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「古着に対して楽してる店が多すぎる」 本当に良い古着屋を求めて。下北沢 ムー編

【連載】本当に良い古着屋を求めて 第2回

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「古着に対して楽してる店が多すぎる」 本当に良い古着屋を求めて。下北沢 ムー編

【連載】本当に良い古着屋を求めて 第2回

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 自分らしいファッションに出会うため、自身のスタイルを貫き通す話題の古着屋オーナー、名物スタッフたちに学ぶ連載「本当に良い古着屋を求めて」第2回。ファッション迷子は今日もゆく。

 下北沢駅から徒歩約10分。駅前の若々しい喧騒から離れるように茶沢通りを進むと見えてくる古着屋「ムー(mu.)」。下北エリアは古着屋激戦区の一つでもあるが、今回伺ったムーは、他店とは一線を画した独特な雰囲気を持つ。目印はお隣の魚屋。平日昼から常連客で賑わうムーの人気の秘密は、オーナー貴志さんの人柄や審美眼の確かさにある。「他人を気にする必要はない、自分の好きなように服を着ればいい」と話す貴志さんとの会話を通して、「良い服とは何か」について思案する。

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白を基調としたシンプルな外観の奥にこだわりのインテリアが覗く

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目印は隣の「鮮魚」看板

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今の服と似合うヴィンテージを、今着たいと思えるスタイルで

 オープンは2019年。突然何の前触れもなく、「辞めよう、独立しよう」と思い立ち、以前勤めていた古着店から独立した貴志さん。下北沢を選んだ理由は、店舗を探していたタイミングでたまたま空きがあったから。内装は、学芸大学の古着店「トランポット(TRAMPOT)」と祐天寺の古道具店「セイン(SEIN)」のオーナー タケダさんに依頼した。テントサウナ仲間でもある旧来の友人に店作りは完全にお任せし、買い付けでアメリカから帰ってくると内装は完成していたとか。存在感を放つインテリアは、1年に1つずつ買い足しているという。1年目にはネオンアーティストのWAKUにライトの制作を依頼し、今年はハンガーをフルオリジナルにすることを検討中。毎年必ずそれなりの金額を店に投資すると決めている。

ネオンアーティストWAKUさんの作品

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 買い付けは主にアメリカで行い、古着に精通したオーナーが選んだ良品が所狭しと並ぶ。他店では“ヴィンテージ品”としてショーケースに並べられてしまうようなアイテムも、現代的なアイテムと並べて「今着たい」と感じさせるスタイルで提案する。1940〜1960年代頃のアメリカで特に多く流通した、フェノール樹脂「ベークライト」や着色可能な熱硬化性アクリル樹脂「ルーサイト」で作られたアクセサリーは、古着好きの中では知られても、現在は着けている人を見かけないアイテム。“良い品”なのに“古臭い”と思われてしまうアイテムを、ちゃんとかっこよく見せるということにこだわり続けている。

バングルをつける手

ベークライトのバングル(スタッフsoryoさんの私物)。元々ウィメンズアイテムとして知られるこれらをメンズのスタイリングでも提案。すぐに売り切れる。

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 ムーを立ち上げる以前、古着屋で働く前は「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」と「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」で販売員をしていたという貴志さん。ラグジュアリーブランドのアイテムも古着も同じく、良いものは良い。そして、良いもの同士は作られた時代が違っても似合う、という考えを持つ。貴志さんがこだわるのは、「如何にヴィンテージアイテムを面白く、今着たいと思えるように提示できるか」。ヴィンテージアイテムを購入したら、全身ヴィンテージ人間にならなければ!なんてことはないのだ。

 貴志さんの考えるかっこいいファッションの定義は「オリジナリティ」と「個人の人間性」そして「自分を持って服を着ること」。ずっと着ているというヴィンテージスウェットは、今となっては人気アイテムだが、全く売れていない時期もあった。注目度が低く入手しやすい時期から、自身が着たいという理由で自分を貫き買い付け続け、ムーでも人気商品となっている。音楽や芸術には関心がなく、影響を受けたのは先輩後輩、友人。信頼した相手を大切にする貴志さんの交友関係は、古着屋やアパレル関係だけでなく多岐に渡る。一方で、SNSのチェックは最低限に。「今って情報多すぎるので、みんな周りをキョロキョロ見すぎ。周りのこと気にしすぎていると思うんです。ファッションも、なんでも、自分が良ければいいんです」。

