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アクネ ストゥディオズのジョニー・ヨハンソンが語る、30年の軌跡と日本への想い

クリエイティブ・ディレクターにインタビュー

「アクネ ストゥディオズ」クリエイティブ・ディレクターのジョニー・ヨハンソン

Image by: Acne Studios

「アクネ ストゥディオズ」クリエイティブ・ディレクターのジョニー・ヨハンソン

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アクネ ストゥディオズのジョニー・ヨハンソンが語る、30年の軌跡と日本への想い

クリエイティブ・ディレクターにインタビュー

「アクネ ストゥディオズ」クリエイティブ・ディレクターのジョニー・ヨハンソン

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 「アクネ ストゥディオズ(Acne Studios)」が7月11日、東京・青山にフラッグシップストア「アクネ ストゥディオズ アオヤマ(Acne Studios Aoyama)」を移転・拡張オープンした。表参道に面した一等地に構える同店は、建築スタジオのハレロード(Halleroed)との協業によって生まれた世界最大の旗艦店となる。

ブランドの母国スウェーデン産のピンクの花崗岩(かこうがん)のファサード、自然光が差し込む開放的なガラス張り、壁に取り入れられた日本の漆喰が、温かさと静寂の独特な趣を醸し出している。

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 このオープンに合わせ、創業者の一人でクリエイティブ・ディレクターを務めるジョニー・ヨハンソン(Jonny Johansson)が来日した。来年のブランド設立30周年を前に、新店舗に込めた想いや初披露となった陶芸家の桑田卓郎とのコラボレーション、今後の展望などについて語ってもらった。

理想の“開かれた空間”

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Image by: Acne Studios

──青山での移転拡大オープンおめでとうございます。なぜ、このタイミングだったのでしょうか?

 長い間、東京にもっと大きなストアを持つことを夢見ていました。前の青山店は約13年営業してきましたが、もっと早いタイミングで移転するつもりだったんです。ずっと理想的な場所を探していて、今回ついにパーフェクトなロケーションに出合えました。

──新店舗のデザインコンセプトについて教えてください。

 内部が見えるガレージのような構造をイメージしました。訪れる人が自然に入り、空間の中を流れるように動けるように、オープンでレイヤー構造の空間に仕上げています。パリやストックホルムのオフィスはレストランを併設していて、人々が集い、交流し、コラボレーションできる場所。青山店も、そんな“開かれた空間”を目指しました。

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──店内の家具や照明も印象的です。

 長年一緒に店舗を手掛けてきたチームと作り上げました。マックス・ラム(Max Lamb)によるソファなどの家具は、"手の跡"のような存在感があり、空間に生命感を与えてくれます。照明はフランス人のブノワ・ラロズ(Benoît Lalloz)によるもの。そして、建築スタジオ ハレロード代表の建築家クリスチャン・ハレロード(Christian Halleröd)も30年来の友人です。

 たくさんの店舗を作ってきた中で、どの店も異なるユニークな個性を持たせることを大切にしています。どこへ行っても変わらないファストフードチェーンのように同じ内装にはしたくないからね(笑)。

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挑戦と包容を体現するピンク

Image by: Acne Studios

──ブランドの象徴ともいえるピンクにはどのようなこだわりがありますか?

 ピンクは誰もが意見を持つ色だと思います。私は、若々しく、挑発的で、そしてある種セクシーな色だと感じています。ピンクは挑戦的でありながら包容力もある色。構築的で柔らかいという、私たちのブランドの二面性を体現するのにぴったり。ブランドカラーに赤や黒、白を選ばず、本当によかったと感じています。

 この店舗に使用しているスウェーデン産の花崗岩は、マーブルのような権威ある石ではなく、スウェーデンでは一般的な素材。このニュートラルなピンクに、家具の色も合わせています。

