明治神宮の門を飾る名和晃平作、金銀の鳳凰。
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Kohei Nawa’s Ho/Oh phoenixes at Meiji Shrine south gate.(Only until November 3rd)
100年前、明治天皇を祀るためにつくられた明治神宮。
今、その本殿の正面に建つ南神門に金銀二体の鳳凰が飾られている。
現代アーティスト、名和晃平さんの作品「Ho / Oh」だ。
11月3日(火)まで(残り9日間)。
古来から東洋の伝説にみられる鳳凰をモチーフに、3Dモデリング技術で造形。ただ、本当に炎がそのまま鳥になったような複雑な形状。3Dプリンターに精通した名和さんだが、この形は3Dプリンターには不向きと京都の仏師たちに木彫りでつくらせ、漆を塗り、その上に箔を塗るという京都の伝統技法で形にしたもので、古い作品にも新しい作品にも見えるタイムレスな存在感がある。
日曜の明治神宮は予想以上に人出が多く、閉門時間を過ぎても人の波は収まらない中、1時間半粘って写真を撮ったが、人々が「あれ、あんなのあったっけ?」「あ、鳳凰だ」「きれい」「金銀だね」「これ、本物の金かな」などと口々に言って立ち止まっては記念撮影をする様子がなんだか楽しく、昔の人たちは神社仏閣をどんな風に楽しんだのか想像を巡らせていた。現代を生きる我々が、美術館に新しい展覧会を見に行くような感覚もあったのではないだろうか。
閉門時間を少し過ぎた頃、作者の名和さんも現れた。作品を奉納した時も、彼の工房「Sandwich」のメンバーで公式参拝をしたそうだが、今日も何か神事があったのかもしれない。
ちなみに今回の作品の正式タイトルは「鳳 / 凰(Ho / Oh)」で、昨年、大丸心斎橋店の依頼で制作した。大丸心斎橋店と言えば大阪・心斎橋で300年の歴史を持つ老舗百貨店だが、その本店は1933年米国の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズにより建てられた。その際、扉の上に飾るシンボルとしてウォーリズは「フェニックス(鳳凰)」の製作を海外メーカーに依頼したが、なぜかできあがってきたのは「孔雀」だったという逸話があり、名和さんがこの話に興味を持ち、改めて「鳳凰」をつくって大丸に納めたというエピソードがある。製作の様子の動画を大丸が公開しているので興味のある人は是非、見てみて欲しい。
以前にも書いたが明治神宮は今年、鎮座百年を祝してさまざまな行事が行われている。中でも注目の催しが「神宮の杜芸術祝祭」というイベントだ。
今、原宿駅目の前の大鳥居をくぐってすぐのところにもステンレスでつくられた巨大彫刻(Wheels of Fortune/松山智一)などが飾られているが、これは「天空海闊(てんくうかいかつ)」と呼ばれる野外彫刻展の作品で12月13日(日)までの展示となっている(他に3作品ある)。
特に今週は一年にわたる祝祭のクライマックスで、10月27日(火)からは建物も美しい聖徳記念絵画館で「『切切偲偲(せつせつしし)−応援が力になる』 これからの千年のアート展/朝山まり子&明治神宮歴史写真の写真展」という写真展が始まる。
また10月30日からの3日間は、普段は17時で閉門する明治神宮が19時まで(11月1日は20時まで)の夜間参拝を受け付け、その際、参道が何百という奉祝献灯「夢鈴」で照らされる(現在、既に設置済み)。
さらに東日本大震災で被災した東北や熊本、大雨被害にあった四国などから感謝の意を花で伝える「サンクスフラワープロジェクト」では福島県のダリアが提供される予定だ。
環境問題が改めて取り沙汰されることが多い昨今だが、百年前の日本人が全国から樹木と若い人を集め、百年後の森を夢見て、何もなかった土地に、あの広大な神宮の森をつくった物語は東京人にはぜひとも知っておいて欲しい。そしてその物語を思い起こすと、きっと「鎮座百年目」という特別な年を自ら祝いたくなることだろう。名和晃平の「Ho / Oh」が鎮座する南門は、その時の気持ちを未来へとつなぐ、よき思い出となるはずだ。
「Ho / Oh」の写真を撮った帰り道、明治神宮ミュージアムの前に佇む、名和晃平のもう一つの作品「White Deer」がきれいに月に照らされていた。
東京在住でない人も、これのためだけにGo To 東京する価値ありますよ! その際にはいくつか前の投稿のGYRE GALLERYの展示やDESIGNARTを見るのも忘れずに!
現代アートを飾ろうと新たなチャレンジをした明治神宮にも、名和晃平さんを選びこの展示を仕掛けたArt Powers Japanの山口裕美さんにも感謝。
「伝統は革新の連続」という言葉や「伝統も昔はアヴァンギャルドだった」という言葉があるけれど、この祝祭で百年後の伝統が誕生したような印象を持った。
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