ソフ代表 清永浩文
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Image by: FASHIONSNAP.COM

Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】清永浩文が語る 20年を経たソフと初のGUコラボ

ソフ代表 清永浩文
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 新国立競技場の近隣エリアに位置するソフ(SOPH.)の開放的なショールーム。壁にはサッカー場を写したアンドレアス・グルスキーの写真や、現代美術家 宮島達男の作品などが飾られている。インタビューの席に座った代表の清永浩文の口元には黒いマスク。靴下用の編機で作られたサンプル品だという。2ヶ月ほどの自粛期間を経て少しずつ通常モードに戻りつつある6月、新たに発表された「ジーユー(GU)」との意外なコラボについて、清永自らが語る。

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■GU×SOPH.「1MW by SOPH.」とは?
 ジーユーとソフが初のコラボコレクション「ワンエムダブリュー・バイ・ソフ(1MW by SOPH.)」を6月25日に発売。「1日の終わりから次の日の始まりまで、 ワンマイル圏内を快適に過ごせるホームウェア」をコンセプトにメンズ23型に加え、キッズアイテム9型を全国のジーユー店舗とオンラインストアで販売する。>> 詳細はこちら

後輩たちへ道を示した22年

— 2018年から2019年にかけてのソフ20周年イヤーを終えて、また新たなスタートを切っているかと思います。まず率直に、設立から振り返るとどんな20年でしたか?

 なんでしょうね。思えば遠くへ来たもんだという感じでしょうか。よくここまでこれたな、という思いもあります。色々とありましたけど、2000年に「ナイキ(NIKE)」さんとの協業が始まって、10周年の2008年にはリーマン・ショック。15周年の2013年5月に会社をM&AしてJUNグループ入り。まあ、節目節目で転機はあったのかなと思います。

— ナイキについては、ファッションブランドとスポーツメーカーの協業として先駆けだったかと思います。

 長期にわたって取り組んでいますが、当時の協業としては他には無かったので珍しかったですね。その後くらいに、「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」と「プーマ(PUMA)」、「アディダス(adidas)」と山本耀司さんの「ワイスリー(Y-3)」とか、話題になるコラボが出てきて。だんだんと境がなくなってきているのかなと思います。今みたいにランウェイでスニーカーを合わせたり、スポーツ素材をファッションに落とし込むということもあまり無かった時代だったので。

— 2013年のM&Aについても、国内のデザイナーズブランドではあまり前例がなかったかと。

 日本のメンズアパレル系でポジティブなM&Aは、ほぼなかったと思います。世界的に見れば珍しくはないですが、なんとなくファッション系のM&Aって、会社がダメになったので引き取ってもらう、というネガティブな印象でしょう。僕は良い前例を作りたいなと思って、元気なうちにグループ入りしようと思ったんです。後輩に「そういう道もあるよ」という選択肢を示したかったというか。

 僕が九州から東京に出てきて、最初に働いた「アーペーセー(A.P.C.)」を運営していたのがJUNグループで、そのアーペーセーを日本に持ってきたのが現社長の佐々木進さん。その下で働いていたので、気心の知れたJUNに出戻りした形ですね。「稚魚が荒波に揉まれて鮭になって戻ってきた」と言われましたけど(笑)。

— 佐々木社長とは、昨今の新型コロナウイルスといった大変な時期とか、今後についてなどお話はされていますか?

 いや、あまりないですね。業績もM&A前から比べると倍近くになっているので、任されている部分もあるのかもしれない。JUNグループ入りしてから7年目になりますから。ブランドだけではなくて、「ザ・プール青山(the POOL aoyama)」「ザ・パーキング銀座(THE PARK・ING GINZA)」「ザ・コンビニ(THE CONVENI)」なども裏方としてお手伝いしています。

— ソフは店舗数が多いので、コロナの影響も大きかったのではないかと思うのですが。

 ここ何年かでECに力を入れてきたので、大変ですがなんとか踏み止まれているところはあります。ただ、お店が無かったら知るきっかけも減るので、店舗がないとECは売れないという考えは変わりません。積極的に売る場所ではなくても、イベントというか見せるスペースとして。ショールームとして機能させる「アップルストア」のような感じは理想ですね。ナイキさんは、すでにそれに近づいている気もします。

 

20周年の「モード失礼します。」

— 創立20周年の時は、「モード失礼します。」のキャッチコピーの広告がインパクトありました。

 僕の20年間をずっと見ている代理店をやっている友達と一緒に考えたんですが、僕らしいというかソフらしいコピーにしてもらいました。クールにいくのは向いていないので、こういうやり方もあるんですよ、と知ってもらえたらと。自由に捉えてもらえればと思っています。

