Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】「振られたのはフィービーだけ」キーマンが語るユニクロコラボ成功の法則とは

Image by: コラボコレクションのキーマン勝田幸宏氏

 ユニクロの最新コラボレーション「ユニクロ アンド ルメール(UNIQLO AND LEMAIRE)」が、10月2日に発売される。協業デザイナーであるクリストフ・ルメールは「エルメス」のデザイナーとして活躍した実力派で、今回のコレクションの前評判も上々だ。「我々はファストファッションとよく言われるが、制作過程はラグジュアリーブランドと一緒」と語るのは、ユニクロR&D(デザイナー・パタンナー)統括責任者、ファーストリテイリング執行役員の勝田幸宏氏。入社以来、コラボレーションを担当してきた勝田氏が語るユニクロのコラボレーション「デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト」の作り方とは?

 

勝田幸宏 : 株式会社ファーストリテイリング 執行役員 ユニクロ R&D 統括責任者
1986年 青山学院大学国際政治経済学部卒業、株式会社伊勢丹入社
1992年 バーニーズニューヨーク本社 出向 メンズ・スポーツウエア/クロージング マーチャンダイジング コーディネーター
1994年 バーニーズジャパン出向 メンズ・ファーニシングバイヤー兼メンズ・デザイナーズ コレクション バイヤー
1998年 ポロ・ラルフ・ローレン ニューヨーク本社 入社 メンズ・スポーツウエア/クロージング シニアバイヤー
1999年 バーグドルフ・グッドマン入社 メンズ・スポーツウエア商品統括部長
2001年 バーグドルフ・グッドマン取締役統括部長
2005年 株式会社ファーストリテイリング 入社 執行役員 ユニクロ R&D 統括責任者(現任)

何故、ユニクロはデザイナーとのコラボレーションを始めたのか?

 ユニクロのデザイナーズ・インビテーション・プロジェクトを立ち上げて今年で9年目。前職のニューヨークの高級百貨店「バーグドルフ・グッドマン」取締役統括部長からユニクロに移った勝田氏は、「ユニクロの服は使い勝手が良かったり、あって良かったと思われる服でなければならない。デザインを削ぎ落とした主張のない服がユニクロらしさでもある一方で、時代の変化に伴いシャツ1枚でも1mm単位でアップデートして行く必要がある。これに価格の制限が入ってくるため、このブランドは非常に難しいと感じた」と振り返る。そんな中、柳井氏に提案したのがデザイナーズ・インビテーション・プロジェクトだったという。「我々も学びながら一緒に成長するというスタンスで、外部のデザイナーやブランドと協業してみよう」と翌2006年にプロジェクトがスタートした。

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(写真:左からユニクロ執行役員 勝田幸宏、ジル・サンダー、ファーストリテイリング会長 柳井正)

 「サイ(Scye)」や「アレキサンダー・ワン(ALEXANDER WANG)」、「3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)」など当時新進気鋭だったデザイナーとのタッグを実現させ、次々とコラボレーションコレクションを発表。そして、2009年には「究極のコラボレーション」と社内外で言われたジル・サンダー氏とのコレクション「+J」まで漕ぎ着けた。「こんなに素晴らしいデザイナーがここまでやるんだ、という姿を目の当たりにし我々はもっとやらないと無理だと思った。私は23年間のファッション業界で培ってきたという自負があったが、足元にも及ばない」と言い、「デザインや作り方、プロセス、考え方全てが勉強の連続だった」と回顧する。

究極の「+J」次に「ルメール」と組む意味

 大成功を収めた「+J」に続く海外デザイナーとして起用したクリストフ・ルメール「エルメス」のディレクターとしても活躍したパリでは絶大な人気を誇るデザイナーだが、日本での認知は十分とはいえない。そのためクリストフ・ルメールにとっても今回のコラボレーションは、デザイナーと自身のブランド「LEMAIRE」を知ってもらえる大きなメリットがある。クリストフ・ルメールにオファーした理由について訪ねると、クリストフが日本に来た時に、今のユニクロを代表するティピカル(典型的)な店として吉祥寺店に連れて行った。クリストフから『生活』というキーワードが出てきて、そこから家(IN)でも外(OUT)でも着て行ける服『IN and OUT』というコンセプトが今回のコラボレーションには相応しいよね、と認識が合致してコラボレーションの外枠を決めていった。コラボレーションをする上で重要なのは、ありきたりだがシンパシーを感じられるかどうかだと思う」と語った。

