【密着取材・前編】三宅一生と公演『青森大学男子新体操部』はどうやって作られたのか?

青森大学新体操部 公演の舞台裏 Photo by: Fashionsnap.com

 デザイナー三宅一生氏が男子新体操をプロデュースするという初めての公演が、株式会社三宅デザイン事務所、株式会社イッセイ ミヤケ、株式会社エイ・ネット主催で7月18日に東京・国立代々木競技場 第二体育館で開催された。主役は青森大学新体操部。あまり馴染みの無い競技だが、披露された約1時間のストーリーは観客から絶賛され大成功に終わった。今回の舞台はどうやって作られ、何を伝えたかったのか。【密着取材・前編】では公演1ヶ月半前の練習から青森大学新体操部を取材し、監督や演出、音楽、衣装など様々な側面から思いを追った。

◆男子新体操とは
 バック転や宙返り(タンブリング)といった大技と、美しくスピード感あふれる動きを組み合わせた演技が特徴の男子新体操は、実は日本発祥のスポーツ。しかし競技人口は日本全国で約1,500人と、女子に比べてマイナーだ。そんな中、全日本学生選手権11連覇、全日本選手権でも4年連続9度目の優勝をするなど、瞬く間にトップクラスに成長したチームが青森大学男子新体操部。シルク・ドゥ・ソレイユの団員を輩出し、カルピスソーダのCM出演や、団体競技を撮影した動画がYouTubeで100万回以上再生されるなど、男子新体操部なら青森大学と言われるほど、高い注目を浴びている。


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豊かな緑に囲まれた青森大学


◆三宅一生の思い
 青森大学新体操部の演技を、偶然にもテレビの報道番組で目にした三宅氏。男子新体操がまだ多くの人に知られていない競技で、選手たちがひたむきに練習を続けていることを知り、その素晴らしさを伝えたいと考え、次代を照らすひとつの光となることを願って公演を企画したという。「選手たちの力強さとしなやかさをあわせもつ動きの美しさ、競技の尊さを伝えたいというひたむきな態度は東北の底力そのもの」と三宅氏は語っている。


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公演1ヶ月半前、練習が行われたのは市内にある青森山田高等学校の体育館

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 なお、三宅氏はコスチュームデザインも担当している。


◆中田吉光ヘッドコーチの思い
 青森大学新体操部を率いるのは、自らも青森県出身で、1986、87年の全日本新体操選手権に選手として連続優勝した経験をもつ中田吉光ヘッドコーチ。指導者として高校と大学のチームを何度も全国優勝に導いている名将だ。男子新体操界のリーダーとして活躍している中田ヘッドコーチに、競技の現状や三宅氏との出会いについて聞いた。

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ー男子新体操の現状は

 まだまだ認知度は低いので、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。日本で生まれた競技スポーツなんですが、まだ世界大会はない。4年前には国体の競技から外されてしまったんです。本来の我々のスポーツの良さや、あり方をもっとアピールすることも必要でしょう。

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ー競技の魅力は

 見れば華やかですが、たった3分の演技のために、選手たちは練習を何日も何時間も、数えきれないくらい繰り返している。実はとても地味で苦しい競技かもしれませんが、細かい作業に集中して繰り返して、極めていくことは日本人の魂に通じるものがあるかもしれませんね。私は完成されたものを見てもらえれば、選手達の努力が感動に変わると信じています。この競技の良さというのはそこなんですよね。今の日本に、何かひとつの明かりを灯すようなスポーツとして広がっていければと思っています。

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ー三宅一生氏との出会いについて

 振り返ればこのプロジェクトは、すごいスピードで進んでいます。我々は競技以外に演技会や舞台などの公演をやっていますが、その報道番組が2月にTV放送で流れたんです。すぐに三宅さんの会社から電話を頂いて、同じ月に福島の被災地でやった演技会にみなさんが見に来てくださいました。翌月に私が東京に出向いて、そこで急遽、三宅さんにお会いしたんです。まずブランドとか名前とかではなくて、これまですごいことを成し遂げてきた人なんだろうなという強い眼力やオーラに圧倒されましたね。そしてご本人から、青森大学新体操部の映像を見て「なんて力強く美しい動きだ」と驚いたというお話をしてくださいました。選手たちの存在を、青森からもっと広めようと思いを傾けてくださって、嬉しかったですね。それから実際に舞台をやるところまで進んできたんですから、三宅さんの情熱と行動力には本当に驚かされています。

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ーこの公演の意味をどのように考えているか

 私は、青森の文化として男子新体操を根付かせたいと思っています。「青森=ねぶた」「青森=リンゴ」そして「青森=新体操」というように。文化を通じて地方に人を呼んだり、関わる人の仕事が成り立ったり。だから、ただのショービジネスという考えとは違います。『BLUE(ブルー)』という大きな公演をやった時には反響も大きく、青森のみなさんも喜んでくれて、こうしてつながった。そういう意味で今回も大事な公演になると思っています。歴史というか、ひとつなにか残るような物ができればと思いますね。初めての種目も多いですが、三宅さんのオーラに負けないように、食らいついていきますよ。

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