小島紗希(unevenディレクター)
小島紗希(unevenディレクター)
Image by: FASHIONSNAP

Beautyインタビュー・対談

「楽しみの先にある、ファッションとビューティの架け橋」 コスメブランド「アニヴェン」ディレクターが考える両方の楽しみ方

 最近一気に目にするようになったベージュマスカラ。トレンドのきっかけを作ったのは、ヘアメイクを手掛け、ファッションPRも行う小島紗希がディレクターを務めるコスメブランド「アニヴェン(uneven)」。2020年のデビュー後、ファッションとビューティの両方の感覚を取り入れたアイテムで、ファッショニスタ、美容雑誌からも注目される存在に。「楽しみを増やす」、その先に「ファッションとビューティの架け橋になりたい」と話す小島ディレクターに、アイテムのインスピレーション源や独自の世界観について聞いた。

小島紗希(unevenディレクター) Image by FASHIONSNAP
小島紗希(unevenディレクター)
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■小島紗希:1991年生まれ。都内ヘアサロンで5年間PRとして経験を積みながら、雑誌やWEB媒体の撮影でメイクを担当。その経験を活かし、2019年3月にフリーランスのPR/ヘアメイクとして独立。現在はファッションブランドのPRを担当しながら、カタログや雑誌、WEB撮影Hairmakeとしても活躍する。

ーまずは小島さんのバックグラウンドを教えてください。

 キャリアの最初はヘアサロンに受付として入社しました。入社して2年目のタイミングで、サロンの方針としてブランディングや広報を強化していくということになり、PRを任せていただくことになりました。当初は私自身もノウハウがなく、肩書きだけの状態でした。問い合わせの窓口になったり、他のサロンとどうやって差別化するかを考えたり、発信の方法を考えたりして。振り返ってみると、当時の仕事が世界観を伝えたり、ブランディングを突き詰めたりする楽しさに気がついたきっかけでしたね。

ーヘアメイクがスタートではないんですね。

 撮影の仕事が多いサロンだったのですが、メイクを担当するチャンスをいただけたこともあり、ヘアメイクも経験させてもらいました。どんなヴィジュアルを作るかのゴールに合わせてヘア担当のスタッフとイメージを共有し、メイクするのは純粋に楽しかったですね。

ー独立する時は、どんなヴィジョンを持っていましたか?

 2019年の春に独立しましたが、PRの会社に入るのか、メイクアップアーティストになるのかなど、先々のことを何も決めていなかったんです。今思うと、よく独立したなと...。まずはやれることは何でもすると意気込んでいたので、初めはお手伝いベースで、サロン時代に知り合ったファッション業界の方々からお仕事をいただきました。

ー具体的にはどんな仕事をしたんでしょうか。

 展示会のアテンドやフィッティングモデルなどです。普段からメンズの服を着ていたこともあって、ユニセックスの提案をしているブランドの展示会で、フィッティングモデルをしながら商品説明をすることもありました。

ービューティ業界との関わりはどうですか?

 ヘアメイクのお仕事もサロン時代のつながりから始まり、今はファッションの仕事と半々です。ファッションブランドやショップのヴィジュアルなどファッション系のヘアメイクのお話が多いので、美容雑誌のメイクページのような”ビューティど真ん中”ではないかもしれません。アニヴェンを始めてから美容雑誌でお取り上げいただくことが増えて、つながりも広がりましたね。

ーファッションとビューティの両方に携わっているんですね。独立からおよそ1年でアニヴェンを立ち上げたわけですが、きっかけは?

 サロン時代のつながりでお話をいただきました。最初はアパレルから派生するコスメブランドのディレクションとして依頼をいただいていたのですが、打ち合わせを重ねる中で、新しくコスメブランドとして確立させた方が良いのではないかと意見が一致し、アニヴェンというブランドが誕生しました。

ーブランドコンセプトでは、コンプレックスを隠すのではなく、自分だけのチャームポイントとして楽しむというメッセージを掲げています。小島さん自身の経験が反映されているんでしょうか。

目の下のクマ、そばかす、血色のない唇。コンプレックスと捉えて化粧で隠そうとする部分。
そこにその人の可愛さがあり、 他の誰にも真似できない絶妙なバランスがあると感じ始めたことからこのブランドが生まれた。
隠すのではなくポイントに変えて、わたしにしかない、わたしにしかわからないバランスを楽しみたい。