店舗内装

左:Essential Storeのクッション、右:キャンプで一度使った釜

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サボっている古着屋が多すぎる

 貴志さんのこだわりは、「自ら買い付け、自ら売ること」。当たり前のように思われて、実践している店は意外と少ない。古着ブームが後押しし、世間には玉石混合多くの自称古着屋が溢れているという。「みんなすぐ新しい店を増やしちゃうんですよ。それでダメな古着屋になっちゃう」。店舗を増やして、オーナーの目が行き届かなくなるなら個人店である意味がないという考えから、2号店の出店予定はないという。スタッフの採用も同様で、現在ムーを支えるアルバイトの2人は貴志さんの友人。貴志さん自ら声をかけ、買い付け時など人手が足りない時は手伝ってもらうという、最低限の人員で店を切り盛りしている。スタッフ募集は一切行っておらず、今後も予定はしていない。「個人店の規模なら1人でだってやっていけるのに。社員を闇雲に増やすお店はサボってるなと思います」。

 古着へのこだわりや芯のない店も、古着ブームの恩恵を受け、広告やインフルエンサーを起用すれば商売が成り立つ現在に対し「みんな古着に対して楽をしすぎている」と貴志さん。「結局は、売り手も買い手もぞれぞれ自分が良いと思うようにしたらいい、そしてアメリカに買い付けに行っていない古着屋はみんなダメ」。

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マニアを相手にしない 古着を自由にする価格設定

 古着ブームも影響し、総じて古着の価格は高騰している。「全ての古着が良いと思っているわけではありません。でも今は、なんでもかんでも高すぎるんです」。古着を選ぶ上で重要なのが目利きだが、一言で目利きと言ってもそれは個人の価値観に大きく左右される。だからこそ、もっと自由に良いものが選べる価格設定をムーは意識する。「(個人の価値観を)自由にするのは価格しかないと思ってます。それは相場や付加価値を少し超えたところにあるような気がします」。自分の価値観で選び、気に入らなくなったら誰かにあげても損した気分にならない価格であること、また、高価なものを購入して失敗したとしても、誰かに売ることができる価値あるものであること。それらを端的に、貴志さんは「もっと安くしてもっと高くしたい、そう思ってます」と表現する。「マニアを相手にしたいわけじゃないんで。シンプルに、お客さんがいいと思えばそれで良くないですか?」と付け加えながら。

マニア垂涎のレアな軍モノものもいちいち説明せず、顧客の審美眼に任せる。

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 より現実的に、今着たいと思えるアイテムを展開するために、様々なリメイクショップに依頼しリメイクも行う。「パタゴニア(PATAGONIA)」がアメリカ軍のために2000年代に一時的に製造していた「マーズ(MARS)」はオープン以来取り扱っており、そのデッドストックのパンツを、古くからの友人が運営する神戸のリメイクショップ「シカリ(ciicali)」に依頼してリメイクしたスカートも定期的に制作。ミリタリースカートアイテムは、近年ではメンズにも人気だという。現在制作中のゴアテックスやソフトシェル素材のスカートは、近日中に店頭に並ぶ予定。(ムーのミリタリーアイテムはInstagramのハッシュタグ「#military_mu」から確認することができる)

服を選ぶ人

メンズにも人気のスカート。手に取っているのは古く高価なアメリカの民族衣装。

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オーナー&スタッフが組む“ムー的な”3ルック

 ここでは、貴志さんと、自身もブランドを手掛けるスタッフのsoryoさんに今お勧めするコーディネートを紹介。

左から:貴志さん、soryoさん(ご近所なので、フットワーク軽く店番を担当!)、南さん(「接客は結局貴志さんの一声です笑」)

