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Image by: 大丸松坂屋百貨店
「百貨店発のファッションサブスク」という意外性で話題を集めた⼤丸松坂屋百貨店の「アナザーアドレス(AnotherADdress)」。ローンチからまもなく1年が経つが、2022年2月時点の会員数は6700人超、累計レンタル数は2万着と、事業計画を大きく上回る実績を収めている。社内ベンチャーとして発足したファッションサブスクリプション事業から得たものは何か。事業立ち上げ責任者の田端竜也氏にオンライン取材で振り返ってもらった。
■アナザーアドレスとは?
毎月自由に3着洋服が選べる、サブスクリプション型ファッションレンタルサービス。月額税込1万1880円で、クリーニング不要で返却できる。参加ブランドは「マルニ(MARNI)」「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」「3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)」といったデザイナーズブランドも多数揃い、「百貨店業界初の高級アパレルのファッションレンタル」として注目を浴びた。
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◇「案内が追いつかない」会員数は想定の6.7倍に
サービスの本格ローンチは2021年4月。当初の事業計画では会員数1000人を目標としていたが、事前会員登録を3月に開始したところ、3日間で3500人、約1ヶ月で4000人に到達した。物理的にサービスの案内が間に合わなくなったことから、6月以降はレンタル権の付与を一時休止。それを前提に会員登録を引き続き受け付けるとその後も登録者数は伸び続け、現時点で約6700人の会員登録があるという。
登録者の平均年齢は44歳で、働く女性が多数。累計レンタル数は約2万着に及ぶ。コロナ禍という背景もあり、パーティードレスやセットアップスーツのレンタル数は想定を下回ったが、リモート会議が増えたことから画面映えするデザインのブラウスなどに需要が集まっている。「黒などのベーシックなものではなく、花柄だったり、色別でもオレンジが一番動きが良い。レンタルだからこそ普段着ない服に“挑戦”できるという心理もあると思う」(田端氏)。少量だが、メゾン マルジェラなどの10万円前後のデザイナーズブランドのバッグ類も好調だ。
◇国内ブランドやマッシュ系ブランドが人気、マルジェラは回転率1位
初回は国内から外資まで50ブランドをラインナップ。取り扱い点数の多い「ウィークエンド マックスマーラ(Weekend Max Mara)」や「アドーア(ADORE)」「アローブ(Arobe)」は特に動きが良いという。回転率ではメゾン マルジェラがトップで、「良いブランドを知りたい」というファッションへの興味関心の高さから「エズミ(EZUMi)」などのドメスティックブランドも人気を博している。
■初回参加ブランド
「マルニ(MARNI)」「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」「3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)」「ミントデザインズ(MINT DESIGNS)」「レッド ヴァレンティノ(RED VALENTINO)」「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)」「アドーア(ADORE)」「エポカ(EPOCA)」「ベイジ,(BEIGE,)」「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」「ジルスチュアート(JILLSTUART)」「セオリー(Theory)」 など
レンタル服の平均単価は約5万円。デザイナーズブランドに加えて「フレイ アイディー(FRAY I.D)」をはじめとするマッシュホールディングス系列のブランドも多数取り揃えている。「セルフォード(CELFORD)」に関してはレンタル数第4位と好実績。「セルフォードが人気だと聞くが、店舗には入りづらい」といった理由でレンタルする顧客も存在し、潜在ニーズの発見にもつながった。
ブランド側にとっても、エントリーカスタマーの獲得に結びついている。顧客属性をはじめ、点数や修繕発生率といったデータ提供は有益性が高く、また、小売が苦戦している状況下で「買い付けが増えてありがたい」といった声もあるという。
◇解約率は月平均1%未満
事業単体の売上高は非公開だが、アクティブユーザーは月単位で9割と高い水準を維持。解約率は月平均で1%未満に留まっている。売り上げの10%は4着以上レンタルしたい顧客の「レンタルチケット」(1枚税込3850円)の購入に支えられ、再入荷通知機能がチケット購入を促進する役割を果たしている。
百貨店小売と異なるビジネスモデルであることから、ローンチ前は「社内に理解してもらう必要があった」と⼤丸松坂屋百貨店 澤田太郎社長がインタビューで回答していたが、今では「サステナビリティにもつながるのでポジティブに捉えられている」と田端氏。事業単体で赤字状態だが、計画ベースでは20%上方修正するなど順調に進捗し、レンタル権の待機期間などが改善されれば、事業の成長スピードはさらに上がっていくと見ている。
◇取り扱いブランド数は50→113に、サステナの取り組みも強化
ローンチ1周年を機に、ブランド数は2倍超の113ブランドに拡大。「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」や「アーデム(ERDEM)」「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」「バリー(BALLY)」「セルフ ポートレイト(Self-Portrait)」などが追加された。
■新規追加ブランド(2022年春夏の新作が入荷され次第、順次追加)
