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ITが変えるファッション販売 ネットとリアルの最前線

 縮小傾向にあるファッション市場で苦戦する百貨店を尻目に、ECサイトやフリマアプリといったネット販売が伸びている。更に最近では、動画コマースや販売機能を持たない店舗など、新しいビジネスモデルが日本でも増えてきた。従来のやり方に捉われず、今の時代に沿った販売方法の最前線を探る。

成長の一途をたどるEC

スタートトゥデイ、時価総額1兆円をスピード突破

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 ファッション通販サイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するスタートトゥデイが、飛ぶ鳥を落とす勢いで拡大している。2018年3月期第1四半期決算は、商品取扱高が前年同期比40.9%増の595億円、売上高が同39.4%増の214億円、営業利益が同59.3%増の79億円、純利益が同54.5%増の55億円と絶好調。決算発表の翌日8月1日には、時価総額1兆円を突破した。これは大手百貨店を擁するJ.フロント リテイリング(8月7日時点:4285億円)や三越伊勢丹ホールディングス(8月7日時点の終値:4423億円)の2倍以上の水準だ。同社は今後の商品取扱規模の拡大を見込み、物流センター「ゾゾベース(ZOZOBASE)」を約2倍に拡張することを発表している。

 グローバル企業ではアマゾン(Amazon)がファッションカテゴリーを伸ばしており、日本でも存在感を強めている。ファッションECのスタンダード化はますます進みそうだ。

【関連記事】
スタートトゥデイ、物流センター「ゾゾベース」を約2倍に拡張(2017年6月29日)
ZOZOTOWN運営スタートトゥデイ、時価総額1兆円をスピード突破(2017年8月1日)

動画化するEC、購入を後押し

 従来のファッションECでは、画像と文章のみで商品の魅力を伝えるには限界があった。そこで、アパレルが取り組み始めたのがECの動画化だ。有名人やインフルエンサーから一般人まで、商品を動画で紹介するアプローチが増えている。

 LINE元社長の森川亮氏が立ち上げた女性向け動画メディアのC Channelと「サマンサタバサ(Samantha Thavasa)」が協業し、動画コマースを始動した。公式クリッパー(動画投稿者)には、サマンサタバサのプロモーショナルモデルのミランダ・カーが就任している。

 またC Channelは、アパレル大手のオンワードホールディングスとEC専用ブランド「トゥー フェイシーズ(Two Faces)」を始動。実店舗を持たずウェブのみの展開にすることで手に取りやすい"リアルな価格"を実現し、C Channelで関連動画コンテンツとして公開している。「ソーシャル×動画で物を紹介し、すぐに買えるという流れが勢いを増すなかで、インフルエンサーと取り組むオンラインブランドを一気に加速できたら」(C Channel 森川)。

C CHANNEL×オンワードがウェブブランド始動 "クリッパー"ら20代女子が商品を企画(2017年3月3日)

ライブコマースでインタラクティブな購入体験

 ファッション通販サイト「ショップリスト(SHOPLIST)」とソーシャルライブコマース「ライブショップ(Live Shop!)」は、ミレニアル世代のトレンドが「モノを売る・買う」だけではなく、ショッピング体験の楽しみを共有することに変化している背景に着目。ライブ配信とECサイトをつなげた新しいチャンネル「SHOPLIST Live」をライブショップ内に開設した。

 チャンネル内でモデルやタレントがアイテムを紹介し、ライブ配信中に気になったアイテムをクリックすると特設サイトに遷移し、リアルタイムで購入が可能。また、出演者と視聴者はコメントやハートなどを通して交流できるほか、視聴者アンケートや抽選販売といった参加型企画を用意し、ショッピングにとどまらずコミュニケーションの機会も提供する。

ライブ配信×ECの新たなビジネスモデル創出 ライブショップがショップリストと提携(2017年6月29日)

 年内の上場が噂されている日本最大のフリマアプリ「メルカリ」も、ライブ配信で商品の販売や購入ができる新機能「メルカリチャンネル」の提供を開始した。一般的に浸透しているテレビショッピングとは異なるインタラクティブな体験により、若い客層を掴めそうだ。

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画像: メルカリ

メルカリ、ライブ配信で販売や購入ができる新サービス「メルカリチャンネル」を開始(2017年7月6日)

