「オン」の次なる一手は“ジェリーシューズ”? 撮影厳禁のラボで見た新デザイン開発
文・五十君花実

左上から時計回りに、LightSprayで製造した「オン」の最新シューズ、オンのパリ・シャンゼリゼ旗艦店内観、「ロエベ」とオンがコラボした「LightSpray Cloudmonster」、「ヘブンリー ジェリー」のパンプス

左上から時計回りに、LightSprayで製造した「オン」の最新シューズ、オンのパリ・シャンゼリゼ旗艦店内観、「ロエベ」とオンがコラボした「LightSpray Cloudmonster」、「ヘブンリー ジェリー」のパンプス

左上から時計回りに、LightSprayで製造した「オン」の最新シューズ、オンのパリ・シャンゼリゼ旗艦店内観、「ロエベ」とオンがコラボした「LightSpray Cloudmonster」、「ヘブンリー ジェリー」のパンプス
この夏、「ジェリーシューズ」と呼ばれる、PVCやラバーなどでできたきらめくゼリーのようなシューズが女性たちの心をつかんでいます。代表格は韓国の「ヘブンリー ジェリー(HEAVENLY JELLY)」ですが、記者は出張先のスイスで、ジェリーシューズの新機軸になるかもしれない一足に出会いました。作っていたのは、スポーツブランドの「オン(On)」です。
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ジェリーシューズとは?

Image by: FASHIONSNAP
PVCやラバー素材などを使用した、ゼリーのようなクリアな質感が特徴のシューズ。写真の韓国発「ヘブンリー ジェリー」は、ビーズチャームのカスタマイズが人気。
スプレー噴射で描き出す繊細なレース模様
オンは6月、世界各国から集まったメディア関係者に、スイス・チューリッヒ本社内の研究開発施設「On Lab」(以下、ラボ)を初めて公開しました。そこではスニーカー開発のキモであるミッドソールの素材や発泡技術の研究、トップアスリートと組んだデータ収集などが行われており、ラボはオンの強みの源泉とも言える場所。そうした技術開発に加えて、デザイン開発の文脈でも新しい取り組みがなされていました。それは、オンの独自技術「LightSpray(ライトスプレー)」のファッションスニーカーへの応用です。
LightSprayとは、ロボットアームから全長約1.5kmにおよぶ糸状のTPU(熱可塑性ポリウレタン)をラスト(足型)に吹き付け、完全自動化のもと約3分でアッパーを作り上げるオンならではのシューズ製造技術です。スニーカーは通常、200近いパーツを縫製・接着して組み立てますが、LightSprayは一本の糸から一つの工程でアッパーを成形することで、軽量化や生産工程の短縮、環境負荷の低減を可能にしました。





LightSprayで製造したシューズは半透明のアッパーが特徴。エリートアスリート向けランニングシューズ「LightSpray Cloundboom Strike 2」。発売時の価格は4万4000円
Image by: On
LightSprayを採用したシューズは、現時点ではエリートランナー向けをはじめとする高機能パフォーマンスシューズが中心。しかし、オンはその技術を応用することで、機能性だけでなく新しいデザイン表現も生み出すことを模索しています。「まだ開発段階」として、写真撮影が固く禁じられた一角に並んでいたのは、半透明のアッパーに花柄や幾何学柄がレースのように浮かび上がったプロトタイプの数々。ロボットアームの動きを緻密に制御し、場所によってTPUの吹き付け量を変えることで、アッパーそのものに透かしのような模様を描き出していました。
柄だけでなく、多様な色彩表現も注目ポイント。現在販売されているLightSprayシューズは無着色の白をベースに、一部分にブランドロゴをプリントしたアッパーが中心ですが、ラボにあった試作品のアッパーは、パステルカラーから濃色までバリエーションがずらり。TPUのペレットを着色することでアッパーに色付けができるそうで、着色によって耐久性などにどのような変化が生じるのか、細かなテストを重ねている段階だといいます。
ロエベとのコラボにもLightSprayが登場
「これらはいつ発売するのか」と尋ねても、返ってきたのは「まだ開発中のプロトタイプであり、具体的な発売時期は決まっていない」という答え。それでも、ランニングシューズを主軸に急成長しつつ、近年はライフスタイルやアパレルなど、ランニング以外の領域にも成長の裾野を広げているオンだけに、そう遠くない未来にLightSpray製のジェリーシューズがお目見えするのでは、と期待してしまいます。実際に、決算資料にも「LightSprayはエリートアスリートに評価される製品という段階から、より幅広い商業プラットフォームへと移行」といった言及があります。
実は、その予兆とも言える製品はすでに登場しています。オンは2022年春から続く「ロエベ(LOEWE)」とのコラボレーションの中で、LightSprayを採用した「LightSpray Cloudmonster」を今年5月に発売しました。半透明の白いアッパーのサイドに、ロエベとオンのロゴをあしらったのみのミニマルなデザインですが、ライムイエローのソックスを透けさせたヴィジュアルはファッション提案としても印象的でした。

オンがロエベとのコラボレーションで2026年5月に発売した「LightSpray Cloudmonster」。発売時の価格は13万3100円
Image by: On
LightSprayで多様な色柄の表現が可能だと知れば、ぜひコラボレーションしたいと考えるブランドやデザイナーは多いはず。オンはこれまで、アスリートと共にパフォーマンスシューズの最先端技術を開発し、それを後に一般ランナー向けの製品へと落とし込んできました。同様に、ファッション領域ではロエベをはじめとした外部のコラボ先とLightSprayの新しい表現方法を探り、ゆくゆくはオンのインライン製品にも還元していくという循環が生まれる可能性が、大いにありそうです。
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