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全身本気ミリタリー

インパクト大。ミリタリーセットアップ。

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貴志さん

下北沢の他の古着屋には絶対に売っていません。上下それぞれで仕入れたことはあったけど、セットアップは初めて買い付けることができました。かっこいいですよね。

目出し帽もたまに仕入れる。「良いものはすぐ売れます」

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古くていいもの
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貴志さん

上は古いL2Bジャケット。こんな良いものはもう買えないかもしれません。このトリップ(トリップ ニューヨークシティ)のパンツは、Y2Kの中で個人的に一番かっこいいと思います。

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とにかく「モノの良さ」でセレクト

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メンズにもおすすめロングスカート
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soryoさん

ムーでは、男性のお客さんにもスカートがよく売れるので取り入れました。ロングスカートのシルエットが新鮮で良いと思います!

パンツは自身のブランド「セルズトゥプレイ(CELLS TO PLAY)」のアイテム

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「めっちゃやばいブーツ」こんなに置いている店はそうそうない。元々はウィメンズサイズも置いていたがすぐに売れた。

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アークティックと呼ばれる、南極圏や北極圏で着用するブーツ。靴下を重ねて履くため大きく作られている

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Fスナスタッフが変身

 今回も古着大好きFスナスタッフSが取材に同行。貴志さん、soryoさん、南さんにご相談しながら半分プライベートのお買い物を開始。

貴志さんおすすめのヴィンテージスウェットに合わせるパンツを選びます。

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鏡を見る人

1920年代のアメリカのフックレス製ジッパーのパンツ。1960年代のスウェット。

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貴志さん

この年代のパンツにはベルトループついてないのでリメイクしました。普通ジョッパーズは裾がレースアップになっているのですが、これはなってない。だから嫌な感じがしないんです。

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「このスカートも着たいです!」

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南さん

このスカートはちょっとバランスが難しいかも。下にパンツ履きましょうか。

あ!スカートなくても全然いいかも!私物のスネークブーツに合わせます。パンツの裾は貴志さんの助言を受けて、出してみました。

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スタッフS

襟元が曲ってしまったジップがポイントのトラックジャケットに、人気アイテムの一つ「マーズ」のパンツを合わせる。

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ジップは上までが基本。キャップとブーツは本人私物。

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@fashionsnap 【本当に良い古着屋を求めて】「ムー(mu.)」@下北沢 自分らしいファッションに出会うため、自身のスタイルを貫き通す話題の古着屋オーナー、名物スタッフたちに学ぶ連載「本当に良い古着屋を求めて」第2回👏✨ ムーは、買い付けは主にアメリカ🇺🇸で行っており、古着に精通したオーナーが選んだ良品が所狭しと並んでいます👕他店では“ヴィンテージ品“としてショーケースに並べられてしまうようなアイテムも、現代的なアイテムと並べて「今着たい」と感じさせるスタイルで提案! ■ムー 所在地:東京都世田谷区代沢5-9-12 営業時間:13:00〜20:00 Part 2 of the series ``In Search of a Really Good Vintage Clothing Store'' where you can learn from popular second-hand clothing store owners and famous staff members who stick to their own style in order to find fashion that suits you.👏✨ Mu mainly purchases from the United States🇺🇸, and the store is filled with quality items selected by the owner who is well-versed in vintage clothing.At other stores, they are lined up in showcases as "vintage items." We also offer items in a style that makes you feel like you want to wear them now, along with modern items! #mu. #ムー #古着屋 #下北沢 #下北沢ムー #下北沢古着屋 #ヴィンテージ #販売員 #古着 #古着屋紹介 #vintagefashion #fashion ♬ オリジナル楽曲 - FASHIONSNAP

暑い時期限定のサマータイム営業も好評。平日夜も仕事や学校帰りに駆け込む服好きの客足は絶えない。 

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■ムー
所在地:東京都世田谷区代沢5-9-12
営業時間:13:00〜20:00
Instagram

【連載:本当にいい古着屋を求めて】

第1回:祐天寺「Gabber」
第3回:学芸大学「ISSUE」
第4回:渋谷 「DESPERATE LIVING」

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