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通販各社に聞く市場予想と景況感 消費動向の分散化顕著に

通販各社に聞く市場予想と景況感 消費動向の分散化顕著に

日本唯一の通販市場の週刊専門紙
通販新聞

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 通販新聞社は7月、通販実施企業を対象に、今年下期以降の通販市場の予想、景況感についてのアンケート調査を行った。市場規模については「横ばい」と回答した企業の割合が半数を占めた。新型コロナ収束による特需の消失、物価高騰による消費マインドの冷え込みを懸念する意見が目立った。また、消費動向については「下がっている」とする回答が4割で最多となった。今後の市場はどうなっていくのか、各社から寄せられた声をみていく。

 本紙は主な通販実施企業約600社を対象に7月に実施した通販通教売上高調査に合わせてアンケートを実施した。

下期予想

コロナ5類移行で景況感に変化も 

アンケートでは「2023年下期以降の通販市場」について質問し、「拡大する」「横ばい」「縮小する」の3択で回答してもらった。その結果、有効回答数のうち、「横ばい」と回答した企業は51%を占めた。「拡大する」は38%で「縮小する」は11%だった(上グラフ参照)。

 「横ばい」と予測した企業の意見で目立ったのは、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことに伴う景況感の変化だが、その受け止め方は肯定派と慎重派に分かれた。

 肯定派の意見は、「行動制限がなくなり、当面は『ソト消費』『コト消費』が旺盛で、特に富裕層が牽引して実店舗が売上を伸ばすと見ている」(テレビ東京ダイレクト)、「5類移行後に増加した観光やイベントへの消費動向は今後もしばらくは続くと思われる」(ちゅら花)、「巣ごもり消費が減少し、外出型消費傾向がしばらくは継続すると想定」(アイム)などだった。

 一方、慎重派の意見では「経済活動の正常化が期待される一方、長期化するウクライナ情勢の影響に伴う物価高騰及び円安の影響により、景気の不透明な状況が続くと予測。通販市場でも同様な傾向が考えられる」(ハーバー研究所)、「消費行動は活発化しそうだが、原価値上げによる商品売価アップの影響で買い控えの恐れもある」(フォーレスト)、「巣ごもり需要はなくなり、通販業界も平準化されていくと予測」(インペリアル・エンタープライズ)などだった。

 その他の意見では、「他社通販との競争激化で顧客獲得効率が悪化している。一方、定期の離脱防止策の成果が徐々に出て、定期契約件数は微増のため今年以降の売上は横ばいと推測」(富士産業)などがあった。

参入増やEC定着「拡大」は約4割

「拡大する」と回答した企業では、新規参入組の増加が市場拡大にも寄与するとの意見が目立った。

 「多数の企業の参入が見られるため」(てまひま堂)、「新規参入者が多いから」(世田谷自然食品)、「国内食品宅配マーケットは、コロナ禍を経た消費者の生活動向の変化や、国内外様々なプレイヤーの参入により活性化。20年度~25年度までのCAGR(年平均成長率)が3・3%と年々拡大しており、今後も順調な市場拡大が予想される」(オイシックス・ラ・大地)、「日本のEC市場の伸びは、まだ頭打ちの状況にはないと考えている」(田中貴金属ジュエリー)などだった。

 新型コロナに関連する意見としては、「コロナ拡大を機にEC化が加速したため」(アスクル)、「コロナ禍より伸びは鈍化するが、高齢者のネット利用などの影響もあり、まだまだ伸びは続く」(ヤマサキ)、「コロナ禍前の購買行動や日常生活が戻りつつある。巣ごもり消費の影響によるEC市場バブルは落ち着きを見せる一方、ECは新たな購買手法として確立しており、今後も横ばい~拡大へ向かうと予測」(北の達人コーポレーション)などだった。

 この他、「店舗も含めたマーケティングがより推進され、OMOを推進しているところはより相互送客の関係値となると予測。インフルエンサーを含めたSNS発信も盛り上がり、売り上げに直結する」(バロックジャパンリミテッド)などの意見もあった。

 「縮小する」の回答では「巣ごもり需要の低下、コロナ後の反動による実体験(百貨店での購入、旅行等)への集中、モール業態との競合により縮小と予測」(日本直販)、「リアル店舗へと市場が分散し、通販の競争激化が予測される」(ベルヴィ)などだった。

