
「マルベリー(Mulberry)」が、ロンドンファッションウィーク期間中に、クリエイティブ・ディレクターのクリストファー・ケイン(Christopher Kane)を起用した新ライン「マルベリー バイ クリストファー・ケイン(Mulberry by Christopher Kane)」のデビューとなる2027年春夏コレクションを発表した。
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ブランドとデザイナー、両者のランウェイ復帰
マルベリーは、1971年に英国サマセットで創業したレザーグッズブランド。「ベイズウォーター(Bayswater)」や「ピカデリー(Piccadilly)」といったアイコンバッグで知られ、英国らしい遊び心とクラフツマンシップを軸に長く愛されてきた。

Image by: Mulberry
ブランドにとってレディ・トゥ・ウェアのコレクション発表は、ジョニー・コカ(Johnny Coca)の退任以来、約6年ぶり。ケインにとっても2023年2月に自身のブランドで最後のショーを行って以来のランウェイ復帰となり、ブランドとデザイナー双方のカムバックを印象づける発表となった。

Image by: Mulberry
現地で特に強く感じたのは、久しぶりにランウェイの表舞台へ戻ってきたケインに向けられた、来場者たちの歓喜だ。長年にわたりロンドンファッションウィークで自身のブランドのコレクションを発表し、地元のファッションシーンを牽引してきた存在だが、近年はランウェイから距離を置いていた。そんな彼が今回、イギリスを代表するバッグブランドのクリエイティブディレクターとして新たなスタートを切った。
着想源は英国らしい都会、町、田舎の風景
デビューコレクションのテーマは「都会、町、田舎(City, Town, Country)」。体制とサブカルチャー、自然と産業、制服と個性といった英国社会に共存するコントラストを、ケイン持ち前のセンシュアルでフューチャリスティックな感性で描き出した。

Image by: Mulberry

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背景にあるのは、ケイン自身の原風景だ。「工業的な町で、殺伐としたスコットランドの環境で育った」と振り返り、グレー、白、黒、ボルドーをベースに、スクールユニフォームや炭鉱労働者、工業地帯を連想させるオレンジを差し込んだ。

Image by: Mulberry

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破壊と再生を意味する”斧”のモチーフ
コレクションでは、ブランドを象徴するマルベリー(桑)の木を「根、生命、成長」の象徴として捉えた。そこから、木を剪定し再び成長させるための斧へと着想を広げている。キーモチーフとなった斧は、木を傷つける道具である一方、枝を切り戻すことで新たな成長を促す道具でもある。破壊と再生という二面性は、マルベリーのヘリテージに一度切り込み、そこから新しいものを育てていく今回の再出発とも重なる。

Image by: Mulberry

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斧のモチーフは、刃を思わせる鋭いメタルパーツやシャープなラインとしてバッグやシューズに落とし込まれた。バッグでは、フラップを大きくしスケールアップしたメンズ仕様の「ピカデリー(Piccadilly)」に加え、円筒形のバックパック「アックス(Axe)」、脇に抱えるキューブ型の「チョップ(Chop)」など、全4型を披露した。

Image by: Mulberry

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アーカイヴの再解釈で特に目を引いたのが、ブランドを代表するバッグ「ベイズウォーター」の特徴的なライン。バッグのフォルムから抽出したシェイプを反復させ、スカートやドレス、ジャケット、トップスへと展開した。創業以来のアイコニックなディテールである「ポストマンズ・ロック(Postman's Lock)」も、ベルトやシューズに応用。1975年のコレクション「ル・スティル・アングレ(Le Style Anglais)」へのオマージュとなる白のブロデリー・アングレーズや、1970年代のヘリテージ・チェックをもとにしたタータンも登場した。
ユースカルチャーを反映 スウェットシャツの復刻
1990年代のマルベリーのスウェットシャツの復刻も印象的だった。それはケインが地元で目にした"フットボール・カジュアルズ”(サッカーファンの労働者階級の若者たちがブランド物のスポーツウェアを着こなしたサブカルチャー)の記憶だ。当時の彼らに愛用されたマルベリーは、ケインにとっても身近な英国カルチャーの一部になっているという。

Image by: Mulberry

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マルベリーとケイン、新たな旅の始まり
コレクションで描いたのは、「クールでモダンで、前に進んでいく女性。でも同時にカントリーもシティもタウンも持っている」人物像。スマートとカジュアルを行き来する、ブランドを声高に主張しない“見えないロゴ”のようなスタイルを目指したという。

Image by: Mulberry
ショー後には、ランウェイへの復帰について「本当にいい気分」と笑顔を見せ、「世界でも最高のデザインを送り出してきたロンドン。またその一部になれることをとても誇りに思う」と語った。
新たなヴィジョンを見せた新生マルベリー。ファーストコレクションでは、ケインの強みを感じる世界観が見え始めたが、バッグを主力とするブランドとして、次なるアイコンを生み出せるかどうかも問われる。ケインとマルベリーの再挑戦は、まだ始まったばかりだ。
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