Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】アメリカで最もドレスを売る日本人デザイナー「タダシ ショージ」とは

Photo by FASHIONSNAP
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 日本人デザイナー「タダシ ショージ(TADASHI SHOJI)」が、大統領夫人や海外セレブを魅了している。ブランドの代名詞にもなっているのが、女性を美しく見せるというドレス。母国の日本よりも米国の方が圧倒的に知名度が高いという稀有なブランドだが、競争率の高い世界でどうやって支持を得てきたのか。ロサンゼルス、ニューヨーク、上海を行き来するデザイナーに聞いた。

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【タダシ ショージ】
1948年生まれ。宮城県仙台市出身。高校卒業後、上京し芸術家高松次郎氏に師事。73年に渡米後、トレードテクニカルカレッジ大学ファッションデザイン科で勉強する傍ら、エルトン・ジョン、スティービー・ワンダー等のステージ衣装を手掛けるデザイナー、ビル・ウィットンの下で働く。1982年にTADASHI SHOJI & ASSOCIATES. INC.を設立。


■日本人デザイナーとしての意識

―ロサンゼルスを拠点に、上海やニューヨークにも住居を構えています。デザイナーとしてのキャリアはアメリカで開始されましたが、渡米の理由は?

 最初からアメリカに渡って活動しようと思っていたわけではなく、ただ日本から逃げたかったからなんです。たまたま友人がいたので渡米して、25歳でロサンゼルスに住むようになって、デザイナーになったのも偶然と言えるかもしれませんね。ファッションの中心といえばニューヨークですが、ハリウッドもあるLAのファッションマーケットは十分大きいので、そのまま拠点をロサンゼルスに置きました。

2016年春夏コレクションのテーマは「日本」でした。なぜこのタイミングで母国をテーマにしたのでしょうか。

 自信がついたからかな。以前までは「日本人だから」と見られるのがあまり好きではなくて。一人のデザイナーとして見てもらいたかったし、認めてもらいたかったから意識的に避けてきたのです。なのでインタビューで「日本的な要素をどこに反映しましたか」と聞かれても答える事が難しかった。でもやはり私は日本で教育を受けた日本人なので、自分の中に存在する"日本人的な美的感覚"というものは否定できない。それがやっと、表に出してもいいと思えるようになったのです。

2016年春夏コレクション


―日本と違ってアメリカは、高校卒業の時のプロムパーティーなど若い頃からドレスを着る機会が多いですね。

 そうですね。やはりアメリカと比べると、日本におけるドレスの需要はまだまだ少ない。現状では、60%をアメリカ、残りの40%を中近東やカナダ、メキシコなどその他約40カ国で販売しています。今後は新しいフランチャイズの会社を、東南アジアにも広げていこうと考えています。

■女性に支持される理由は

―日本国内ではアナウンサーや女優の着用も多いそうですね。表舞台に出る人から支持される理由は何でしょうか?

 もちろん著名人が着てくださるのは嬉しいのですが、あらゆる女性に着て楽しんでもらうことが私にとっては重要です。ブランドのフィロソフィーは「Dress for every woman(すべての女性に向けたドレス)」ですから、いわゆる「好感度」が無い服だったらマスに売れないでしょう。そういった意味では、著名かどうかというよりも好感度が重視される人から支持を得ているのではないでしょうか。

―海外ではミシェル・オバマ夫人が着用して話題になりました。

 ファッションを国際交流の一部として捉えている方なので、最初にオバマ大統領夫妻の来日が決定した時に「日本に行くのでドレスを作ってください」という依頼をいただきました。結局は来日時ではなかったのですが、その後に訪米した安倍首相と昭恵夫人が招かれたホワイトハウスでの晩餐会やテレビ番組など別の機会で複数回着用して頂きましたね。

―コンセプトに掲げている「女性を最も美しく見せるデザイン」には、どんな工夫があるのでしょうか。

 立体裁断を用いたカットとフィッティングですね。ドレスに身を包んだ時に、"着ていること"を意識してしまうカッティングでは、女性は自然体でなくなってしまいます。服に着られているのではなく、着こなしているという自信や高揚感、喜びが反映されると、女性はとても輝きますから。そういったフィーリングがとても作用するんですね。

―国や人種によって売れるドレスに違いはありますか?

 その土地の文化や風習によって、反応は異なりますね。例えば、南米で紫のドレスは葬式の色なので売れない。中国では赤がとても好まれます。ベージュはヨーロッパではあまり人気がない。日本ではパステルカラーといった綺麗な色を使うと反応がいいですね。鮮やかな色のドレスは世界的に見ても売れているのですが、アメリカだとそこまで。パーティー文化が根付いてる国なのもあって、何回でも着回せるように黒やネイビーブルー、ブラウン、ベージュといったクラシカルな色のドレスが重宝されているのです。ただし富裕層が集まる地域では、派手で綺麗な色が売れる。ケープなどは、中東の方々に好まれますね。

―同じ女性でも、文化や生活習慣によって異なるのですね。

 ただ、最初から売れ筋を意識してドレスを作っているわけではありません。「あれが売れたから、またああいうものを作ってよ」と言われても、前回と同じように求められているものを作れるとは限らないし、最初の1、2年は良いのかもしれないですが、やがてつまらなくなって廃れていきます。「タダシ ショージ」の顧客はリピートカスタマーが多いので、新しいものを供給していかないとビジネスとして続かないのです。

■ビジネスとクリエーティブの両立

―タダシ ショージさんはデザイナーでもありブランドの経営者でもあります。ビジネスとクリエーティブの両方を担当する上で意識されることはありますか?

 高級感のあるドレスをできるだけリーズナブルな価格で提供したいので、デザインにかかるコストについては綿密に計算しています。例えばレースに施すエンブロイダリーは、一つの生地に使う色が多ければ多いほどコストが高くなる。なので、イエロー2色、グリーン2色、パープル2色のエンブロイダリーを施したドレスを作る場合は、パープルとグリーンのエンブロイダリーだけの生地をまず用意して、それとはまた別に、黄色2色を施した生地も用意する。それらを切って縫い付けて生地を作ることでコストはぐんと下がるんですよ。普通のデザイナーであれば「この素材が良い」と思えばコストを考えずに使いますが、私は経営者でもあるため、そこは必死になって計算していますね。

エンブロイダリーが施されたレースのドレス

―最近はショーで発表直後にアイテムを発売する施策「see now buy now」を導入するブランドが増えていますが、どう思いますか。

 実際には難しいシステムだと思いますが、カスタマーにとっては嬉しい事だと思います。「いま見て、いま買う」というシステムを実現させるためには、業界のサイクルは必然的に加速します。「バーバリー(Burberry)」のようなたくさんの直営店を抱えるブランドであれば可能だと思いますが、卸が中心だと難しいですね。販売するショップ側のサイクルもブランド側と同じように変わるのかというと、そうではないと思うので。そのため、「タダシ ショージ」でも直営店をもっと増やしたいという考えはあります。

―今後「タダシ ショージ」でも取り入れる可能性があるということでしょうか。

 将来的には導入する可能性もありますね。ビジネスというのは、カスタマーのニーズに応えることが最も重要。顧客が望むことであれば、新しいことに挑戦していきたいと考えています。

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