「アーデム(ERDEM)」「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」「ディースクエアード(DSQUARED2)」「ヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)」「コルヴィル(colville)」「ビューティフルピープル(beautiful people)」「ワイズ(Y's)」「ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)」「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」「08サーカス(08sircus)」「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」「ソマルタ(SOMARTA)」「トゥモローランド コレクション(TOMORROWLAND collection)」「デ・プレ(DES PRÉS)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「プルーンゴールドシュミット(prune gold schmidt)」「バリー(BALLY)」「ロゼッタ・ゲッティ(ROSETTA GETTY)」「エフ(ykf)」「コー(CO)」「ピエール アルディ(PIERRE HARDY)」「プロエンザ スクーラー(Proenza Schouler)」「アスペジ(ASPESI)」「シクラス(CYCLAS)」「コート(CO|TE)」「イザベル マラン エトワール(ISABEL MARANT ÉTOILE)」「セルフ ポートレイト(Self-Portrait)」「デザインワークス(DESIGNWORKS)」「スリードッツ(three dots)」「フォルテ フォルテ(forte_forte)」「ヴァネッサブリューノ(vanessabruno)」「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」「ピリングス(pillings)」「パーミニット(PERMINUTE)」「ジュン オカモト(JUN OKAMOTO)」「マルモア(marmors)」「ノントーキョー(NON TOKYO)」「furuta」「インプロセス トーキョー(IN-PROCESS Tokyo)」「ギャルリー ヴィー(GALERIE VIE)」「ソレイアード(SOULEIADO)」「マカフィー(MACPHEE)」「ボールジィ(Ballsey)」「ヒュー デイ トゥ イブニング(hue DAY TO EVENING)」「エム・ダブリュー(MW)」「フレーク(flake)」「レリル(lelill)」「パノルモ(PANORMO)」「ニュイノアール フルタ(nuitnoire furuta)」「リン(WRINN)」「エイジ・サン・マル・ニー・ロク(age3026)」「エレ ストリオフ(ELE STOLYOF)」「スタイリング(styling/)」「ファーファー(FURFUR)」「マイカアンドディール(MICA&DEAL)」「アツロウタヤマ(ATSURO TAYAMA)」「カリテ(qualite)」「ダンスキン(DANSKIN)」「アソウト(a.saught)」「マヌカンズ ジャポン(Mannequins JAPON)」「トーゲントーゲン(TOHGEN TOHGEN)」「オルセット(ORSETTO)」「メゾンヴァンサン(Maison Vincent)」
注目は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」と「ダンスキン(DANSKIN)」。スポーツ・アウトドアブランドの投入は初となる。スポーツミックスのトレンドを踏まえ、「ミックスコーディネートを楽しんでもらうために、ファッション寄りのアウトドアブランドを取り入れた」(田端氏)という。マッシュ系列では「スタイリング(styling/)」と「ファーファー(FURFUR)」が新たに加わった。また、利用客から要望があった「安心保証サービス」「サイズ比較ツールの導入」「返品システムの変更」などの新サービスを導入した。
サステナブルな取り組みでは、東京藝術大学と三菱ケミカルの2者と手を組み、三菱ケミカルが開発する脱炭素型繊維「トリアセテート」を使用したアイテムをレンタルすると「藝大 Hedge」の植樹活動を支援できるプログラムを始動。このほか、ワコールと提携し、インナーの消耗や紛失で着られなくなったアイテムに対してワコールのインナーを導入する。
東京藝術大学と三菱ケミカルの3社で取り組むサステナビリティプログラム
◇目指すは「レント・ザ・ランウェイ」超え
想定以上の反響を集めたアナザーアドレス。田端氏は需要の高さに手応えを感じ、「5年目で登録者3万人、その後の1年間で売上高55~60億円を目指す」という目標実現に向けて事業拡大を進める。現在ネックになっているレンタル権付与の待機期間は「今夏頃には1ヶ月以内には案内できるようにしたい」と回答。ファッションレンタルだけではなく、手持ちの服と一緒に返却してクリーニングに対応する取り組みや、スタイリストを起用したコーディネートサービスなどの新施策も視野に入れる。
同氏が見据える最終的な目標は「ファッションサブスクで日本一になること」、そしてベンチマークにしている米国発の「レント・ザ・ランウェイ(RENT THE RUNWAY)」超え。レント・ザ・ランウェイでは約400ブランドを取り扱っており、アナザーアドレスも同等の規模を目指す。
日本のファッションレンタル市場においては「エアークローゼット(airCloset)」一強状態だが、アナザーアドレスは百貨店ならではのコネクションを活かし、ブランド公認でラグジュアリーやコンテンポラリーブランドを取り揃えている点を「サービスの根幹でありながら強み」とする。ベンチマークとするレント・ザ・ランウェイは先日、米ナスダックでIPOを果たした。日本でもサステナビリティへの関心が高まり、「買う」から「借りる」動きが徐々に広がりつつある中、百貨店発のファッションサブスクリプションサービスがどこまで勢いを伸ばすことができるのか、今後の動向に注目したい。
■他社のファッションレンタルサービス
・エアクローゼット
会員数:70万人(2022年2月時点)
月額料金:税込7480円(※ライトプラン)〜
・メチャカリ
有料会員数:3万人(2019年12月時点)
月額料金:税込3278円(※ライトプラン)〜
・エディストクローゼット
会員数:1万7000人(2018年11月時点)
月額料金:税込8360円(※12ヶ月契約プラン)〜
■アナザーアドレス:公式サイト
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