──5月にオープンした渋谷パルコ店では、異なる青みがかったピンクのソファーが置かれていました。ブランドで多彩なピンクを使い分けているのですね。

 そうなんです。パントン(色見本)に載っているピンクは全て使い尽くしました(笑)。常にアートを見て、新しいピンクを探しています。

桑田卓郎との夢のコラボレーション

陶芸家 桑田卓郎によるオブジェ

Image by: Acne Studios

──この店舗のオープニングでは、陶芸家の桑田卓郎さんのアートが並べられ、コラボアイテムもリリースされましたね。

 彼の作品に最初に見たのは随分前ですが、ずっと興味を持っていました。作品の色彩が特に印象的で、実際に彼の作品のパレットを参考にしてコレクションに取り入れたこともあります。今回、正式にコラボできたことはとても嬉しかったですね。

陶芸家の桑田卓郎とのコラボレーションアイテム

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──日本のファッションや美意識についてどう感じていますか?

 まず、洋服を大切に扱う文化が素晴らしい。ヴィンテージショップに行くと、丁寧に手入れされた服が並んでいることに感動しました。また、日本のクラフトマンシップにも敬意を抱いています。歴史的な意味ではフランスのファッションも好きですが、前衛的で現代的な表現においては、いつも日本の方が先を行っていると感じます。

──ジョニーさんにとって、日本はどのような場所ですか?

 初めて訪れたのは19歳の頃で、これまでに25~30回は訪れています。日本のファッションに対して深い敬意を持っているので、自分のブランドがここで受け入れられていることが、私にとって人生の誇りです。だからこそ、いつも東京での表現には真摯に向き合いたいと思っています。

30年間で印象深い仕事

──アクネ ストゥディオズは来年30周年を迎えますね。

 驚きですよ。今までずっと“若手ブランド(Young brand)”と呼ばれていましたから、やっと年長ブランドになってきた感覚です。

──これまでで特に印象深かった出来事は?

 一つは、20年前、「ヴォーグ フランス(Vogue France)」の編集長だったカリーヌ・ロワトフェルド(Carine Roitfeld)からインタビューを受けたこと。私が憧れていたトム・フォード(Tom Ford)の仕事でスタイリングを手掛けていた彼女からの取材は、とても緊張しましたが、私にとって特別な瞬間でした。もう一つは、アルベール・エルバス(Alber Elbaz)から「ランバン(LANVIN)」とのコラボを持ちかけられたこと。当時、ランバンは絶大な人気を誇っていて、まるで神に選ばれたような気分でした。彼とのニューヨークでのプレゼンテーションも忘れられません。暗い倉庫のような空間で、小さな勉強机を前に、スポットライトの下でエルバスが「もしあなたの夫がヨットで別の女性といたら?」と語りかけ、モデルを登場させるんです(笑)。本当に大切な思い出です。

 他にも、パリのパレ・ロワイヤルにパリ初出店となる店舗を見つけた時のことも忘れられないですね。当時CEOで現在は執行会長のミカエル・シラー(Mikael Schiller)と激しく議論したんです。とても高く小さい物件だったので、彼は反対したのですが、私は気に入って。結局、彼が折れてくれて、出店が実現しました。今では、「アクネ ペーパー(Acne Paper)」の寄稿者の作品を展示するギャラリーになっています。アートを売るのではなく、見せるための場所となりました。特別な思い入れがあります。

原点・デニムへの回帰

「アクネ ストゥディオズ」2025-26年秋冬コレクション

Image by: Acne Studios

──ブランドはデニムからスタートしましたが、その原点でもあるデニムが再び今、注目を集めていますね。

 ファッションを始めるなら、コカ・コーラのように、そのブランドのオリジナルとなるアイテムの開発から始めるべきだと考えました。どんな世代でも誰もがジーンズを1本は持っていますよね。私は常に、デニムはファッションにとって完璧なキャンバスだと思っています。デニムと何かを対比させると、常に興味深いものが生まれます。