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UNIQLO AND LEMAIREのルックブック

 制作段階ではこれまでに無い挑戦もあったという。「今回はある意味、我々にとって他のコラボレーション相手とは大きく違う。これまでは構築的な服づくりで美しさを表現してきたが、今回は初めて"エフォートレス"に挑んだ。このスタイルは、我々がやれば一気にダサくなる危険性があり長年避けてきたのだが、今の時代は女性だけではなく、男性もそういった服を求めている。パリでのフィッティングの回数は合計4回とこれまでで最も多く、何度も作り直した。また、クリストフ・ルメール側も彼らが持ち味としている流線的なラインを出すためにはどうしたらいいか、特に素材選びに奮闘していたと思う。我々が持つ素材も提案したが、彼らからの『こういった素材はないか?』というオファーを受けて開発した素材もある」と試行錯誤の末に、7月7日のパリで行われた初披露の舞台を迎えたという。

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パリでの発表の様子

 パリでの発表は「かなり好評だった。特に価格については安すぎないかという声を多く貰った。我々にとっては嬉しい言葉だが『IN and OUT』のコンセプトを掲げているのに、高くて買えないようなものでは辻褄が合わないですから」と話す。奇しくも2015年はクリストフ・ルメールだけではなく、兼ねてからコラボレーションしているモデルのイネス・ド・ラ・フレサンジュ(Inès de la Fressange)、フランス「ヴォーグ」誌編集長として活躍したカリーヌ・ロワトフェルドといったフランスを代表する各界のクリエイターが名を連ねる。「全くの偶然。ただ結果論だが、アジア市場に一所懸命取り組みながら、一方でアメリカやヨーロッパの重大戦略として取り組んでいる。我々にとっては重要なことだ」 

UNIQLO AND LEMAIREルックブック
UNIQLO AND LEMAIRE - ウィメンズ -(アイテム・価格)
UNIQLO AND LEMAIRE - メンズ -(アイテム・価格)

ユニクロが掲げるコラボレーションの意義

 「デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト」をスタートして9年目。開始以降、デザイナーとのコラボレーションが「ユニクロ」のデザイン力を引き上げているという声は多く聞かれる。プロジェクトの意義について勝田氏は「我々はコラボレーションによりデザインや作り方のプロセス、考え方を学び、コラボレーションが終わった後にその精神を活かしている。この姿勢はこのプロジェクトが始まった頃から変わっていない。ファストファッションとよく言われるが、このプロジェクトにおけるプロセスはラグジュアリーだと自負している。例えば、ルメールと作ったセーターの価格は2900円だとしても、フィッティングをくり返し、ラグジュアリーブランドと同等のプロセスを踏んで生み出されている。このクオリティの商品でありながら、アフォータブルな価格で提供できているのは、ユニクロのコラボレーションだからだ」と語る。

 デザイナー選びは、バーニーズ・ジャパンでバイヤーとして活躍してきた勝田氏の仕事。相手に求める"資質"を挙げるならば、「シンプルを理解しているデザイナー」だという。「ガリアーノがマルタン・マルジェラに移った時、驚いた人も多かっただろうが、ガリアーノは押さえるところを押さえているデザイナーだ。実際は売れるものをしっかりと作っていることを知っていたので、不思議はなかった。同じようにマックイーンもわかっているデザイナーの1人だ。彼が生きていたら是非オファーしたかった」と惜しむ。「産休中にアプローチしたフィービー・ファイロは、セリーヌに移るタイミングと重なってしまった」と残念がるが、彼女を除いて"振られた"ことはほとんどないという。

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 デザイナーに伝える"口説文句"を聞くと、「ユニクロが持つ素材を最大限活かした服をデザインしてほしい、それによって君のクリエイティビティや才能は広くに評価されるかもしれない。面白いと思わないか?」。コラボレーションの目的はユニクロが成長したいというのはもちろんだが、相手のデザイナーにもメリットがないと困るという。そのため勝田氏は「僕らは君たちのコレクションの廉価版を作るつもりはない」とはじめにしっかり伝えるところからコラボを始めていると語る。「我々も相手の知名度を下げるようなものは作りたくはないですからね。よく例として出すのは『料理の鉄人』というテレビ番組。ある食材をもとにそのシェフがいかにその食材の美味しさを最大限に引き出した料理を作れるかという内容で、僕はユニクロのコラボレーションもそれと同じだと考えている」という。次のコラボはどんな"ディッシュ"になるのか、一番楽しみにしているのは当のユニクロかもしれない。

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(聞き手 高村美緒)

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