2018年、ソフ20周年として制作した広告

— 他にも1年限定のブランド「SOPH.20」では、色々なコラボもありましたね。

 SOPH.20は、記念イヤーとしてスーベニア的なものを作ろうと思って。尊敬するロンドンのグラフィックデザイナーにロゴを作ってもらいました。

— その一方で、2019年に福岡の「キヨナガアンドコー(KIYONAGA&CO.)」を閉店しています。人気がありましたが、なぜ閉めたのでしょうか。

 キヨナガアンドコーは僕の50歳の年の2017年に始めて、新しいトライをしてみたかったんです。その前から東京と福岡の二拠点生活をしていて、たまたまソフの路面店から歩いて30秒くらいの角地に物件があったので、何かやれないかなということで、福岡でしか買えないローカルな店をやってみたいなと。パーソナルで、不親切な店というか。実験的ポップアップということだったので、2年以上の実験は無いなと思って。

—「不親切な店」とは?

 現地でしか買えないし、ECもやっていない。何が売っているかも店舗に行ってみるまでわからない。2000年くらいまでは月刊誌の時代でしたから、昔はそういうものだったんですよね。今は行かなくてもみんな知っちゃってる。僕よりお客さんの方が知っていることがあるくらいだから(笑)。自分もそうですが、旅行や海外に行った時に、そこでしか買えないものを探しますよね。それがなかなか無いんですよ。なので、福岡で"わざわざ感"の楽しさを提供してみたかった。でも、最近みんなポップアップしてるじゃないですか。普通になっちゃって楽しみが薄れてきていたところがあったので、元気なうちに閉めました(笑)。

— スーベニアという意味では、JUNで清永さんが関わっている「ザ・プール青山」や「ザ・コンビニ」なども近いですね。情報も少なかったり。

 そう、「レア」というよりも「そこにしかないもの」で、東京に来た時のお土産という発想などは近いかも。戦略というよりは、差別化ですね。みんな持っていて買えるものばかりだと、ファッションアイテムとして差別化がどんどん難しくなる。なので、どんどんレアなものを追うか、古いものを掘るかになっていく、という加熱ぶりは身近でも感じますから。

 

構想から約1年、「ジーユー」とのコラボ

— 今回のジーユーとの協業はある意味マス向けになるので、レアとは両極端に感じますね。

 そうかもしれませんね。でもソフの軸で考えた時、20年以上やってきた次のステップとして、こういう取り組みもありだと思ったんです。1998年当時20歳だった人も、もう42歳。22年経ったらライフスタイルも変わりますよね。結婚して田舎に帰って、子どももいたら自分の服なんて買っていないかもしれない。だけどジーユーだったら買える。ソフを若い頃に買ってくれた人にとっては今のライフスタイルに向けて。ソフのことを知らない中学生や高校生の新しいお客さんにとっては新鮮な形で。色々な人の手に届く服として、良いなと感じたんです。

— オファーはジーユーからでしょうか。

 昨年5月頃にジーユーさんからお話を頂いて、夏にはコンセプトを決めました。年末には全てのアイテムがFIXしていましたね。今年になって撮影したり、少し遅れましたがやっと販売になります。

— これまでもナイキをはじめ幅広いジャンルの企業と協業していますが、意外なオファーでしたか?

 そうですね驚きました。ユニクロは色々なデザイナーと協業しているし、ジーユーだとキム・ジョーンズ(Kim Jones)やNAOTOの「スタジオ セブン(STUDIO SEVEN)」とコラボしているのも知っていましたが、最初は「何故うちなのかな?」と思って。業界的に、旬とかホットなブランドではないので。でもファン層は広かったり、ずっと継続してやってきた僕たちのことを理解してオファーして頂いたので、嬉しかったです。

— ワンマイルウェアというコンセプトは、偶然にも今の状況に合っている気もしますが、当時どのように決まったのでしょうか。

 やるなら僕は、ロゴやブランド名で売れるものじゃなくて、ソフを知らない人に「いいな」と思ってもらえるものを作りたいと思いました。考え方やコンセプトで共鳴してもらえたらと。「半径500m圏内を過ごす服」という考えは、オファーから2ヶ月後くらいに決めたコンセプトでしたね。ざっくり言うと、ご近所ウェアです。家からコンビニに行くくらいの感じ。