 ある時期は、デニムのイメージが強すぎることに抵抗して距離を置いていたこともありましたが、今は誇りを持って、クラシックなデニムを再構築することに集中しています。

──アイコニックなバッグも注目されていますね。

 バッグは、一生をかけて学ぶべきクラフトだと考えています。制作を始めて20年ほど経ちますが、今も勉強している過程だと感じます。実用性と装飾性を兼ね備えたものでなければいけないですし、そこにある種の彫刻性も求めています。実際、イタリアの職人たちに支えられていて、多くのアイデアに「ノー」と返されますが、時に「イエス」と言ってくれる。それが面白いんです。

Image by: Acne Studios

Image by: Acne Studios

日常こそがインスピレーション

「アクネ ストゥディオズ」2025-26年秋冬コレクション

Image by: Acne Studios

──デザインのインスピレーションはどのように得ていますか?

 常に自分の生活の中にあります。映画や本、旅、家族との時間など、触れるものすべてがインスピレーションになりえる。たとえば、ある日、友人にパリのガリエラ美術館に招待してもらい、マリー・アントワネットのドレスやナポレオンのジャケットなどを見ました。そして「どうすれば自分のデザインを歴史的な衣服にできるのか?」と考えて。アーティストの友人に頼んで、大きなスキャナーで洋服を読み込んで、それをパターンに活かすアイデアに繋がりました。

 あるときは、子どもたちが「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」に夢中になっていて、それがインスピレーション源になった時期も(笑)。そうやって、自分の生活の中から生まれてくるものが、私にとってリアルなデザインにつながっているんです。

──なぜパリ・ファッションウィークに参加し続けているのですか?

 誰もスウェーデンには来てくれないからです(笑)。もちろん、それは冗談ですが、パリは世界最高峰の舞台であり、最高の人々が集まる場所。プレッシャーもありますが、挑戦し続ける意味があります。

「アクネ ストゥディオズ」2025-26年秋冬コレクション

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──パリにもオフィスを構え、ブランドは世界的に成長し続けていますね。 

 ゆっくり、でも確実に。この仕事は、自分自身が退屈しないように選んだ道です。お金があるときも、ないときもあるけれど、良い人生を送ることがいちばん大事。私はこの仕事が大好きなんです。だから、30年続けてこられたんでしょうね。

“自分らしさを貫く勇気”

──今後の展望や、これから達成したい目標について教えてください。未開拓の分野への進出は考えていますか?

 未開拓の分野というよりは、個人的にはもっと、デニムを深掘りしていきたいと思っています。原点にして、私たちのアイデンティティですから。

──最後に、これからデザイナーを目指す人たちへのアドバイスをお願いします。

 本を1冊書けるくらいありますよ(笑)。でも一つ非常に重要なことは、人にどう思われるかを恐れず、自分らしさを貫くこと。二つ目は、ファッションはデザインだけではないと認識すること。ビジネスは、一人では成立しません。私もミカエルがいなければ今の自分はいませんでした。もし創作だけをしたいのならば、アーティストになるべき。ファッションはビジネスであり、産業でもあるのです。そして、誰の意見にも左右されず、自分の美意識を信じること。時には間違えてもいい。そこからしか、本当の創造は生まれないと思います。

ジョニー・ヨハンソン

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ジョニー・ヨハンソン /アクネ ストゥディオズ クリエイティブ・ディレクター
1996年、スウェーデン・ストックホルムにて3人の友人とともにアクネ(Acne)を設立。当初は広告やグラフィックデザインを手がけるクリエイティブ集団として活動していたが、ジーンズを100本制作し、アーティストやクリエイター、友人たちに配布したことが大きな反響を呼び、ファッション部門を立ち上げる契機に。2006年にはファッション部門を独立させ、現在のアクネ ストゥディオズとなる。

ファッションジャーナリスト

大杉真心

Mami Osugi

文化女子大学(現文化学園大学)でファッションジャーナリズムを専攻、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学ぶ。「WWD JAPAN」記者として海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当。2019年、フェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家を取材。2021年8月に独立後、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。2022年4月より文化学園大学非常勤講師。

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