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予約が取れない店よりも、お気に入りのジェラート屋を選ぶのがラグジュアリー 「ハルノブムラタ」27年春夏

Image by: FASHIONSNAP

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 「バカンス」の語源は、ラテン語で「空にする」「自由にする」を意味する「vacare」。優雅に過ごす休暇をイメージするが、日常の忙しさやしがらみから自分を空っぽにするという意味も持ち合わせている。「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」デザイナーの村田晴信は、“日本発のラグジュアリーレーベル” を掲げ、欧米的ファッションが主導してきたエレガンスを日本流に魅せる挑戦を続けてきた。2027年春夏コレクションでは、リゾート地の情景、喧騒から離れた安らぎを求めてやってくる訪問者、自然体の優美な女性たちといった非日常的なリゾートが持つ官能的なムードを、都会的なワードローブとして表現した。

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 現在ミラノに拠点を置く「ジル サンダー(JIL SANDER)」のウィメンズデザインチームで経験を積んだ村田にとって、イタリアは第二の故郷と言っていい。北イタリアに位置するコモ湖は、アルプスの山々に囲まれた美しい風景と歴史ある建築が並ぶ、ヨーロッパを代表するリゾート地だ。村田は春に訪れたコモ湖と湖畔の街・ベッラージョで体験したたおやかな時の流れと、訪れる人々の軽やかな品格から、今シーズン着想を得た。

 テーマは「COMO, THE PRESENCE OF ABSENCE(コモ、不在の存在)」。エレガンスのためのデザインではなく、着る人の心、リアリティのある“ふるまい”にこそ、美しさは宿るという視点で独自のリゾートスタイルを模索。クリエイションのキーワードに「境界線の曖昧さ」を挙げ、「自分という存在が、空間の中にじわっと溶けていくような」ムードを描いたという。前シーズンがストイックにミニマルで建築的なアプローチを採っていたのに対し、今季はよりゆっくりと時間を過ごす女性像——完璧にコントロールされた美しさではなく、自然のなかで偶然見つけた美しさ——のためのリラックスした印象へと転換している。

 ゆるやかに輪郭をぼかすシルエットの思索は、村田の強みであるギャザーやドレープといった造形テクニックに現れていた。アシンメトリーなバルーンスカートは片側だけギャザーを強く寄せることで不均衡な動きが生まれる。立体的なニット構造で波打つような裾の動きが特徴的なドレスは歩くたびに揺れ動き、ボディラインを自然に霞ませている。

 また、朝から夕への時の移ろいと流動的な自然の美しさを調和させるごとく、淡いブルー、夜景のようなダークネイビー、一瞬の木漏れ日を彷彿とさせるライトグリーンのグラデーションで彩ったニットトップスやカーディガンが登場。シャツドレスは端正なシルエットでありながら、ストライプ生地にレースを重ね揺らぎを宿す。強撚のちりめん素材をシアーに仕上げ、湖面のようなブルー、夕陽を思わせるオレンジレッド、木製ボートやヴィラに着想したブラウン、石畳の温かみを感じさせるベージュに彩色したシャツなど、色調でも不在と存在の“あわい”を表現した。

 ブランドの代名詞であるドレスやワンピースでも、リラクシーなムードが漂う。大胆に脇下からウエストまでカットアウトしたドレスは真夏のリゾートの開放感を匂わせながら、ストンと垂直に落ちる都会的な佇まいを両立。贅沢に用尺をとったワンピースはイタリア製のバックルでウエストマークすることで彫刻的なシルエットを演出。シアーなニットドレスは下地に光沢の強いイタリア製メッシュ、表地に日本製のダークなメッシュを重ね、動作に連動して水面が輝くように奥行きのあるツヤが印象を与える。コモ湖畔の桟橋を印象づけるロープをモチーフとしたディテールは、エメラルドカラーのコントラストステッチとともにコットンドレスに落とし込まれ、景観そのものをまとうような感覚を想起させた。

 さらに村田は、ごく自然な「所作」を実在するエレガンスの表象と捉えた。山形県で織られたアセテート素材のドレスは巧みなパターンメイクで、ポケットに手を入れる仕草によって腰回りにゆったりと布がたまる様子を模った。上質な光沢とハリ感のあるシャツとパンツのセットアップは袖や裾をまくるスタイリングで上品さと軽やかさを兼ね備えた。

 バッグやアクセサリーの新作も発表。クリスタルビーズとゴールドパーツを組み合わせたネックレス&ピアスは、水や霧、滝の流れで偶発的に起こる美しい情景を落とし込んだ。帯に「CIAO」の文字が刻まれたベルトは片側を垂れ下げたスタイリングで遊び心を添え、アイコンバッグ「PIADA」のラージサイズをモデルが抱えるようにラフに持ち、肩肘を張らない女性像を印象付けていた。

 村田は「排他的なラグジュアリーとは対極の、個人的で親密な豊かさ」によってリゾートスタイルを提案したかったと振り返る。「予約が取れないレストランよりも、お気に入りのジェラート屋さんに行く。この"選択する時間"はとても豊かで愛おしい」のだという。人の生活に息づくラグジュアリーは高級なものの消費に在らず日々の営みに宿るという、ハルノブムラタの根幹を明示したコレクションとなった。

 なお、一般入場が可能な新作の展示・受注会を、7月31日から8月2日まで青山の「STUMP BASE」で開催。インスピレーションとなったコモ湖の世界観と連動したジェラートショップ「GELATERIA DI HARUNOBUMURATA」を出店している。湖畔の風景とコレクションのカラーパレットをイメージしたオリジナルフレーバーのジェラート「イタリアンカフェ」「ラムネ」「カシス」「ヘーゼルナッツ」の4種類(各800円)を提供している。

最終更新日:

■GELATERIA DI HARUNOBUMURATA
期間:2026年7月31日(金)〜8月2日(日)
時間:12:00~19:00 ※7月31日のみ15:00~21:00
会場:STUMP BASE
所在地:東京都港区南青山6-5-45

公式サイト

平原麻菜実

Manami Hirahara

FASHIONSNAP 編集記者

埼玉県出身。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程卒業後、レコオーランドに入社。国内若手ブランド、国内メーカー、百貨店などの担当を経て、2020年にビューティチームの立ち上げに携わる。ポッドキャストやシューティング、海外コスメレビュー、フレグランス、トップ取材など幅広い観点でファッションとビューティの親和性を探る企画を進行。2025年9月より再びファッションチームに所属。映画、お笑い、ドラマ、K-POP......エンタメ中毒で万年寝不足気味。ラジオはANN派。

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