Fashion インタビュー・対談

【同世代対談】ホワイトマウンテニアリング相澤陽介×ファセッタズム落合宏理 〜デザイナー達のリアル〜

(左から)FACETASM 落合宏理、White Mountaineering 相澤陽介
(左から)FACETASM 落合宏理、White Mountaineering 相澤陽介
Image by: Fashionsnap.com

 共に1977年に生まれ、全く異なる道を歩んでいる2人のファッションデザイナー、ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)相澤陽介とファセッタズム(FACETASM)落合宏理。ブランドを立ち上げてからそれぞれ約10年、従来のモードとは異なる文脈で東京のファッションシーンを先導してきたトップランナーだ。最新の2016年春夏では、ホワイトマウンテニアリングがパリで、ファセッタズムが初の海外コレクションとしてミラノで新作を発表したばかり。2人はそれぞれ、アウェイの地で何を考え、どう戦い、新たな道をどうやって切り開こうとしているのか。作風や考え方は対極とも言えるがお互いを良く知る同世代、リアルな言葉で語り合ってもらった。

■"谷間の世代" デザイナーの今

―同い年ですが、対談は初めてだそうですね。お互いの存在を知ったのはいつですか?

ファセッタズム 落合宏理(以下、落合):僕は東京で初期のホワイトマウンテニアリングのショーを見て、自分が好きな感じというか、やりたいことをやっていて、すごく悔しかったのを覚えてる。

ホワイトマウンテニアリング 相澤陽介(以下、相澤):僕は雑誌とかで見ていて「あ、同い年なんだ」って知ったかな。

落合:それで会った時に「君が落合くんか」と言われて、なんだか大御所感があってタメとは思えなかった(笑)。

相澤:僕は初対面だとバリア張っちゃうから最初は固かったかもね。自分たちの世代ってあまり自己主張をすることがない"谷間の世代"だと思っているんだけど、落合くんは周りに伝染させる何かを感じてたから、ちょっと違うなと思ってた。

―"谷間の世代"というのは、アンダーカバーに代表される先輩デザイナーの次の世代という意味で?

相澤:僕が考えているのは、80年代〜90年代に活躍したデザイナーが主張してきたことに対して、今考えるムードをどう表現するかが肝になる世代なのかなということ。だから、オリジナリティーを全面に出して主張するのではなくて、必然的にミックスする感覚を持っているんじゃないかと思う。

落合:そうだね。あまりにも純粋で強い先輩方のデザインを見てきて、裏原とかファッションが熱い時代があって、その後にものづくりを始めた世代として、どこか共通するものは感じるな。尖った自己主張だけじゃなく、他に大切なものがあるんじゃないかなと考えたりする。

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■東京的なデザイナーが海外から出てきている

―特に東京発のメンズブランドは、いわゆる紳士服のベースとなるテーラードや、欧州のモードの文脈とも異なります。

相澤:違いますね。だからある意味、見てきたものをどう再構築するかっていうのが、もしかしたら僕らのオリジナリティーなのかもしれない。固定概念を取っ払って、面白いと思うものを純粋にアウトプットしている代表選手が、落合くんなんじゃないかな。海外のブランドを見てても、そういうのが面白い。

落合:例えば高校生の時にパタゴニアが流行って、一方でマルジェラが気になったり、両極で面白いものが出てきていた。だからアウトドアもモードも垣根がなくて、僕はただかっこいいものを作ろうと思った。「東京っぽさ」が何かというとそういう所なのかもしれないと思っていて。でも最近、ヨーロッパとか海外のデザイナーの方が共感する服作ってたりするんだよね。僕らはわりと感覚でやってきた部分もあるけど、東京の今の若手の方が哲学的だったり。

相澤:それわかる。パリのピガール(PIGALLE)オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)、NYのパブリックスクール(PUBLIC SCHOOL)あたりが出てきた時、新しい流れを感じた。語弊があるかもしれないけど、彼らは特に技術的なスペシャリティがあるわけじゃない。でも、ストリートから発祥した超感覚的なブランドの色を持ってるんだよね。それってこれまで東京のブランドが得意としてきたはずなんだけど、いま世界でそれをやってるのが意外と日本人じゃないという。彼らはアウトプットの方法論というか展開の仕方、自分の考えをどう世の中にフィットさせるか、といったことに長けているように思う。

―同じ世代でも、2人のクリエイションの方向性は全く違いますね。ホワイトマウンテニアリングは理にかなった実用性の先にスタイルを作っていて、ファセッタズムは心に響くエモーショナルな服を作っていますね。

相澤:インタビューを読んだり、たまに食事したりするときに言ってるけど、本当にそう思ってやってる?

