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価値はピーク時の1%未満 D2Cブランドの寵児 オールバーズが「死んだオウム」に転落した理由

かつてはシリコンバレーの寵児としてもてはやされて評価額40億(約6000億円)を誇ったものの、最終的にピーク時の1%にも満たないわずか3900万(約58億5000万円)で身売りされた。D2Cブランドの過酷な現実と栄枯盛衰を象徴するオールバーズ(Allbirds)。

かつてはシリコンバレーの寵児としてもてはやされて評価額40億(約6000億円)を誇ったものの、最終的にピーク時の1%にも満たないわずか3900万(約58億5000万円)で身売りされた。D2Cブランドの過酷な現実と栄枯盛衰を象徴するオールバーズ(Allbirds)。

かつてはシリコンバレーの寵児としてもてはやされて評価額40億(約6000億円)を誇ったものの、最終的にピーク時の1%にも満たないわずか3900万(約58億5000万円)で身売りされた。D2Cブランドの過酷な現実と栄枯盛衰を象徴するオールバーズ(Allbirds)。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

D2Cブランドの光と影:明暗を分けたかつてのユニコーン企業たち

D2Cという言葉がアメリカの小売業界を席巻した2010年代、その先駆者として名を馳せた企業があった。メガネのワービーパーカー(Warby Parker)やマットレスのキャスパー(Casper)、そしてサステナブルなスニーカーで知られるオールバーズ(Allbirds)だ。

オンラインから直接消費者に販売して中間業者を省くというビジネスモデルは、多くのベンチャーキャピタルから巨額の資金を集め持てはやされた。

しかし、現在そのビジネスモデルの限界が見え始め、企業の明暗ははっきりと分かれている。

ワービーパーカーが直近で初の通期黒字化を達成したのとは対照的に、オールバーズは極めて安い価格で身売りを余儀なくされたのである。

シリコンバレーの寵児から転落したオールバーズの悲劇

2015年にサンフランシスコで設立されたオールバーズは、メリノウールを使用した環境に優しいスニーカーで瞬く間に脚光を浴びた。

快適な履き心地とシンプルなデザインはシリコンバレーの制服とまで称され、圧倒的な人気を誇った。

2021年の株式公開時には株価が高騰し、企業価値は最高で40億ドル(約6000億円)に達した。

しかし、その栄華は長くは続かなかった

成長を急ぐあまり、同社は高額な家賃の場所に実店舗を次々と出店し、最大で世界に60店舗以上を展開した。

さらに、レギンスやランニングシューズ、ダウンジャケットなど、消費者が求めていない新しい商品カテゴリーにまで無謀な拡大を続けた。

結果として中核となる魅力が薄れ、巨大な競合他社がサステナブル路線を強化したことで競争力も失っていった。

売上高は低迷し、2025年通期の純損失は7700万ドル(約115億5000万円)を記録した。

資金繰りが悪化した同社は、アメリカ国内のほぼすべてのフルプライス店舗を閉鎖し、ついにブランド管理会社のアメリカン・エクスチェンジ・グループ(American Exchange Group)に事業を売却することで合意した。

その売却額はわずか3900万ドル(約58億5000万円)であり、ピーク時の企業価値の1%にも満たないという極めてショッキングな結末であった

小売調査会社グローバルデータ(GlobalData)のニール・ソーンダース(Neil Saunders)は、同社を空を飛ぶ高揚した鳥から死んだオウムに成り下がったと酷評している。

怒涛の実店舗展開で黒字化を果たしたワービーパーカーの躍進

一方、同じD2Cのパイオニアであるワービーパーカーは、全く異なる軌跡を描いている。

同社の2025年通期の売上高は前年比13%増の8億7190万ドル(約1307億8500万円)に達し、初の通期純利益の黒字化を見事に達成した。

この成長を牽引している最大の要因は、戦略的かつ積極的な実店舗の展開である

同社は2025年に過去最多となる47店舗を新規出店し、合計323店舗体制となった。

さらに2026年には50店舗の追加出店を計画しており、経営陣はアメリカ国内で少なくとも900店舗を展開できる余地があると見積もっている。

オールバーズが店舗展開で失敗したのに対し、ワービーパーカーが成功した理由は、実店舗ならではの明確な価値を提供できたからである。

同社は全店舗の約90%に眼科検診の設備を導入し、アイケアの総合拠点としての機能を強化している。

ただスニーカーを試着するだけでは消費者を店舗に呼び込む動機として弱かったが、視力検査という実体験を提供できるメガネ事業は、物理的な店舗との相性が抜群に良かったのである。

さらに大手小売のターゲット内にテスト店舗を設けるなど、顧客層の拡大にも成功している。

AIとリアルの融合が描くアメリカ小売業の未来

ワービーパーカーの快進撃は店舗拡大だけにとどまらず、最先端テクノロジーとの融合という第3の幕へと突入している

同社はグーグルやサムスン(Samsung)と提携し、2026年後半にAI搭載スマートグラスの発売を予定している。

このメガネにはグーグルの最新AIモデルであるジェミニ(Gemini)が搭載され、ユーザーの視界や状況に応じたパーソナルアシスタント機能を提供するという。

伝統的なアイウェア市場にAIテクノロジーを落とし込むことで、これまでにない全く新しい需要を開拓する狙いである。

D2Cモデルは中間業者を排除すれば簡単に利益が出るという魔法の杖ではなかった。

デジタルネイティブなブランドであっても、最終的にはリアルな実店舗での緻密な経営戦略や、他社には真似できない圧倒的な顧客体験の提供が不可欠である。

熱狂的なインターネットのブームに乗って消えていったオールバーズと、地に足をつけた店舗戦略とAIによる革新で生き残ったワービーパーカーの姿は、激しく変化するアメリカ小売業界の過酷な現実を鮮明に物語っている。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

かつて評価額40億ドル以上を誇ったオールバーズが、わずか3900万ドルで売却されたというニュースはアメリカ小売業界において非常に象徴的な出来事です。

実は数年前、ある有名YouTuberが「世界一快適な靴」として愛用していると熱く語っていたのを見て、私もウェストフィールド・センチュリーシティ・センターに出店していたオールバーズの店舗へ実際に見に行ったことがあります。

しかし、店内で実物を手に取ってみると、ロゴすら見当たらないほど極めてシンプルなデザインのわりに想像以上に価格が高く、「これは自分のスタイルや金銭感覚には合わないな」と感じて結局購入を断念した経験があります。

当時のオールバーズを筆頭とするD2Cブランドは、シリコンバレーのテック層やネット上のインフルエンサーを中心に、一種のバブルのように強烈に持てはやされていたように感じていました。

画面越しに作られた熱狂という名の強力な照明が消えれば、消費者の目は途端にシビアになります。

デジタル空間で華やかに膨らんだ風船も、実店舗の運営という過酷な現実の針に触れればあっけなく弾けてしまうということでしょう。

熱を帯びたブームに頼らない、地に足のついた地道な商売の基本こそがいつの時代も小売業の要なのです。

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