消費動向

「横ばい」が約5割前回調査から10%増

 アンケートでは次に「現状の消費動向」について質問し、「上向いている」「下がっている」「横ばい」の3択で回答してもらった。その結果、最多は「横ばい」47%で、「上向いている」は29%、「下向いている」は24%となった(真ん中グラフ参照)。

 最も多かった「横ばい」では、消費動向の分散・多様化を挙げる意見が目立った。

 「旅行やレジャーへの消費意欲は高まっているが、日常的な自己需要品の購入意欲が高まっているとは言えず、全体では横ばい」(全日空商事)、「家計のパイが増えない中で燃料費等の負担を警戒しつつ、コロナ禍で溜まった消費欲求を満たすための買い物(少額)は増えるのではないか。結果、消費に回る金額としては横ばいと想定」(アプロス)、「供給過多で国内需要が伸びない中、消費動向は二極化の傾向にあり、富裕層とインバウンド次第で上向きと見ている」(テレビ東京ダイレクト)、「物価高騰による悪化の一方、外出増加に伴う消費の増加もあり、横ばい~微増と見ている」(オージオ)、「物価高の影響はあるが、ウェブの成長が著しく、本当に質のよいものは購入される傾向。結果として、上りも下がりもしないと予測」(テレビショッピング研究所)などだった。

また、自社の取扱商品に特化した意見としては、「物価上昇に伴う買い控えの可能性はあるが、業務用ユニフォームは必需品的な商材のため横ばいと想定」(ランドマーク)、「行動制限の解除によりサービス・エンタメ関連への積極的投資が出ている一方、衣料品は行動制限(の影響)もそこまでは感じられなかったため横ばいと想定」(バロックジャパンリミテッド)などがあった。

 「上向いている」を選んだ企業では「コロナ禍の規制が緩和・解除され、反動が現れている」(ニッピコラーゲン化粧品)、「行動制限が無くなり、消費動向自体は上向いている」(ベルヴィ)、「外出機会やイベントの増加によるファッション消費の回復」(ユナイテッドアローズ)などコロナ後の好影響を上げる声が多かった。

 この他、「帝国データバンクの景気動向調査によると景気指数は3カ月連続で改善。国内景気は幅広い範囲で持ち直しの動きが強まり、今後もインバウド需要や対面型サービスを中心に個人消費が拡大すると考える」(アイム)、「各百貨店の事業収益、旅行指数の上昇等を背景に上向いている」(日本直販)など、データや指標に基づく意見もあった。

「下向いている」を選んだ企業では「日常生活関連の値上げが続き、節約志向が高まっている」(ヒラキ)、「値上げの頻発や世界情勢の不安等の報道も多く、消費者マインドが上向くのは引き続き難しいと考える」(日本生活協同組合連合会)、「物価高による趣味への費用感の減少」(タキイ種苗)、「物価が高騰しているため」(山田養蜂場)などの意見が目立った。

 この他、「個人向けサイトの売上が低迷している」(フォーレスト)、「DMやオープン媒体の採算性が年々低下している」(富士産業)などの声もあった。

「下向き」4割減、昨年調査より回復基調へ

<足元の景況感、どう変化?>

 足元の景況感について、各社の認識にはどのような変化があるのだろうか。

 「現状の消費動向」(下グラフ)について前回調査(2022年7月実施)と比較すると、通販市場における景況感はわずかながら回復基調にあることがうかがえる結果となった。

 まず、2年連続で最多となった「横ばい」については前回は約4割(38%)だったが、今回は約5割(47%)へと拡大した。新型コロナの5類移行などによる旅行・レジャー関連の需要拡大や、リベンジ消費などの反動増が期待される一方、相次ぐ値上げや世界情勢の不安などのマイナス要因も根強く、景気全体としては拮抗するという見方が大半を占めたようだ。

 次いで多かった「上向いている」は、前回の22%から今回は29%と7%アップした。特に、化粧品やアパレル関連など、外出の機会拡大による好影響を受ける企業の回答が目立った。

 最も数字の変動が大きかった「下向いている」については、前回の4割(40%)から今回は約2割(24%)と大幅に減少した。企業の回答では物価高に難色を示す声なども見られたが、全体の2割弱に落ち着く結果となった。

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