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アーティスト・チョーヒカル エイリアンな私たちを繋げる世界【連載:BODY MAGIC】

アーティストのチョーヒカルとボディペイント作品

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IMAGE by: FASHIOSNAP

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宇宙人のアバターで会話する空間

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 「今は『すごいな』とか『面白いな』よりも、一歩踏み込んだところを伝えられる作品が作れたらな、と思っています。それに関しては正直、ボディペイントじゃなくてもいいと思うので、最近関わった『プロジェクトエイリアン』はそういう作品の一つですね」。

 「プロジェクトエイリアン」は、顔出ししづらい事情を抱えた若者がエイリアンのアバターに身を包んでVR空間に飛び込むという、NHKのドキュメンタリー番組(2022年9月放映、12月再放送)。トランスジェンダーや在日韓国人、無職、ホストといった一般の参加者が“現代社会の分断”を乗り越えるために交流を重ねていく。チョーは番組チームと共に企画・デザインを担当した。「元々は個人でひっそりとやっていたプロジェクトだったんですが、テレビ局の知り合いに企画書を持ち込んだんです」。

顔の見えない相手だからこそ話せることも

 それまで肉体そのものをベースに作品を作り上げることが多かったが、新しいプロジェクトでは逆の発想で同じコンセプトを踏襲している。「ボディペイントは皮膚の上に何かを描くことで『今まで見ていたもの』の意識を変えるじゃないですか。アバターも同じで、それを人に被せることで『今まで見ていたもの』への偏見が取り払われる装置なんです」。

 その背景にあるのは、チョーのオンラインゲーム体験だ。「私、ゲーム内のボイスチャットも好きなので、アバター上でするコミュニケーションに可能性を感じます。深夜の2時に、一緒にゲームをしている見知らぬ相手とすごく深い話をしたりする時があって。匿名で、相手の正体が分からない状態でするコミュニケーションには不思議な自由さがあるというか」。

オンラインゲーム上でアンチと直接対決

 実際、日本生まれだが中国籍であることで、チョー自身が長年「エイリアン」のように感じながら生きてきた。「一人ひとりが違う人間であること」はチョーにとって重要な価値観。だが、そのことに理解が及ばない人間も多く存在する。

 新型コロナウイルスの新規感染者数が急増していた2020年、留学中だったチョーは「日本の永住権を持っていても、海外国籍保持者は入国を禁止される」と聞いて一時的に帰国した。その時の心情を綴ったツイートに大量のヘイトコメントが書き込まれたのだ。

 「『帰化しないなら黙ってろ』『中国人はどうせスパイだろ』みたいな言葉が投げつけられて、地獄のようでした。人間の未知のものへの恐怖と自己防衛心から来ているのもあると思うんですけど。『本当にお前の言ってることが正しいんだったら、説明してみろよ』みたいなDMまで届いたので、『説明します』と返信したんです」。

 その後の彼女の行動には驚かされる。相手をオンラインゲーム上に誘い、プレイしながら帰化問題について語ったのだ。日本国籍を取得するには様々な条件や調査があること、日本に暮らす中で国籍を意識する場面があらゆるところに存在すること、そしてそれはアイデンティティに強く関わる問題であること——。すると相手は態度を改め、彼女に謝罪したという。相互理解へのアプローチも、非常にユニークだ。

見た目をキュレーションする楽しさ

 また、個人のアイデンティティを語る上で、外見の問題も重要だ。著作の中では赤裸々にルッキズムに対する思いを明かしている。「以前は、自分が持っていた『女はこうであるべき像』に必死に当てはまろうとしていたんです。自分はブスだから目立っちゃいけないし、社会の規範に合わせないと受容してもらえないんだと思っていました」。

 だがニューヨークに引っ越してからは、肉体に対する意識の変化を感じたという。「多様なレプレゼンテーション(概念・イメージ)を目にして、自分の身体や顔の造形に対しても許せるようになりました。日本だと『脚が細くないのにミニスカートなんて穿いたら、みっともないって思われる』といった気持ちに左右されることが多いけど、アメリカだと明らかに誰も気にしていない。挑戦してみて『あ、意外と自分のミニスカート姿を醜いと思わないな』と思ったり」。

 アートとファッションは近しい関係にあるようにも思えるが、チョーにとって後者を楽しめるようになったのはごく最近のことだという。「ファッションの方が、より自分と外の世界を繋げる部分なのかもしれないですね。今は『自分がやりたいこと』と、『外から見て良いと思われるだろうもの』をうまくキュレーションして服を選んでいるので、パズルみたいで本当に楽しいです」。

身体は、自由なキャンバス

 取材当日、チョーは4時間かけて作品を完成させた。ボディペイントを制作する際、まずネットでモチーフをリサーチし、それらをiPadで確認しながら筆を進める。「描いたことのない物を描くときは、できるだけたくさん画像を集めます。本物を見ながら描くのが一番ですけど、なかなか叶わないので」。最初は軽く輪郭を取り、様々な距離や角度から確認しながら描き進めていく。

 「今回のテーマは、二面性を表す作品シリーズの中で思いついたものです。花って美しいものだけど、美しいものほど毒があったりする。それで毒のある花を調べて、体内で繁殖しているイメージを作りました」。骸骨の内側から覗くイヌサフランという花は、アルカロイド系の有毒植物。誤って摂取すると下痢、嘔吐、皮膚の知覚麻痺、呼吸困難などを発症し、重症の場合は死亡することもあるという。

 チョーにとって身体は「自分の好きなように表現できる場所」だという。「陳腐に聞こえるかもしれないけど、自分にとって身体はキャンバス。ボディペイントをする上でもそうだし、『身体にはもっともっと可能性がある』とも信じているので。この世には、みんなが『こういうふうに着飾るのが正解』と思うような美しさもあれば、それ以外の美しさもあると思うんですよね」。

 今後の目標を尋ねると「2023年に発表したい本が3冊あるんです。あと、日本とニューヨークで作品を展示できる機会を作れたら。それに合わせて新作もいっぱい作りたいな。“楽しく絵を描いて死んでいく人生”の基盤を作りたいと思っています」と笑顔で語った。彼女のクリエイションは、これからも世界の様々な偏見や分断をポジティブなものに変えていくに違いない。

チョーヒカル(Hikaru Cho)

1993年、東京都に生まれる。2016年 武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科を卒業。体や物にリアルなペイントをする作品で注目され日本国内だけでなく海外でも話題になる。「笑っていいとも!」を含む多数のメディア出演に加え、Samsung、Amnesty International、資生堂、TOYOBOなど企業とのコラボレーションや、国内外での個展など多岐にわたって活動している。ペイントの他にも衣服やCDジャケットのデザイン、イラスト、立体、映像作品などを制作。著書に「SUPER FLASH GIRLS 超閃光ガールズ」「ストレンジ・ファニー・ラブ」「絶滅生物図誌」「じゃない!」「なにになれちゃう?」がある。
公式サイト

body paint: Hikaru Cho
model: Takeru Noguchi 
photographer: Suguru Tanaka (FASHIONSNAP)
videographer: Hiroyuki Ozawa (FASHIONSNAP)
composition & text: Fuyuko Tsuji (FASHIONSNAP)

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