Fashionインタビュー・対談

【インタビュー】「大事なのは想像力」 ネ・ネットを離れた高島一精がコロナ禍に思うこと

高島一精 Image by FASHIONSNAP.COM
高島一精
Image by: FASHIONSNAP.COM

 ファッションデザイナーの高島一精が、「ネ・ネット(Né-net)」のデザイナー退任後初のイベントとなる個展「This is not a cat.」をスタートした。個展は"ファッション以外の表現活動"と位置付けてきたが、今回は絵画作品のほかに、服としても着られる「TIE」シリーズを新たに展示している。「本能的に服を作りたくなった」と語る高島は15年にわたり手掛けたネ・ネットから離れた今、何を思い、そして次の一歩をどう踏み出すのか。

デザイナー退任後の個展は"つながる"場に

―個展は2度目の開催ですね。タイトル「This is not a cat.」にはどんな意味があるのでしょうか?

 世間の僕に対するイメージは「にゃー」だと思うのですが、この活動はそれとは別のものだということをユーモラスに比喩しました。個人のデザイン活動の総称としても使っていて、昨年の個展がその活動の第1弾企画となったのでそのままタイトルに採用しました。今回の個展も、前回の延長で"一見すると猫に見えるけど猫じゃない"作品を作ったので同じタイトルにしました。

―「猫に見えるけど猫じゃない」ということは、それぞれのモチーフに正解はあるんですか?

 ありますね。例えば入口に展示した作品は、実はたぬきなんです。

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―言われてみると、たぬきにも見えてきました(笑)。このシリーズを作り始めたのはいつ頃からですか?

 本業でもテキスタイルデザインの一環で絵は描いていたのですが、本格的に取り組み始めたのは昨年個展をやることが決定してからですね。

―インスピレーション源はありますか?

 なんでしょうね。明快なコンセプトやイメージがあるわけではなく、手のテンションに合わせて偶然生まれたものが多いです。

―今回の制作期間は?

 制作自体は以前から少しずつ続けていたのですが、ネ・ネットのデザイナーを7月末に退任したこともあり8月以降はこの企画に集中できたので、ここ1〜2ヶ月で制作した作品が多く並んでいます。

―会場は昨年と同じ鎌倉のギャラリーですが、なぜこの場所を選ばれたのでしょうか?

 生活の拠点が鎌倉にほど近い湘南エリアというのもありますが、都心のような人の出入りが多い場所ではないところで個展を開きたかったというのも大きいです。この空間も好きで、駅から少し離れてはいるのですが、ギャラリーを探しに来てもらえる感じもいいなと思って。

―今年は服にもなる作品も展示しています。

 個展の開催はコロナの流行前から決まっていたので別の構想があったのですが、ブランドが休止することになって服を作ることから離れていたこともあり、本能的に服を作りたくなって。1枚の布に絵をパッチワークであしらっていて、布2枚を結ぶと服になるんです。

―そのアイデアはどのように思い浮かんだのでしょうか?

 「むすぶ」「つながる」「きずな」といったキーワードをもとに、シンプルにものづくりができないかという発想から生まれました。「絵を着られる」というのは誰でも思いつきそうですが、これまでに見たことのない作品になったと思っています。

―これらのキーワードはコロナも影響しているんでしょうか。

 直接的にそういうことを考えたわけでもないですけど、知らないうちに影響を受けているのかもしれません。

―どんな個展にしたいですか?

 コロナの情勢もあるのでディスタンスはある程度取りながらになってしまいますが、いろんな方と直接お話できる貴重な機会でもあるので、「つながって届ける」という個展になればいいなと思っています。

25年在籍したグループから離れて思うこと

―ネ・ネットのデザイナー退任、そしてブランドとにゃーの休止は大きな話題を集めました。退任から発表までの約1ヶ月間はどのように過ごしていましたか?

 たまたまこの個展の企画が決まっていたので、ほぼ休みなく準備に追われていました。逆に忙しかったです(笑)。

―ファンの方からの惜しむ声も多く届いたかと思います。

 僕の想像以上にネ・ネットやにゃーを想ってくれていることは純粋に嬉しかったですね。応援してくれていた方々に対しては本当に申し訳ないと思いつつ、これから何をするかはまだ決まっていませんが、次の活動でも見守っていてもらえたらと思います。

―ブランド名の由来にもなっていた娘さんとは休止についてお話されましたか?

