2017年に無料配布を開始した際は、10時間で23万件の予約が殺到するほどの話題を見せた「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」。初代ゾゾスーツは、2022年6月にサービスを終了し、現在は後継型である「ゾゾスーツ2(ZOZOSUIT2、現ゾゾスーツ)」のみを展開していたが、その利用は一部のパートナー企業に限定され、日本のユーザーたちがゾゾスーツを目にする機会は近年減少していた。
そんな中、同社は4月12日に新たに法人向けの計測業務効率化サービス「ゾゾメトリー(ZOZOMETRY)」を発表。計測を必要とする事業者を通じて、再びゾゾスーツが日本の利用者の手に渡る機会が増えることになる。ゾゾが目指すこれからの計測サービスの可能性とは?開発の背景から細かな機能、展望まで、同サービスを運営するゾゾの新事業創造本部 新事業推進部のディレクター 家田敢氏に聞いた。
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ゾゾの計測サービスのあゆみ
初代ゾゾスーツは2017年11月に発表され、同年12月ごろから発送を開始。ゾゾスーツで計測した数値をもとに自分の体に合ったサイズのアイテムを購入することができるプライベートブランド「ゾゾ(ZOZO)」での活用を主な目的とし、発表当時は注文数に対して生産が追いつかないほどの人気を見せた。2018年4月には元来のセンサー式からマーカー読み取り式に計測方法を変更することでスーツ本体の製造を簡易化し生産体制も強化したが、2019年1月にはゾゾスーツを起点としたPB事業が125億円の赤字になると発表し、2022年にサービスを終了した。
2020年に発表され、現在でも活用されている3D計測用ボディースーツの新型ゾゾスーツ(ゾゾスーツ2)は、計測マーカー数を約50倍に増やし、より精緻な身体の3Dモデル生成ができるように刷新。利用者は公募で集まったパートナー企業に限定し、新市場の発掘と見極めを目的にプロジェクトベースで新領域でのサービス開発を行った。2021年7月には、プロバスケットボールクラブ「アルティーリ千葉」を運営するアルティーリと千葉大学と共同で、手動で行われていたスポーツ選手の体型計測を簡易化する取り組みを始動。2023年8月には、東京大学大学院医学系研究科の学者たちとの研究で、ゾゾスーツを利用して若年者の中等症以上の脊柱側弯症を検知することに成功した。2024年1月には、ゾゾスーツを用いた四肢周径測定が、リンパ浮腫の評価システムとして有用である可能性があることをがん研究会 有明病院と共同で発表するなどフィットネスやヘルスケアの領域に可能性が見出されている。
需要の発掘を行うプロジェクトと並行して、一般向けにはターゲットを絞った派生サービスを複数展開。足型計測に特化した「ゾゾマット(ZOZOMAT)」を2019年に、2021年にはフェイスカラー計測ツール「ゾゾグラス(ZOZOGLASS)」を発表した。2022年夏からは、プロジェクトを通して発覚したフィットネス領域の可能性に着目し、フィットネスが最も普及しているアメリカ限定でワークアウトの進捗をサポートするボディマネジメントサービス「ゾゾフィット(ZOZOFIT)」を提供している。
新サービス「ゾゾメトリー」とは?
ゾゾメトリーは、事業者を対象としたBtoBサービス。様々な事業者との連携を通じて、法人向けの計測サービスが需要に対して供給が少ないことに着目して誕生した。ゾゾスーツ(ゾゾスーツ2)と専用アプリ、そしてその計測データを事業者に提供・開示するというもので、ゾゾスーツは全13サイズを展開しており、提供先の事業内容に応じてサイズを選択(身長134〜205cmまで)できるが、過去の膨大な計測実績から、中央の3サイズで日本人の人口の約85%をカバーできるという。
利用シーンとしては、新入社員等の制服の一括製作や、リモートで計測を行いたいオーダースーツの採寸、などが想定されている。計測可能箇所は全身最大114ヶ所(左右別の合計数)で、ウエスト、上腕、脚は5cm刻みで計測が可能。提供先企業は、114ヶ所の中から任意の計測箇所をカスタマイズすることができる。費用は、基本的にはゾゾスーツ本体の価格と年間のシステム利用料の2軸で算出。対象とする企業の規模を問わず、企業ごとのカスタマイズプランを用意する。なお、ゾゾメトリーで取得されたデータは同サービスの改善にのみ使用されるという。
◾️ゾゾスーツでの計測の流れ
- スーツを着用したら、アプリに身長と体重を入力し、スマホの外カメラを自分に向けて固定する。
- ボイスガイダンスの説明に沿って準備。(ボイスガイダンスは日英2言語に対応)
- スマホから2m離れて腕をあげ、時計回りに30度ずつ向きを変え、1回転するように計12回専用アプリで全身を撮影する。
- 撮影が終了するとすぐにアプリ上に3Dモデルと数値が表示される。
※鏡や周囲にドット柄のものがあると撮影がうまくいかない場合があるので注意が必要。
※撮影時にドットを認識し、3Dに作り替える技術を使用している。対象者が回る際にズレたものは、多くの計測データの蓄積によって精度を高めたアルゴリズムによって最適化される。
※計測した写真は3Dモデル生成後即時破棄される。
慎重に見極める市場とサービスの価値
今後目指すのは、「計測の先にどのような付加価値を与えられるか」。計測後のレコメンド機能を持つゾゾマットのように、ゾゾスーツを利用することで得られる利点を大きくすることができれば、市場を開拓できると語る家田氏。ゆくゆくは海外展開も視野に、確実に足場を固めながらサービス拡大していくという。
◾️ZOZOMETRY:公式サイト
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