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ファストリはZARA擁するインディテックスを越えられるか?両社の違いから見えてくること

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 「ファストファッションといえば」を聞かれたら、多くの人は「ユニクロ(UNIQLO)」「H&M」そして「ザラ(ZARA)」と答えるだろう。アパレル製造小売業の3強と言われる各社を売上高で比較すると、これまではザラを擁するインディテックスとH&Mが2強で、ユニクロを展開するファーストリテイリングが2社を追う形となっていたが、今ではユニクロ擁するファーストリテイリングがH&Mを射程圏内に収め、残すはザラを越せるかという規模にまで成長している。インディテックスとファーストリテイリングの差は1兆円近くあるが、将来的に超すことができるのか、どういう施策の必要があるのか、個人的な見解をまとめてみたいと思う。(文:南充浩)

 

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 ザラとユニクロは一般的には「グローバル低価格ブランド」とまとめられるが、そのビジネスモデルや方向性は全く異なる

 小売店出身のユニクロは、品番数を絞り、大量生産することで1枚当たりの製造コストを下げ、低価格高品質な商品を供給してきた。また、「ヒートテック」や「エアリズム」「ウルトラストレッチジーンズ」など機能性商材を得意とし、これらの商品を期初に投入して半年くらいをかけて売り減らしていくという手法を取っている。商品企画から店頭投入までの期間は1年半~1年と言われており、非常に長く、考え抜いた一品を投入するというスタイルとなっている。

ヒートテックはアレキサンダー・ワンとのコラボも展開

 縫製工場出身のザラは多品種小ロットを製造し、"売り切り御免"で原則的には追加生産をせず、次々と新型を投入する。価格は百貨店商品の半分に設定しているが、低価格とは言い難い。個人的には中価格帯だと見ていて、使用生地や縫製仕様の品質はユニクロほど高くはない。機能性商材はなく、もっぱら欧米コレクションやトレンド情報をいち早くキャッチしてクイックに商品化するということに長けている。

「ザラ」2019年秋冬シーズンの展示会より

 ユニクロを擁するファーストリテイリングの2019年8月期連結業績は、売上収益が2兆2,905億4,800万円(前期比7.5%増)、営業利益が2,576億3,600万円(同9.1%増)、税引き前利益が2,524億4,700万円(同4.0%増)、当期利益1,780億4,600万円(同5.1%増)と増収増益だった。増収率は鈍化したが急激な割合で伸びることは難しく、売上高は2兆円を越えているのだから好調だったと言える。しかし、今年1月に発表された2020年8月期第1四半期の連結業績では、暖冬の影響や香港のデモ、韓国の反日運動によって減収減益となった。その結果、通期見通しを下方修正し、売上収益を2兆3,400億円(前期比2.2%)とした。

 しかしながら、世界規模2位のH&Mグループに追いつき追い抜くペースであることは変わりない。ちなみに2019年11月期のH&Mグループ全体の連結売上収益は約2,327億スウェーデンクローナで、為替によって円換算は上下動するが、だいたい2兆6,000億円前後とされている。2019年度は3,000億円ほど差が開いたが、2018年度はほぼ同規模だったことからH&Mを追い越すことは射程圏内にあるといえるだろう。だが、ザラを擁するインディテックスの2019年1月期連結の売上収益は261億4,500万ユーロで、円換算するとだいたい3兆2,500億円あり、その差は1兆円もある。

 

 ザラとユニクロは商品作りと売り方も両極端だといえる。ザラは全世界でサイズ感が共通である。そのため生産のロスは少ない。一方で、例えば筆者自身だとザラの服は袖丈が長めで着づらいと感じる。そのため、ユニクロは頻繁に買うが、ザラの服はほとんど買わない。

 ユニクロは進出した各地でローカライズさせる取り組みを行っている。だがこれが必ずしも正解かどうかはわからない。先日、ユニクロはインドに進出したが、現地の民族衣装クルタを発売してもあまり売れていないという声もある。ローカライズの典型的な取り組みだといえるが、この声が事実だとすると、考えられる原因としては「別にユニクロに行かなくてもたくさん売っているから」ということになるだろう。ユニクロのクルタが特別にめちゃくちゃ安いとかめちゃくちゃ高機能とかでない限り、わざわざ買いたいと思うインド人は少ないだろう。この辺りは現地対応マーケティングの難しさが感じられ、逆に現地に商品を合わせないザラの方が正解なのかもしれない