 家族なので休止についてはもちろん話しました。報告したときは、涙がぴゅー...と流れてましたね。ネ・ネットは娘が生まれた頃に誕生して、ブランドと一緒に娘も育ちましたから、いろんな思いがあるのでしょう。今はポジティブに捉えてくれているようです。彼女も今年から高校生になり新しい生活が始まったので、僕も新しい環境でスタートするというタイミングではちょうど良かったのかなと思っています。

―高島さんにとって思い入れのあるシーズンは?

 やっぱりデビュー初期の頃ですね。初めは少ない人数で、みんなで手作り感覚でやっていました。東京コレクションに初めて参加した時も、型数が少なかったので14体のルックで構成したショーを小さなカフェでやったりと、かなり小規模だったんです。まだゼロからのスタートだったので楽しかったし、一番覚えていますね。

―ネ・ネットは独自性のあるデザインが強みでしたが、ファッションの需要の変化についてはどのように捉えていますか?

 デビューから5年、10年と経つ中で目標と課題は常にあって、時代の変化も含めて1つずつスタッフの皆とトライしていきました。そういう意味では、僕なりに目の前にある課題に常に前向きに取り組んできたと思っています。

―にゃーの誕生のきっかけは?

 ネ・ネットでは毎シーズンテーマを考えてテキスタイルを作るんですけど、にゃーは最初、たまたまテキスタイルの柄の一部だったんです。そこから身体をつけて、名前を決めて、ストーリーを考えていくうちに人気が出だして。こういうものって偶然生まれるんですよね。当初は単独店を出店することも想像していませんでした。

―にゃーは国内だけではなく海外にもファンがいます。会社を離れても商標を所有することなどは検討しませんでしたか?

 にゃーも僕にとっては子どものような存在ですが、親子の関係って離れても変わらないじゃないですか。なので商標を買い取ったりは考えませんでした。

―エイ・ネットを含むイッセイ ミヤケのグループには25年という長い期間在籍されましたね。

 ものづくりの基礎から勉強をさせてもらって、いろんなチャンスもいただきました。グループには本当に感謝しかないです。

―ブランドを手掛けるなかでつらかったことは?

 ずっと楽しかったので、つらかったことはあまりなかったかな。

―ブランドでやりたかったことはすべて実現できましたか?

 やりたいことはいろいろありましたけど、毎日一生懸命やってきたのでやり尽くしたと思いますし、強い後悔もないです。

―次はどんなことに挑戦したいですか?

 いろんなことに興味はありますが、やっぱりメインはファッション。色んな人と一緒に作っていくのが好きなので、例えばもし他の企業から声がかかることがあれば、そこで挑戦してみたいという気持ちもあります。

―個展の前にはTシャツをInstagram限定で販売されていましたね。D2Cブランドを始めるのかな?と思いました。

 あのTシャツは1分もかからず完売して、思っていた以上に反響があってびっくりしました。届けたい人に届けられるし、受注生産にすれば無駄も出ないので今の時代に合っていて面白いとは思いますが、現時点ではブランドとしてやっていく準備はできていないので、まずは「This is not a cat.」の活動が広がっていけばいいなと思っています。

―コロナの流行でアパレル業界は先行きが不透明な状況が続いています。

 1年後にどうなるか予想がつかない状況ですから、みんな手探りですよね。僕も同じです。それでも僕は服を作ることしかできないし、何より服を作ることが好きなので、そういう意味では前進あるのみ。前に一歩進むために動かないと、状況は見えないですから。

―高島さんと同じように、コロナ禍に新しい一歩を踏み出す人に向けてメッセージがあればお願いします。

 これから重要なのは「個人の想像力」です。先行き不透明な状況が続いていますが、前例にとらわれずに新しいことを想像し、個の力を結集させれば状況はいくらでも変えることができると思います。世の中を動かしたり、新しい分野や価値観を生み出したりすることに対して、一人ひとりがいかに想像できるか。この個展のテーマにもつながりますが、常に想像力を伸ばして、ポジティブにいきましょうと伝えたいですね。

(聞き手:伊藤真帆)

■This is not a cat.
会期:2020年10月10日(土)〜10月18日(日)※水曜日は定休日
会場:John
住所:神奈川県鎌倉市材木座1-6-22
インスタグラム:@kazuaki_takashima

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