 

リアル店舗ならでは、これまでにない取り組み

店頭の声掛けを無言で防ぐショッピングバッグ 8割が賛成派

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画像: URBAN RESEARCH

 セレクトショップ「アーバンリサーチ(URBAN RESEARCH)」は、店頭での"声掛け不要"を無言で意思表示できるショッピングバッグを考案した。"声掛け不要バッグ"を持つと店員からの声掛けはないが、客からスタッフへの声掛けは自由。これについて様々なメディアが取り上げ、SNSで意見が交わされるなど話題が広がった。

 広報担当者は、"声掛け不要バッグ"を導入した経緯について「ネットで買い物をする人の購買心理を考察していたところ、『商品が家に届くから』『買い物に行く時間がない』といった理由の他に『接客して欲しくない』という人が多いのではないかという意見が挙がった」といい、また自社の購入者向けアンケートでは接客を評価する声があった一方、「声掛けがしつこい」などの意見もあり、これらの対応策として展開を開始したと説明する。

 FASHIONSNAPが実施した"声掛け不要バッグ"についてのアンケートでは、回答があった6,158票中、81%が「あり」19%が「なし」で、8割以上が賛成派という結果になった。

「声掛け不要」を合図するショッピングバッグ、アーバンリサーチが試験導入(2017年5月25日)
"声掛け不要バッグ"の話題が広まる 8割が賛成派(2017年6月5日)

 

GU、電子タグで画期的なセルフレジ

 ファーストリテイリングが展開する「ジーユー(GU)」は、商品についた電子タグ(RFID)を読み取って精算できるセルフレジの導入を開始。セルフレジというと、1点ずつ手動でバーコードを読み取るものがイメージされるが、ジーユーのセルフレジではハンガーを取り外した商品をセルフレジ下のボックスに入れると瞬時に情報が読みられる仕組み。商品点数と精算金額が表示され、支払いを済ませたら商品を袋に入れるだけ。客一人あたりの精算所要時間は、有人レジと比較して最大で約3分の1に短縮できるという。レジ混雑の緩和にも役立ちそうだ。

 今年8月末までに全国のジーユーの約半数にあたる176店舗にセルフレジの設置を予定しており、また同時に電子タグを国内全店に採用することで在庫管理の精度と作業効率の向上を図っている。

プレッシャーを感じずに"試着するだけ"の店舗形態

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 デザイナー倉橋直実が手掛ける「ザ・リラクス(THE RERACS)」は、"ただ試着するだけ"の空間として「THE RERACS FITTING HOUSE」をオープンした。店内には最新コレクションのサンプルが並び、自由に試着可能。店頭では金銭授受は行わず、ECサイトで購入や予約を受けるシステムで、ECサイトでは商品ごとに取引先が記載されるため取引先等の実店舗で購入することもできる。

 倉橋直行代表取締役はこのような店舗形態のメリットについて「商品を買わなくちゃいけないというプレッシャーを感じることなく、自由に見て、試着できる。リラクスの世界観を感じて、物を体感してもらい、購入して頂く場合は卸先でもECでも選択肢はお客様に自由に決めて頂ける」とし、またECサイトで購入するメリットを「品質管理が徹底されたセンターから商品が1番綺麗な状態で手元に届くこと」と捉える。

「実店舗はPR機能」ザ・リラクスが"試着するだけの空間"をオープン(2017年6月9日)

まとめ:これからどうなる?

 アメリカでは、自社で企画・製造した商品を自社運営のECでのみ販売する「D2C(Direct to Consumer)」というビジネスモデルが存在感を増しているが、日本国内においても特にITの活用が目立ってきた。絶好調のスタートトゥデイは、年内にICTやIoTを活用したプライベートブランドの立ち上げを予定。また、ファーストリテイリングは有明に構える新社屋UNIQLO CITY TOKYOで「有明プロジェクト」と題し、これまでの製造小売業から情報製造小売業(=DIGITAL CONSUMER RETAIL COMPANY)へと改革を進めている。情報プラットフォームを活用し客の要望をリアルタイムに近い形で商品化に反映するサプライチェーンの効率化やダイレクトな販売方法、AIを用いたネット接客などの開発は、アパレルの未来の形を示すかもしれない。