IMAGE by: HENRY JACQUES
フレグランスの魅力とは、単に“匂い”だけじゃない。どんな思いがどのような香料やボトルに託されているのか…そんな奥深さを解き明かすフレグランス連載。
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2023年4月24日、ついに「アンリ・ジャック(HENRY JACQUES)」の日本初フラッグシップショップが銀座並木通りにオープンした。1975年にフランスで誕生したオートパフューマリーメゾン「アンリ・ジャック」は、創業者 アンリ・クレモナが“オートパフューマリー”、すなわちオーダーメイドで創り始めた香水界のラグジュアリーブランドだ。
2014年からはレディメイドをスタートし、香料濃度約100%の「レ・エッセンス」と希釈タイプの「レ・ブルーム」の2タイプを展開。日本には2022年2月に上陸し、GINZA SIXでポップアップサロンからスタート。「レ・エッセンス」と「レ・ブルーム」各18種をラインナップしている。
香ればすぐわかるクオリティの高さ、手作りのクリスタルのボトル…すでにラグジュアリー要素満載だが、今年2月に発売された「クリック-クラック」で度肝を抜かれた。いわゆる“練り香水”だが、なんと約400万円。名刺よりも小さなサイズで車1台分の価格!? でも直に触れてみると、一瞬にしてそんなことはどうでもよくなってしまう代物なのである。
ケースがしなやかにスライドすると、練り香水が現れる。口紅にありがちなマグネット式ではなく、アイシャドウのようにプラスティックシートで覆われることもない。それでも香りが漏れることのない、実に精巧な作りである。いったいなぜか?
それはアンリ・ジャックの現CEOであり創業者の娘であるアナリズ・クレモナが、スイスの高級時計ブランドの創業者リシャール・ミルの姪であることと関係がある。練り香水のケースの開発に苦労していたアナリズに、リシャール・ミルが時計職人を紹介したのだ。時計職人のサヴォアフェール(匠の技)を基軸にケースの開発に4年半、練り香水のカプセルの開発に3年半。特許取得のこのケースは、不具合が生じたらスイスの工場で修理にも対応してくれる、まさに精密機器なのである。
日本初のフラッグシップショップは設計と組み立てをフランスで行い、すべての素材を真空パックで運び入れ、専門チームが日本で再び組み立て直すという徹底ぶり。手染めの古いオーク材を用いたフローリングとキャビネットに、アンティークテーブルとソファを配したぜいたくな空間で、キャビネットには18〜19世紀の希少なフランス製アンティークチェストにレ・エッセンスを収納したコレクションを陳列。それらもすべて販売品で、200万円台から1000万円を超えるものまでサイズもデザインもさまざまに揃う。
とにかく百聞は一見に如かず、究極のラグジュアリーをぜひ体感してみてほしい。ちなみに「クリック-クラック」は店頭にディスプレイされていないので、試したい場合は一声かければ奥から出してもらえる。
(文:ビューティ・ジャーナリスト 木津由美子)
■アンリ・ジャック 銀座:東京都中央区銀座7-6-19、TEL 03-3289-0068 火曜定休
ビューティ・ジャーナリスト
大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。
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