
3月29日に三重・鈴鹿で開催されたF1日本GPに掲げられたルイ・ヴィトンのロゴ
Image by: Alastair Staley/LAT Images

3月29日に三重・鈴鹿で開催されたF1日本GPに掲げられたルイ・ヴィトンのロゴ
Image by: Alastair Staley/LAT Images
「グッチ(GUCCI)」がF1チームのスポンサーになるかもしれないと、つい先日海外メディアが報じた。それによると、ケリング傘下のグッチは、2027年からF1チーム「アルピーヌ(Alpine)」との提携を検討しているという。背景には、2025年9月に再建請負人としてケリングCEOに就任したルカ・デ・メオ氏の存在があるという。デメオCEOは自動車メーカーのルノーの元CEOで、アルピーヌはルノーの子会社だ。
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ユニクロやジェントルモンスターもF1コラボ



ジェントルモンスターのディズニーとF1とのコラボコレクション
Image by: GENTLE MONSTER
グッチだけでなく、近年はラグジュアリーやファッションブランドのF1との接近が著しい。象徴的なのが、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン グループが昨年発表した、F1との10年間にわたるグローバルパートナーシップ。時計ブランド「タグ・ホイヤー(TAG Heuer)」がレースのタイムキーパーを務め、優勝者に贈られるトロフィーのケースは「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」が製作、レース会場ではモエ・ヘネシーのシャンパンが振る舞われるといったように、LVMH傘下のブランドがF1という体験の場に寄り添っている。
かつてF1のスポンサーと言えば、石油会社やタバコメーカー、自動車部品メーカーが中心だった。しかし現在は、ラグジュアリー企業が世界観を構成する時代になりつつある。
より身近なブランドやビューティ企業も、F1に注目している。例えば、韓国発のアイウェアブランド「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」や「ユニクロ(UNIQLO)」、キャップの「ニューエラ(NEW ERA)」はF1や参加チームとのコラボ商品を発売し、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」やビューティの「ロレアル パリ(L’Oréal Paris)」はF1ドライバーをアンバサダーに起用。「ミズノ(MIZUNO)」や「アディダス(adidas)」といったスポーツブランドはチームに請われて、機能性を追求したユニフォームやシューズを製作している。
われわれFASHIONSNAPが掲載した「F1」という文字をタイトルに含むニュース本数で見ても、2023年は0本だったものが2024年は6本、2025年は10本、2026年は現時点で既に11本と急増した。これも、ファッションやラグジュアリー企業の関心がF1に向かっていることを分かりやすく表す事例だ。
F1低調の米国でZ世代のファンを獲得
Netflixの「Fomula 1:Drive to Survive」ティザー
時計の針を巻き戻してみると、F1は1980〜1990年代前半に、伝説的なドライバーのアイルトン・セナなどがけん引する形で、マスに支持が拡大。ホンダ参戦を受けて日本でも1987年に地上波で中継が開始されると、社会現象化した。当時のF1はスポーツの枠を超えてヒーローを生み出し、企業の技術力を象徴し、ファッションやライフスタイルにも影響を与えるポップカルチャーだった。
しかし1990年代後半以降、状況は変化していく。欧州を中心に放映権ビジネスが巨大化し、F1はスポーツビジネスとして成功を収めた一方で、マシン開発やレース戦略は複雑化。ファンの固定化・高齢化が進んだと指摘する声は多い。F1は、「一部の車好きな人が見るもの」に閉じていった。
そのようにトレンドの枠外に押し出されてしまったF1を、再びカルチャーのど真ん中に引き戻したのがNetflixだ。Netflixは2019年に、ドキュメンタリーの「Fomula 1:Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)」の配信を開始。かつて地上波がレース中継やレース結果を中心に伝えていたのに対し、Netflixはドライバーやチームの人間模様にフォーカスし、それがZ世代の取り込みにつながった。
好評を受けて、同シリーズは第8シーズンまでを配信済み。「米国のF1ファンの53%が、同シリーズをきっかけにF1を観るようになったと回答しているデータがある」(Netflix広報)というように、欧州に比べてF1人気が低調だった米国市場を開拓したことは大きい。その結果、米国では2012年から行われてきたオースティンでのアメリカGPだけでなく、2022年からマイアミ、2023年からラスベガスでもF1大会が開催されるようになった。
分断の時代に高まるスポーツの価値

3月に三重・鈴鹿で開催されたF1日本GPでマクラーレンのドライバー、ランド・ノリスを推すファンの女性
Image by: Steven Tee/LAT Images
日本においても、Drive to SurviveがF1の新たなファン層を開拓しているとNetflix広報は説明する。「世界的な傾向と同様に、同シリーズは日本でもスポーツへの入り口として機能しており、特にこれまでF1に関心のなかった層に対しても、人物像やライバル関係、人間ドラマに焦点を当てることで、親しみやすいコンテンツになっている」。Netflixの成功要因は、F1がもともと持っていたドラマチックな人間ドラマの要素に光を当てて、SNS時代にマッチするコンテンツに編集し直したことだ。
近年のF1ファンたちの話しぶりを聞いていると、これは選手の推し活なんだなと感じることは多い。角田裕毅選手やルイス・ハミルトン選手、シャルル・ルクレール選手などは、アスリートであると同時にSNSで強い影響力を持つインフルエンサーだ。1980年代にテレビがアイルトン・セナをスターにしたように、2020年代はNetflixやSNSが新たなスターを生み出し、そのストーリーやコミュニティの周りにラグジュアリーやファッションブランドが集まるようになった。
こうした流れはF1以外のスポーツジャンルにも広がる可能性がある。Netflixはフランスの自転車レースを題材に「ツール・ド・フランス: 栄冠は風の彼方に」を配信。こちらも「若い世代を中心に新たなファンダムの創出につながり、配信開始後1週間でフランスでの『自転車』の検索数が50%増加した」とNetflix広報はコメントする。
趣味嗜好がタコ壺化し、分断が進む時代の中では、多くの人が共有・熱狂できるストーリーやスターの価値が従来よりもむしろ高まっている。そうした流れの中で、F1をはじめとしたスポーツはコンテンツとしてこれからさらに存在感を増していく。ラグジュアリーやファッションブランドが、自分たちの魅力を伝えるための舞台としてスポーツを求める構図は、今後より強化されていきそうだ。
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【連載:令和カーカルチャー】
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