落合:本当だよ(笑)自分でも酔えるくらいのもの作ろうと思ってるから。アプローチの違いとか、ものづくりで他から影響されることって、あまりないよね。

相澤:僕は、ファッションでない部分から影響されることの方が大きいと思う。ただ今回、アルマーニの支援プログラムでファセッタズムが選ばれた時は、素直にすごいと思った。僕自身、モンクレールや自分の展示会でミラノのメンズシーンに触れてきたから、クリエイションによって見えてくる世界が違ってくるんだな、というのを感じて。

facetasm_milan_01.jpgファセッタズムは2015年、ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)がサポートする支援プロジェクトに、日本発のブランドとして初めて選ばれ、ミラノでショーを開催した>>詳細レポート

■一歩外に出れば、誰にも知られていない

―今年でホワイトマウンテニアリングは10年目、ファセッタズムは8年目。10年続くデザイナーズブランドは多くないと思いますが、クリエイションとビジネスについてはどう考えてやってきたんですか?

相澤:その2つを両立させるって、やっぱりコム デ ギャルソンの影響が大きいんだと思うけど、実際に自分だとあまり大きなことは考えてないな。

落合:ブランドとしてはインディペンデントを打ち出すけど、経営として打ち出さなくてもいいよね。

相澤:そうだね。ホワイトはオーナーがいるから、当然売上が伸びなければ事業はなくなるし、可能性があれば続けられるという環境。それぞれだと思うけど、自分の会社でデザイナーやって自己表現をしていくことだけが方法論じゃないのは確か。

―海外も含めて、今の若手デザイナーの動きを意識することは?

相澤:東京という中枠組みでやってるといつまでも若手と言われたりするけど、海外だと言われたことはないし、僕らは年齢的にも40手前だから中堅ですよね。同世代のウミット・ベナンなんか辞任したけど若くしてトラサルディ(TRUSSARDI)のデザイナーになったわけだし、J.W.アンダーソンなんて、20代でLVMHグループのロエベ(LOEWE)に抜擢でしょ?

落合:ああいうのが本物の若手のスターで、新時代を感じるよね。東京にいるとよく「本当に注目されてるよ」って言って頂くんだけど、あれ調子に乗っちゃうから良くないと思う。これが海外になると誰にも知られてなくて、相手にされないものだから。

■パリとミラノ、それぞれのアウェイ戦

―東京でコレクションが注目されたり活躍しているどんなデザイナーも、一歩外に出ればアウェイの戦いですね。

相澤:海外に関して言えば、常にアンテナを張ることは大事だと思うけど、先に先にって走っちゃうよりも、目の前を見て淡々と歩いていく方が確実に前に進めるんじゃないかな。僕がピッティに招待されたり、落合くんがアルマーニに選ばれたのもそう。モンクレール(Moncler)バブアー(Barbour)みたいに自分のブランドのことをしっかり見てくれていて「一緒にやりたい」と言ってもらったりすることもあるしね。アジア人が海外に出ていくということは、着実に進みながら機会を増やして、自分が勝負したい場所で情報量を増やしていくことに尽きると思う。

MONCLER-W-2013-05-20130524_064-.jpg伊モンクレールが相澤陽介が手がけるWhite Mountaineeringとコラボレーションし全世界で販売した限定コレクション「MONCLER W」

落合:まず東京でショーをやってきたことで、僕らのようなブランドの見られ方が一気に変わったとは思う。でも今日、下北沢を歩いていてもうちの服を着ている人に会えなかったから、国内もまだまだ。

相澤:僕は過去に、デザイナーとしての自己主張が強すぎたり、ショーの話題性に注力しすぎた時期があった。すごく良い物を作れば絶対に伝わるんだ、みたいな。そうするとだんだん、こだわってもバイヤーやエンドユーザーは見ていないというミスマッチが生まれたり。僕らはテキスタイルが持ち味だからって柄物ばっかり提案しても、世の中はそんなに柄物を着てる人いないとか。今は、自分がどんな物を作るべきかを懸命に考えていて、若い世代のムーブメントなんかがどう広がっていくのかにも興味がある。

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