アウトドアブランドの「パタゴニア(Patagonia)」が9月10日から、「守りたいのは、自然だけじゃない。」をテーマにした気候キャンペーンを実施している。記録的な暑さや豪雨、雪不足などによって、山や川、海だけでなく、人々の暮らしや地域社会にも影響が及ぶ中、一人ひとりが気候危機を自分ごととして捉え、未来を守るための選択と行動につなげることを目指す。特設サイトに、気候変動に対するパタゴニアの取り組みやアンバサダーのインタビューを掲載しているほか、全国の直営店でイベントを実施。9月25日に開催される「気候マーチ東京2026」への参加呼びかけも行っている。
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19日にパタゴニア原宿で開催されたイベント。登壇者は左からFoE Japanの吉田明子、パタゴニアのサーフィンアンバサダーの阿出川潤、アーティストのコムアイ、社会学者で九十九里の海をまもる会代表の品田友美
Image by: FASHIONSNAP
パタゴニアは本キャンペーンに合わせ、9月12〜27日に全国の店舗で13のイベントを実施。各地の山や海で気候変動を実感しているパタゴニアのアンバサダーや、研究者、NGOや団体の関係者、アクティビストなどが登壇し、地球環境に今何が起きているのか、それに対してアクションを起こしている人々の考え方などを知り、自分には何ができるかを話し合う場としている。
9月19日に東京・原宿のパタゴニア店舗で開催されたトークセッションは、「海と地域の未来と、私たちの選択」がテーマ。アーティスト・歌手のKOM_I(コムアイ)、社会学者で九十九里の海をまもる会代表の品田友美、国際環境NGO FoE Japanの吉田明子、パタゴニアのサーフィンアンバサダーの阿出川潤が登壇し、約30人が参加した。
パタゴニア原宿のインスタグラム投稿から
吉田が気候変動についての前提となるデータを紹介し、品田は千葉・九十九里沖で進められているCCS*事業の現状を共有。阿出川は、九十九里でサーフィンやウィンドサーフィンを子どもの頃から続けてきた中で、「15年ほど前から、風の質や密度が昔の九十九里とは変わってきた。風は見えないので気づいている人は少数だが、都会以上に異常気象だと感じる」とコメント。コムアイは、「気候変動がティッピングポイント**に差し掛かる中で、絶望的な気持ちになってしまうことは多い。その中で見て見ぬ振りをせず、自分の心のバランスも保った上でどうやって楽しくアクションを続けられるか」をテーマに話した。
*CCSとは
Carbon dioxide Capture and Storageの略で、「CO2回収・貯留」技術を指す。大気中へ排出するCO2を減らすため、工場や発電所などから出たCO2を分離して集め、パイプラインなどで輸送し地中に貯留すること。日本政府は2050年までにカーボンニュートラル(C02排出量実質ゼロ)実現を掲げており、その方策の1つとして2024年にCCS事業法が成立。千葉・九十九里沖では、京葉臨海工業地帯の鉄鋼工場などから出たCO2をパイプラインで送り、貯留する「首都圏CCS事業」が進行している。
**ティッピングポイントとは
Tipping Point。小さな変化が積み重なり、ある限界を超えると一気に大きな変化や現象を引き起こす転換点(臨界点)を指す。気候変動においては、劇的で不可逆的な大変化が連鎖し、人の手では温暖化を止められなくなる転換点を意味する。永久凍土や南極の氷床の融解などがティッピングポイントの例。
パタゴニアの気候キャンペーン特設サイトでは、同社のアンバサダーでスノーボードブランド「ゲンテンスティック(GENTEMSTICK)」を手掛ける玉井太朗や、トレイルランナーの石川弘樹へのインタビューなども掲載している。9月25日の気候マーチ当日は、店舗の閉店時間を早め、スタッフがマーチに参加できるようにする。
コムアイに聞く、環境アクションを楽しく続ける方法
パタゴニア原宿でのイベント終了後に、登壇者の一人、コムアイに聞いた。

パタゴニア原宿のアクティビズムコーナーで
Image by: FASHIONSNAP
──環境問題や社会問題について、発信を続けています。どう向き合っていますか?
常に環境のことや社会問題のことばかりを考えることはできないし、それらがいくら喫緊の課題だと思っていても、ずっと取り組むことはできません。私も自分の心を守るために、見なかったふりをすることもある。現状に絶望して、本当に疲れてしまったら、問題は一旦脇へ置いて、1日歌ったり踊ったり、子どもと遊んだりと楽しいことをして過ごしています。人間、楽しいことも、お腹が減ったらごはんを食べるみたいに大事。自分も休み休みやってるから、みんなも休み休み、それぞれやってみてほしいなって思います。
現状に絶望するにしても、一人でする絶望と、みんなでする絶望は違います。誰にも言わずにアクションを始めることももちろんすばらしいけど、やっぱり人と話すことはすごく重要。話す中で新しい疑問が浮かんでくるから、それが調べるきっかけにもなるし、常に正しいことを話さなければと感じる必要もありません。話すことを通じて、同じことを共有できる友達ができることもある。アクティビズムに関わっていて、私はそういう面が楽しいなって思う。生きがいというか、そういうものにつながる部分かなと思います。
──パタゴニアのように、企業が環境・社会問題に対するアクションを支援することについて、どのように感じていますか?
パタゴニアは9月25日の「気候マーチ東京2026」の日も、特別に閉店時間を早めて、スタッフはマーチに参加するそうです。もちろん強制ではないんですが、行きたい人が行けるようにという企業姿勢は素敵だなと感じます。一方で、パタゴニアに対して、「まだまだ足りない」という声もある。もっと反対運動に関われるんじゃないかとか、活動を支援していても、結局はモノを大量に作って売っている企業じゃないか、といった声です。でも、小さいブランド・企業が取り組むことも本当に大事ですが、大きな企業がこれだけの取り組みをしているということには、相応の難しさがあると思う。それをやり続けているのは、すごいなと感じます。
──気候変動に対して、個人が取り組めることもありますが、企業や世の中の仕組みが変わらないことにはどうにもならない部分も大きいです。
一人ひとりが今できることをやるっていうのもすごく大事なんだけど、個人として、社会や企業に働きかけることもできます。それって実はとっても大きなこと。一人では無力だと感じることがあるかもしれないけど、消費者とか市民っていうものを、大きな企業や自治体は実は結構怖がっているんですよね。声を上げられることをすごく怖がっていると思います。
自分がアクションをする中で、「反対することを怖がらない」ということは心掛けています。日本にいると、反対したり、声を上げたりするのは簡単なことではありません。闘ったり、反対したりすることは本当に疲れる。そんな状況下で声を上げるというのはとても大きなこと。自分が声を上げないにしても、声を上げている人をさげすむようなことはしたくないし、しないでほしいなと思います。
最終更新日:
◾️パタゴニア:気候キャンペーン特設サイト
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