受け継いだコードを更新、“らしさ”を現在形へ──NYファッションウィーク ハイライト
2027年春夏コレクション
文・菅 礼子

Image by: ©Launchmetrics Spotlight, KHAITE

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ニューヨークファッションウィークは9月10日から15日までの6日間にわたって開催され、約70のブランドがショーやプレゼンテーションを披露した。
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公式開幕に先駆けて、「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」や「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」、「コーチ(COACH)」といったベテラン勢がショーを開催。公式スケジュールでは、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」や「ダイアン フォン ファステンバーグ(DIANE von FURSTENBERG)」といったニューヨークを代表するブランドがカムバックした。
一方、現在「CFDA/Vogue Fashion Fund」のファイナリストに選出されている注目の若手「リー(Lii)」や「バッド ビンチ トントン(Bad Binch TongTong)」、ロンドンからニューヨークへ凱旋した「コナー アイヴズ(Conner Ives)」など、フレッシュな才能も存在感を放った。
世代もキャリアも異なるブランドが顔をそろえるなか、今シーズンを通して印象的だったのは、それぞれがこれまで培ってきた“らしさ”を改めて捉え直していることだ。過去のアーカイヴから色や素材、技法、象徴的なアイテムといったブランド固有のコードを掘り起こし、シルエットやスタイリング、ディテールに落とし込みながら、現代の感覚へと更新する。そんな動きが、今季のニューヨークでひとつの大きな潮流として浮かび上がった。
目次
KHAITE
今季はロマンティシズムに振れながらも、強さを感じさせる構築的なシルエットと精緻なクラフトマンシップが、ブランドをさらなる高みへと押し上げた「ケイト(KHAITE)」。ランジェリーのディテールやレース、ラッフルを多用し、モデルのウォーキングに合わせて服が揺れ、さまざまな表情を見せる。花の刺繍やリボン、レース使いがロマンティックなムードを添える一方、コルセットのディテールや部分的なレザー使い、堂々としたキャットウォークが力強さを際立たせた。



Image by: KHAITE
クリエイティブディレクターのキャサリン・ホルスタイン(Catherine Holstein)が描くのは、ただ甘いだけの女性像ではない。芯の強さがあるからこそ、フェミニンな装いも臆することなく楽しむ、自信に満ちた女性だ。日本での本格展開も始まり、今後さらに存在感を広げていきそうだ。
Calvin Klein Collection
今シーズンもヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)は、「カルバン・クライン コレクション(Calvin Klein Collection)」の根幹を成すアメリカン・ミニマリズムに立ち返り、不要なものを削ぎ落とした先にある美学を追求した。そこに立ち現れるのは、服をまとう女性の内面だ。装飾を極限まで排し、身体と服の関係性を探ることで、他者にどう見られるかではなく、自分自身がどうありたいかという欲望や自己表現を浮かび上がらせた。



Courtesy of Calvin Klein Collection
ランウェイには、リーンなテーラリングやドレスが並んだ。たっぷりとドレープを取ったスクープネックのドレスは、ミニマルだからこそ身体の動きを際立たせる。素材や色で変化をつけながらも、全体には凛とした緊張感が漂い、ブランドを象徴するデニムもクリーンに仕上げられた。
TOMMY HILFIGER
「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」が今季の舞台に選んだのは、ニューヨークを象徴する高級ホテル「ザ・プラザ」。かつて家族とペントハウスに暮らした思い出の地に、ゲストを招いた。



©Launchmetrics Spotlight
コレクションを貫いたのは、ブランドの屋台骨ともいえる王道のプレッピースタイル。アーカイヴへの敬意を残しながら、ブランドコードを現代的に更新した。ファーストルックでトップモデルのジジ・ハディッド(Gigi Hadid)がまとったルーズなチノパンをはじめ、ラガーシャツやポロシャツはオーバーサイズに再構築。柄同士の組み合わせやカラーブロッキングで遊びを加え、着る人の個性を引き出した。象徴的なロゴやフラッグも、光沢のある軽やかな素材に落とし込み、ブランドのDNAを今のムードへとつなげている。
Heirlome
メキシコ出身のステファニー・スーバービルが手掛ける「エアルーム(Heirlome)」は、ラテンアメリカの職人技とニューヨークの洗練を融合するブランド。2025年には「CFDA/Vogue Fashion Fund」のランナーアップ(準優勝)に選出され、今季、ブランド初のランウェイショーを開催した。今季はメキシコ・オアハカに受け継がれる職人技と、その継承にフォーカス。2023年の旅をきっかけに交流を深めたヒメネス一家との協業を軸に、父から娘へと受け継がれるクラフトを通して、伝統を次世代へとつなぐブランドの姿勢を示した。



©Launchmetrics Spotlight
コレクションは、テーラードや光沢とハリのある素材を用いた端正なスタイルをベースに、ヒメネス親子によるプリントや、タッセル、フリンジ、ニット、木彫りといった豊かな手仕事を重ねた。クリーンなシルエットと装飾性の高いクラフトを掛け合わせることで、ブランドが持つミニマルとマキシマルの二面性を浮かび上がらせた。
Bad Binch TongTong
中国出身のデザイナー、テレンス・ジョウが手掛ける「バッド ビンチ トントン(Bad Binch TongTong)」も、個性の際立つデザインで注目を集めた。今季は会場となったバルーン・ミュージアムとのクリエイティブパートナーシップのもと、“光るクチュール”を発表。ファッションだけでなく、アート、光、空間を融合した没入型のランウェイで、ブランドの世界観を表現した。



©Launchmetrics Spotlight
コレクションの出発点となったのは「変容」。梱包や保護に使われるラッピングフォームなど意外性のある素材を用い、伝統的なクチュールのシルエットを再解釈した。近未来的なフォルムや素材に光を取り込み、独自のファッションへと昇華。フレッシュな世界観で注目を集める一方、パフォーマンス性の高い服を細部まで見ると、造形や仕立ての完成度の高さも印象に残った。
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