 ではザラに欠点はないのかというと、世の中に無欠の存在はないのでそれなりにある。ザラは最新コレクションなどを参考にトレンドを一早くキャッチして商品化する。その部分のスピードは速く、まさに「ファスト」といえる。しかし中には「パクリ」とも受け取られるほど既存のデザインに類似するものも含まれており、実際に「ディーゼル(DIESEL)」や「ザ・リラクス(THE RERACS)」に訴えられて裁判で負けている。

 アパレルは元々、商標権以外の知的所有権については緩い業界だった。これまではブランドロゴ以外の商品や什器などのデザインに関してはよほどでない限り見逃されてきたが、近年は商品デザインに関しての知的所有権についての規制は厳しくなりつつある。消費者もパクリ問題には敏感に反応するようになり、SNSの普及がその流れを一層強くしている。そうした状況下で、これまで通りにザラがコレクションショーやトレンド商品をデザインに反映することは難しくなると考えられるため、お得意だった商品企画のファスト性は後退する可能性がある

 ユニクロの本来の商品はベーシックでデザイン性があまりなかったが、「デザイナーズインビテーション」というデザイナーズコラボ企画を始め、「+J」「ユニクロU」のほか「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」との企画によってその部分を埋めてきた。

 「欠品させない」という思想に基づいていた供給量も近年では少し変化が見られ始めている。+Jのころは、欠品してもまた追加生産があったが、昨年くらいからはユニクロUやJWアンダーソンコラボでは欠品しても追加生産されなくなった。見切る場合はかなり大胆に値下げするが、数量が異様にダブついている商品の型数は減少していると感じられる。

「UNIQLO and JW ANDERSON」2019年春夏コレクションより(2019年3月撮影)

 

 ユニクロが商品以外の面で「ザラを越えるために」必要なことは、まず現在推進している世界各地での出店政策と売上拡大が不可欠だ。国内ユニクロは売上高8,700億円となり、もうすぐ飽和状態になるだろう。「国内売上高の成長率が鈍化で危険」という人もいるが、8,700億円のブランドがドンドンとさらに売上高を伸ばせるということはほぼ不可能に近い。特にアパレルでは国内市場の占有率が機械や自動車のように50%とか60%に達することはない。一説には15%くらいが限界だと言われており、ユニクロはそこにほぼ到達しつつある。2018年度の決算では海外ユニクロ事業の売上高が初めて国内ユニクロ事業を超え、2019年度は海外ユニクロ事業が初の売上1兆円突破した。だからここからさらに企業規模を拡大するためには、一層の海外出店が必要とある。

 低価格品とはいえ、ファッションは嗜好品の側面が強いから、各ブランドとも得意地域と不得意地域がある。ザラは圧倒的にスペインを中心としたヨーロッパでの売上比率が高く、2019年1月期では売上高の45%をヨーロッパが占める。アメリカ市場ではようやく好転してきたと言われるが売上構成比は15.5%しかない。一方のファーストリテイリングは、圧倒的に中華圏が強く、次いで東南アジアで、欧米ではまだ弱い。今後は弱い地域をどう伸ばすか、未出店地域での出店攻勢をどれだけ早くでき、陣地を拡大できるかにかかっているといえる。しかし、これはユニクロに限らずザラも同様だろう。

 これらの状況を踏まえて考えると、手っ取り早くファーストリテイリングが売上高を増やすには他ブランドのM&Aという手段もあるが、これまでのM&Aはセオリー以外、ほとんど成功していない。それよりも第2の柱となった自社ブランド「ジーユー(GU)」を育てたことや、現在秘かに売上規模を拡大している自社ブランド「プラステ(PLST)」のように、自社新ブランドを育成するほうがファーストリテイリングには適しているのかもしれないと感じる。

 また、ウルトラライトダウンやヒートテック、エアリズムなどに続く大ヒット商品を開発できるかどうかというところも大きいと言える。女性向け下着のブラトップは国内ではかなりのシェア率を誇っており、これも大ヒット商品の一つと数えても問題はないだろうと思うが、それ以降、目ぼしい大ヒット商品が生まれていない。言うのは簡単だが、大ヒット商品を開発するのはそう簡単ではないことは重々承知している。それでもユニクロはそこに成功しない限りは、今以上の飛躍的な売上高増は見込めないだろう。

 最後は個人的願望になってしまうが、これらの課題を克服して我が国の企業であるファーストリテイリングにインディテックス社をぜひとも越えてもらいたいと思う。

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