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観客が激しく絡み合う!? グレン・マーティンス集大成の「ディーゼル」ラストショー

2027年春夏コレクション

大杉真心

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 「ディーゼル(DIESEL)」は9月22日、クリエイティブディレクターのグレン・マーティンス(Glenn Martens)が手掛ける最後のコレクションとなる2027年春夏コレクションをミラノで発表した。ショー会場の広大な空間に鉄骨を組み、特設のクラブスペースを出現させた。客席にはゲストを装った200人の演者が紛れ込み、ショーの最中に演者同士が抱き合ってキスを交わしたりセクシーなダンスを踊ったり、激しくヘッドバンギングしたりと、最後まで驚きの演出が続いた。

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集大成の“パーティー”

 約6年間にわたりディーゼルのクリエイティブを率いてきたマーティンスが、集大成となるコレクションのキーワードに挙げたのは昨シーズンに引き続き、「パーティー」だった。「ディーゼルは、いつだってパーティーが最優先。そこにあるのは、インクルーシビティ、自己表現、喜び、そして誰もが同じように体験を楽しめるという民主性。このコレクションはディーゼルそのもの。破壊的で、セクシーで、流動的で、楽しい。僕たちはみんな、この瞬間を一緒に生きている。もう一度、一緒にこの旅を楽しもう」と語る。

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200人の“サクラ”パフォーマー

 ショーでは、マルセイユを拠点とするアーティスト・コレクティブ「(LA)HORDE」のパフォーマー200人が観客に紛れ込んでいた。開始直後は一般の来場者と見分けがつかず、ほかのゲストと同じようにショーを鑑賞。しかし、ドナ・サマー(Donna Summer)の楽曲「Love to Love You Baby」が流れ始めると、官能的で挑発的なパフォーマンスを開始し、ショーが進むにつれてその絡みは激しさを増していった。

キーモチーフはオーキッド

 今季のキーモチーフとなったのは、オーキッド(蘭)。最新フレグランス「Only Desire」を象徴する花でもあり、コレクション全体に散りばめられている。レザージャケットとブレザー、トラックスーツの襟とシャツの袖口など、異なるアイテムを重ね合わせ、その境界にはオーキッドをかたどったカットアウトを施した。ポロドレスやニット、パンツ、Tシャツも大胆に切り込み、肌を露出。花びらが生地を侵食したような表現や、極端なローウエストのシルエットで官能性を強調した。

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得意の“トロンプルイユ”

 マーティンスの得意とするトロンプルイユ(だまし絵)も健在。ツイードコートや厚手のウインタージャケットを軽やかなシャツにプリントし、春夏のワードローブとして提案。過去のコレクションにも登場したアウターも、プリントで再現。デニムのボンバージャケットには、ベースボールジャケットやバイカージャケットに見えるフォイルプリントを施し、あえてひび割れさせている。

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 たくし上げたTシャツを縫い合わせてブラトップやバンドゥ、ドレスへと再構築し、“激しい夜を過ごした後、大急ぎで服を着た”ようなカオスを表現した。

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最初と最後のルックをまとったエラ・スナイダー

 ラストルックを飾ったのは、マーティンスのディーゼルでのデビューコレクションでファーストルックを務めたアーティストで、トランスジェンダー人権活動家のエラ・スナイダー(Ella Snyder)。ヒップが大胆にのぞくマイクロなデニムショーツで登場し、始まりと終わりをつなげてみせた。約6年間の物語を結ぶ、象徴的なフィナーレとなった。

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“ファッションの民主化”を掲げた約6年間の功績

 マーティンスは約6年間にわたり、ディーゼルのスローガン「For Successful Living」を独自に解釈しながら、“ファッションの民主化”を掲げてきた。振り返れば、その姿勢は一貫している。ファッションを一部の人だけのものにせず、多くの人が参加できる体験へと広げてきた。

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 ショーやプレゼンテーションでも、既成概念を覆すアイデアで見る者を驚かせ続けた。一般客や学生を含む約5000人を招いた大規模ショーをはじめ、コンドームの山をランウェイに出現させてセーフセックスを啓蒙し、デニムの残布の山を舞台にアップサイクルを打ち出したことも。一般客も招いたレイヴの開催や、3日間にわたるショーの舞台裏の生中継も実施。ミラノの街中に卵型カプセルを設置し、街全体をランウェイへと変えたこともあった。

 主軸であるデニムは多彩な加工でユニークに表現しながら、ブランドが本来持つセクシーでやんちゃな、遊び心のある世界観を発信。オーガニックコットンやリサイクル繊維などの採用を進め、サステナビリティの取り組みも推進したこともまた、彼がディーゼルに残した大きな功績の一つだろう。

名残惜しい幕引きとマルジェラ専念への期待

 デニムや大胆な再構築を得意とするマーティンスと、ディーゼルの相性は抜群だっただけに、この続きがもう見られないのは名残惜しさもある。ただ、マーティンスは現在「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」のクリエイティブディレクターも務めており、2つのブランドを両立させる負担は相当なものだったはずだ。

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 メゾン マルジェラは、ウィメンズとメンズ、オートクチュール(アーティザナルコレクション)までを抱えるメゾンであり、二足のわらじで手掛けるのは難しいポジション。現在、就任から1年が経つが、メゾン マルジェラで独自のスタイルを確立できたとはまだ言い難い。彼のキャリアを考えれば、今こそメゾン マルジェラに専念すべき重要な局面といえるだろう。破壊的で、セクシーで、自由で、楽しい。最後まで“マーティンスのディーゼル”を貫いたラストショーだった。

DIESEL 2027年春夏コレクション

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DIESEL 2027年春夏コレクション

2027 SPRING SUMMERファッションショー

最終更新日:

文・大杉真心

Mami Osugi

ファッションジャーナリスト

文化女子大学(現文化学園大学)でファッションジャーナリズムを専攻、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学ぶ。「WWD JAPAN」記者として海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当。2019年、フェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家を取材。2021年8月に独立後、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。2022年から文化学園大学と文化服装学院の非常勤講師を務める。

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