 実はルームウェアや肌着って、意外と作りにくいんです。ロットの問題で、大量に作らないと部屋着なのに高くなっちゃったりする。過去を遡れば「ホームウェア」とプリントしたスウェットを作ったことがあるんですが、みんな普通に家ではなくて外で着ていました。なかなか手が出しずらいジャンルではありましたね。

— デザインプロセスはどのように進めたのでしょうか。グラフィックにはヨシロットン(YOSHIROTTEN)を起用していますね。

 コンセプトを決めたらこれまで使ってきたグラフィックを提出して、ジーユー側で具体化してMDを組んだり、チームでキャッチボールして進めていきました。ヨシロウくん(YOSHIROTTEN)は、僕は5年ほど仲良くしていたんですが、仕事を一度もしたことがなくて。今回ジーユーさんと話したときに、ヨシロウくんはグラフィックだけではなく広告や映像なども作れるので、全て任せられるなと思ったんです。ヴィジュアルに起用したラッパーのRyohuくんも、ヨシロウくんの流れ。例えばカモ柄のシャツはよく見ると、星と、人が歩いているモチーフが隠れていたり。面白くいじってくれました。

— 価格帯はだいぶ買いやすいですよね。

 ボクサーパンツで490円というのは驚きですよ。一緒にお仕事をしてみて感じたのは、規模感の大きさもそうですが、物づくりが驚くほどしっかりしているところですね。

— キッズサイズの用意もあります。

 キッズウェアもよく知り合いに「作ってよ」と言われてきたんですが、ルームウェアと同じで普通に作ると高くなってしまうので壁があったんですよ。子どもはすぐに大きくなるから手に取りやすいものがいいと思って、今回作れたのはよかったです。

— 普段のソフでも、清永さんのコンセプトを元にチームで作るようなアプローチなんでしょうか。

 前はもっと細かくやっていましたけど、ラインも増えて、今は指揮者のような感じですね。次の楽曲はこれ、じゃあバンマスはこれで、編成はこうしよう、みたいな。チームで奏でているイメージです。

 

「継続は力なり」ずっと変わらないこと

— ジーユーとの取り組みによってブランドの幅も広がりそうですが、他に何か考えているプロジェクトなどはありますか?

 実験的でパーソナルな「キヨナガアンドコー」という名前も残しているので、そろそろやろうかなとは思っています。例えば、「不親切」とは逆に「親切」にして、誰でもどこでも買えるECで面白いことができたらな、とか。今の時代は、思い立ってすぐに行動できると思うんですよね。NIGO®さんからお声がけ頂いたBLMのTシャツなどもそうだと思います。まずは発表して2日間だけ受注をとるとか。サンプルを作ってチェックして在庫抱えて、というこれまでのフローとは違った形ですよね。

— 一歩踏み出すとか、初動の速さが大事になってくるかもしれません。

 ファッションのカレンダーも変わりそうじゃないですか。展示会の時期もファッションウィークも変わりそうですし、より消費者に近くなりそうですよね。より現実的なタイミングになっていくというか。そういう意味では、アップルが発表した新製品をすぐ発売するとか、理想ですね。SNS時代になってから、1ヶ月前に発表しても忘れられて飽きられるかもしれない。もっとリアルに、スピーディーにできることもあると思います。

— 会社とブランドの次のステップについては、何か考えはありますか?

 よく聞かれるんですが、ないんですよ。世界に行きますとか、売り上げ何%UPを目指します、みたいなものもない。「ファッションの力で世界を変える」とか、僕が熱く語っても嘘になってしまいますよね。これからも「継続は力なり」の考えで、ソフという会社とチームを良い形で継続していけたらというだけです。

— 長く続けることが最も難しい時代かもしれません。

 うちは、北は北海道から南は鹿児島まで取引先があって、お客さんもみんな普通の生活をしているんです。派手なことはやらないけど、支える役割があると思うんですよね。そういうのもあって、ずっと「モード失礼します。」なんです。

■清永浩文 Hirofumi Kiyonaga
1967年大分県生まれ。洗練された日常着を目指し1998年「SOPH.」を設立(2002年にSOPHNET.へ改名)。翌1999年には架空のフットボールチームを想定した「F.C.Real Bristol」を、2008年にはメンズウェア(ユニフォーム)の実験的プロジェクト「uniform experiment」をスタートするなどチャレンジングな戦略でシーンを牽引し続けている。7月末には渋谷の新たな複合商業施設「ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)」内に新店のオープンを控えている。
SOPH.:公式サイト

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