ーブランドコンセプトより

 サロン時代に撮影でメイクをしていた時から、モデルさんのクマやシミを完全に隠すんじゃなくてそのくすみ感も活かせないかと考えていて。普通だったらカバーして、隙のない肌を作ると思いますが、私自身「他でやっていない見せ方」が好きだし、モデルさんそれぞれのムードを大切にしたくて、そういうメイクに挑戦していたんです。

 アニヴェンを始めるときは、自然とその経験を思い出して、コンセプトが出来上がりました。メイクって相手がいて、その人に対してよく思われたいというのが大きいじゃないですか。それはそれとして、他の楽しみ方があって良いわけで。メイクをすることで、その人自身が一番ワクワクできるのが素敵だなと。それから、カバーするタイプのアイテムで良い商品は既にたくさんあるので。私ができる提案は何だろうと。それで今のアニヴェンが生まれました。

ーなるほど。デビューコレクションで人気だったベージュマスカラをはじめ、ヴィヴィッドなカラーマスカラなど、ファッション性が高いカラーバリエーションも独特ですよね。

 ありがたいことに、アニヴェンをファッショナブルと言っていただくことは多くて。私自身、もちろんファッションが好きなので嬉しいです。ただ、アニヴェンでは単純に個性的な色を出しているわけではなくて。例えば、目を印象的に見せる王道の手法ではマスカラやアイライナーで強調しますが、ヘアメイクの仕事で、淡い色で目を囲むことで目の周りに透明感が生まれ、黒目に視線を持っていくバランスも可愛いんじゃないかとやってみたり。その経験を活かして作ったものなんです。

ーヘアメイクのテクニックも活かされているんですね。ファッションの視点を取り入れた部分もありますか?

 意識的にファッションの視点を取り入れているわけではないのではなく、結果的にそうなっていると思います。「お洒落に見られたい」よりも「お洒落が好き」な気持ちの方が大きいので、個性的と言われるカラーラインナップはそこが土台にあるのかなと。あとは、「締め」と「抜け」のバランス感は、ファッションでいうコーディネートの要素と近いと思っていて。ブラックのワントーンのコーディネートに、赤い小物を差し色で取り入れるのと、目元とチークはヌーディなメイクで、赤いリップを塗るのって似ていませんか?

ー実際に、新色を考える時のインスピレーションはどこからでしょうか?

 植物や石、自然の情景から思い浮かぶことも多いんですけど、発売時期にどんなメイクがしたいか、から逆算することもありますし、単純にこんな色のアイテムがあったら面白いなと考えることも。「ブライトグリーン」のマスカラは春先の発売だったので、新芽のまだ若い植物のイメージで、「クルーシャル」というマットなベージュにラメを入れたアイシャドウは夏の砂浜から思い浮かんだり。

ー商品説明でカラーのムードを伝えるテキストがあるのも珍しいと思いました。

曇り空の下にポツンと咲く可憐な花をイメージ。雨の雫があたる様子をシルバーの細かいラメを入れることで表現。マットな質感と寂しい雰囲気にすることで大人も使いやすいカラーに。

ーマルチスティック ソリタリーピンクの説明文より

 メイクアイテムとしては、見た目は少し奇抜なカラーだなと思われがちなので、唐突に発売するのではなくて、ポイント使いのコツや、色に付随するエピソードを書くようにしていて。新緑も海も、生活の中の色と思うと奇抜ではないじゃないですか。色に対して馴染みやイメージを持ってもらうためのテキストですね。それから、一緒に出すアイテム同士の色の組み合わせも書くようにしています。例えば、ブルーのマスカラとサンドベージュのアイシャドウだったら、砂浜と海。メイクする時に「今日は海メイク」とか考えたら楽しいだろうなって。そういう楽しみ方のバリエーションを用意しておくことで、青が好きな人、”海メイク”を楽しみたい人、個性的なメイクをしたい人など、色んな人がそれぞれの思いで楽しめるんじゃないかなと。

ー新作を発売する間隔は大体1〜2ヶ月。デビューから1年でアイテムが充実した印象です。

 まだ1年しか経っていませんが年間で20SKUほど増えていて、これは自分でも驚いてます(笑)。年間の新作数を明確に決めているわけではないのですが、気分が変わる中でビシッとはまるものはテンションが上がりますし、誰かに会いたくなったり、そういうワクワクは大切だと思うんです。なので、色んな気分に取り入れられるよう、ある程度のスパンで発売していて。前買ったものと新しく買ったものを組み合わせて、どんどん楽しみが増えたら嬉しいなと。

