「エイミーイストワール(eimyistoire)」や「アニュアンス(anuans)」などのD2Cブランドを手掛けるドットワン(DOTONE)が、転機を迎えている。同社の既存ブランドは、インフルエンサーをディレクターに据え、そのリーチ力とSNSマーケティングによって事業を拡大してきたが、2025年秋冬シーズンに立ち上げたウィメンズブランド「ヘラル(HEELAL)」とユニセックス提案の「アンステイト(UNSTATE)」では、アパレル経験が豊富なデザイナーを起用。ヘラルの2026年秋冬シーズン展示会で、ブランドディレクターのベス(BETH)と、佐々木千春 事業部長にブランドの展望を聞いた。
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アパレル経験者による、アート性の高いディレクション
ヘラルのブランドフィロソフィーは「When in doubt, choose | INDIVIDUALITY(迷った時は、個性を選ぶ)」。他者と違うことを恐れずに、自分が好きなファッションを貫く女性をターゲットとしている。
ディレクターのベスは、国内大手アパレル企業でデザイナーを経験。学芸員資格を取得するほどアートに造形が深く、ヘラルのクリエイションでもアート作品や芸術家が着想源となっている。「エレガントさの中に、ちょっとだけ逸脱した美しさや退廃的なムード、攻撃性を共存させたデザインを心がけています。コンセプチュアルだけど、日常に取りれられるような服を目指しています」(ベス)。
ベスの前職時代からの人脈や経験を生かし、国内の生地メーカーや生産工場と協業。全体の約4割を国内で生産し、毎シーズン半分以上のアイテムに生地メーカーなどと協業した独自素材を採用している。ベスは「世の中にあふれる素敵な服の背景には、日本の素晴らしい産地や工場があります。ヘラルを通じて、服が好きな方に日本が誇る繊維産業についても目を向けてもらえたら」と語る。

26年秋冬は労働とエレガンスを融合
2026年秋冬シーズンは、19世紀のイギリスの画家 ジョン・エヴァレット・ミレー(John Everett Millais)の作品「ヴェール・オブ・レスト(安息の谷)」から着想。ミレーはイギリスのラファエル前派芸術グループの一人で、日本では「オフィーリア」で知られている。テーマとなった作品では修道女が亡くなった仲間を埋葬するシーンを描き、生と死、信仰と現実、静寂と労働といった要素を内包している。
「作品が制作された当時の修道女(シスター)は神聖なものとして扱われていましたが、実際の彼女たちは掃除や洗濯、ほつれた洋服を直す裁縫といったささやかな労働をしながら日常を生きていたのだと思いました。コレクションには抑制的なムードと、暮らしと密接な労働の要素を落とし込み、そこに少しのエレガンスを加えました」と説明する通り、エプロンのディテールを取り入れたスカートや、しつけ縫いをデザインしたジャケットなどを制作した。ワッシャー加工を施したトレンチコートの襟にはスワトウ刺繍のレースをあしらい、ニットカーディガンはブークレ状の糸を用いることで立体感を演出。光沢感のある生地で仕立てたブラウスはカットオフのデザインにカフスボタンを取り入れるなど、手仕事の要素を反映した。








ニットの一部は新潟県五泉市の工場に依頼。ジャカード生地は群馬県桐生市の機屋によるもので、ベスがデザインしたフラワーモチーフをあしらった。また、今シーズンのキー素材であるレースは、ハリ加工を施した総レースのジャケットや、ラミネート加工で仕上げたレースを組み合わせた、レイヤードスカートといったバリエーションで登場した。
中心価格帯はカットソーやシャツが2〜3万円台、スカートやパンツが4〜5万円台、ジャケットが5〜6万円台。







“インフルエンサー頼み”からの脱却
同社を代表するエイミーイストワールやアニュアンス、「ジョゼムーン(JOSE MOON)」、「クレドナ(CREDONA)」では、ディレクターのリーチ力とファン層への発信で、初年度から億単位の売り上げを立ててきた。しかしヘラルでは、“段階を踏んで”ブランドを育てる方針だ。「ブランドコンセプトや世界観を起点に発信していくブランドづくりは、アパレル業界では王道だが当社にとってはむしろ挑戦。ヘラルでは速さよりも濃さを重視する」と佐々木事業部長。
デビュー後は自社ECでの販売に加え、京都発のセレクトショップ「印(イン)」や、セレクトショップを融合したヘアサロン「ユルク(JURK)」といったファッション感度が高いユーザーを抱える個店でポップアップを開催する。現在の主な購買層は30代。年代でターゲットを区切ることはしないが、ものづくりの背景も含めてファッションを楽しむ層に届けていくとした。2026年春夏シーズンは、渋谷パルコで8月2日まで長期ポップアップを開催しているほか、5月中旬から阪急うめだ本店での実施が決まっている。
佐々木事業部長は「数シーズンかけてファン層を把握し、ブランドの濃度を高める」と話す。卸先についても“親和性の高さ”を軸に慎重に選定。コアな客層とのリレーションを築いたタイミングで、同社のSNSマーケティングのノウハウを導入し、徐々に認知拡大を図る。今後3年を目処に売上高5億〜10億円規模に成長させる計画だが、「新しいブランディングを構築することも目的のひとつ」だといい、まずは数字に捉われずに運営する考えだ。
最終更新日:
■ヘラル:公式サイト
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