

諦めてバスで向かうことにした。

待ち合わせ場所は駅の前。
けれど改札は2つありどちら側に行けばいいかわからず、試しに手前の改札へ向かうと、彼らしき人がいた。

彼の長い髪のおかげで、遠くからでもすぐにわかった。

彼も私に気づき、お互い手を振り、挨拶をした。
こんな悪天候にも関わらず彼は傘を持っておらず、髪の毛はシャワーで濡れているのかこの雨で濡れているのかわからなかった。

聞くと、「これはシャワーのせいだよ」と笑った。

雨が落ち着くまでお茶をしようと、近くのカフェへ向かった。
そこはビーガンカフェだった。
彼はグルテンフリーだそうだ。
外は少し寒かったので私はホットコーヒー、彼はチャイを注文した。

飲みながらお互いのことを質問し合った。

「どうして日本へ留学しようと思ったの?」と訊くと、彼は「日本の文化が好きなんだ」と答えた。

今は中国語とイタリア語も勉強していて、今年が大学最後の年。
今はハウスメイトと4人で住んでいる。
そのうちの1人が良いレコードプレーヤーを持っていて、とても幸せだと話した。

日本で段ボールいっぱいにレコードを買って帰ってきたらしい。

私が写真をやっていることは会う前からメッセージで伝えていて、「僕の写真もいつか撮ってね」と言ってくれていた。
そのためこの日は一眼レフも持って来ていた。

しばらくすると雨があがり、店内にも陽の光が差し込んできた。
そこで彼の写真を数枚撮る。

彼もカメラが気になったようで、「のぞいてみたい」、と言った。
「撮ってもいいよ」とカメラを渡し、彼も私の写真を撮った。

外国人と会うとみんな自分より大人っぽく見え、よく相手の年齢を忘れてしまう。
けれどカメラをのぞいて無邪気にはしゃぐ彼をみて、彼が年下だということを思い出した。

コーヒーはすぐに飲み終わってしまった。

初対面の人と会って話しているとき、そわそわして手元が落ち着かず、何度も何度も飲み物を口に運んでしまう。

そのせいでいつも飲み物がすぐになくなってしまう。

お冷まで飲み終わってしまった。
もうカップになにも入っていないのに、カップに口をつけ飲んでいるフリをしてしまうことさえある。

彼の好きなミュージシャンを教えてくれた。
すぐに聴いてみたかったけれどWi-Fiもなかった為、名前だけメモをとる。

見た目もお洒落で、なにより彼が勧めるくらいならカッコ悪いことはないだろうと思った。

彼が突然小さな声で「やばい」というので何事かと思うと、水の入ったピッチャーに虫がとまっていた。

幽霊でも見えたかのように言う彼がとても面白いなと思った。

雨もすっかりあがり、彼もチャイを飲み終えたところで、外へ散歩にでた。

カフェの目の前の通りはこの町の所謂メインストリートで、レストランやバーなどの飲食店のほか、洋服屋さんやお花屋さん、リサイクルショップなど、いろんなお店が立ち並んでいる。

なんとなく気になる雑貨屋さんに入り、彼はお店にあるふざけたサングラスをつけてみたり、マンガを読んだりした。

セレクトショップのようなところで1着とても可愛いワンピースを見つけたけれど、初対面の異性と居るときに試着をしたり全力で買い物をする勇気が出ず、そのワンピースを諦めたことを今でも少し後悔している。

少し歩いたところで、彼が「お腹すかない?」と訊いてきた。
「ぺこぺこという訳ではないけれど、小腹がすいたかな」と答えると、なにか軽く食べようかということになった。

とはいえ彼はグルテンフリーなので、何処でもいいという訳でもない。

近くにベトナム料理屋さんをみつけ、そこへ向かった。

私はフォーを注文し、彼も名前は忘れてしまったけれどめん類を頼んでいた。

オーストラリアではグルテンフリーやヴィーガン用のメニューがあるお店も多いけれど、日本にはまだあまり無くて、だから日本にいたときは外食するのがすごく大変だったと言っていた。

私も海外に来るまでは、全く考えてもいないことだった。

そのあと、私が漢字を教えたり、彼がまた英語について教えてくれたりした。

人と会う事に利益や見返りは特に求めないけれど、なんだかとても有意義な時間を過ごした気がした。

食べ終わり、私の帰る道の方まで一緒に歩いた。
途中に雑貨屋さんがあり、お店の外にシンプソンズのポスターが貼ってあった。

彼はビーバス・アンド・バットヘッドなどのアメコミが好きなようで、「私もサウスパークとか好きでDVDも持っているよ」と話すと、「ほんと?あれ観たことあるの?」とまた無邪気に話した。

雨上がりで空気が澄んでいて、夕日がとても綺麗だった。

彼の写真を1枚、使い捨てカメラで撮る。
そのカメラを彼にそのまま渡した。

彼は「3、2」と、「1」を言い終わる前にシャッターを押した。

バイバイをする手前の曲がり角で、「またね」「今度はライブに行ったりしよう」と話して別れた。

しばらく歩いて振り返ると、彼もこちらを向いていて、大きく手を振り合った。

企画協力:Tomo Kosuga

高木美佑/Miyu TAKAKI
写真家。1991年生まれ、東京都在住。
恋人に作って欲しい料理:チャーハン
Instagram

インタビュー記事:若き写真家の肖像 -高木美佑-

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