ーこれまでポップアップを行ったのは、伊勢丹新宿店本館2階やユナイテッドアローズの「6(ROKU)」、セレクトショップ「リトマス(litmus)」など、ファッショニスタが通うショップばかりです。

 百貨店さんからはお声掛けいただくことが多いのですが、セレクトショップなどは自分から企画書を持って行き、思いを伝えてきました。どのお店も世界観があって、それぞれのファンがいるのが面白いし、私自身も好きなお店です。売上は外せないものではありますが、目的として、お互いのファン層が広がったり、よりワクワクしてもらえるような内容を大事にしています。

ーポップアップでは小島さんも店頭で接客していますよね。

 個人的に服やメイクについて人と話すのが好きなんですよね。店頭で接客する時は、「このマスカラだったらこの服が可愛い」とか「このコーディネートにこの メイクしたら似合う」とか、自然とファッションとメイクを一緒に提案しています。取り扱っている服に合わせてメイクのテイストも変わるのが面白いですし、「私だったらこうしてみる」っていうプラスαの提案をしてみると、ポジティブに挑戦してくださる方が多いのも嬉しくて。ファッションとメイクの距離感をもっと縮めたいと思っていたので、それを実感できるのが一番楽しいです。コラボヴィジュアルを作るのも、ファッション×メイクでお店ごとにムードがあり、お互いの思いを込め撮影日を迎えるのも楽しみの一つなんです。

▼リトマスとのコラボヴィジュアル

▼6とのコラボヴィジュアル

ーファッションとメイクはどちらも「着飾るもの」と大きく捉えると同じでも、業界で見るとシステムやマインドが異なりますよね。

 それは私自身どちらの仕事にも関わってみて、よく考えることですね。均質化したいわけではないですが、もっと垣根を超えて楽しめる可能性は大きいと思っています。「エイジングケア」や「デカ目」を目指すような、「ビューティど真ん中」の王道のブランドがたくさんあるからこそ、私のようなドメスティックなブランドができることはあると思っていて。アパレルのショップでのポップアップも、コラボヴィジュアルも、ファッションとメイク、両方の入り口になるのが理想ですね。

ーアパレル企業がコスメを出すことが増えましたが、反対にアニヴェンでアパレルを出す考えは?

 これまでもこれからもそれは考えていません。色々なファッションによってメイクの提案も広げられるっているのがアニヴェンとファッションの良い関係性だと思うんです。アニヴェンがコスメブランドっていう軸はブラさずに、素敵なお店やブランドさんとお客さんが楽しめる提案をしていきたいです。

ー今後はどんなアイテムが出る予定ですか?

 まだ具体的にお伝えできないのですが、今までよりも「ビューティど真ん中」のアイテムが出ます。ただ、それも技術的な難しいことはさておき、楽しさとか、好きな色みたいなところを起点に手に取ってもらえるように考えていて。既存アイテムの新色も出ますし、またそれはファッションとの組み合わせを楽しんでいただけたら。それから、石や木などを使う作家さんの特別な作品の発売やその関連イベントも計画中です。

ーアニヴェンのヴィジュアルには自然界のモチーフがよく登場しますね。ブランドの世界観を演出するようなイベントになるんでしょうか。

 ECメインのブランドなので、なかなかヴィジュアルでしか表現できていなかったのですが、メイクのインスピレーションや、抽象的ですが私が感覚的に持っているビューティのイメージなんかを体感できるような空間を作る予定です。これまでもインスピレーションや色のイメージについて聞いていただくことが多く、私の頭の中をどうやって伝えようと以前から考えていました。アニヴェンでイベントをするなら他でやっていないことをしたかったので、ビューティの枠を超えて独特な雰囲気になるんじゃないかなと私も楽しみです。

ー小島さんご自身の今後の目標はありますか?

 アニヴェンもヘアメイクも、ファッションPRも、ありがたいことに今は自分が楽しくて好きなことを存分にやらせていただける環境が整っていて。新しく何かに挑戦するよりも、今自分がやっていることに全力で取り組みたいですね。「ファッションとビューティの架け橋になりたい」と言葉で表すと大きく見えるかもしれませんが、一番は「楽しみを増やす」ことなんです。私自身どちらも好きなので、その気持ちを起点に、両方の楽しさを発信できるようなアイテムを考えたり、実際にブランドのムードを体感していただけるようなイベントをしていきたいです。

聞き手:平原麻菜実

おまけ:【イラスト付き】小島ディレクターが今楽しみたいメイク×ファッションは?

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