「ジバンシィ(GIVENCHY)」がメンズの2023年春夏コレクションをパリ7区のエコール・ミリテール(旧陸軍士官学校)の敷地内で発表した。マシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)がクリエイティブディレクターに就任してからメンズの単独ショーは初となる。屋外の巨大な白い箱からモデルが登場し、箱を囲む水盤の上をモデルが水飛沫を上げながら歩くという演出。
コミュニティの装い
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マシューは"本能的な出発点"と語るメンズウェアにおいて、よりパーソナルなアプローチでコレクション制作に取り組んでいる。彼自身のペルソナがコレクションに色濃く反映され、デザイナー自身がランウェイを歩いていてもなんの違和感もないほどだ。ショーにも登場したジャケット刺繍の柄は、彼の脚に入っているタロットカードのモチーフだという。今回も私生活やジバンシィでの仕事の中で、自身を取り巻くアーティストやミュージシャン、デザイナーなどにインスパイアされた"コミュニティの装い"を表現した。
"ロゴマニア"
コレクション全体を通して印象深いのは、ふんだんな「ロゴ」使い。ファーストルックのホワイトのジャケットに施されたのは、様々なフォントのロゴやアイコニックな4Gのロゴ。過剰なほどのロゴの主張は90年代の消費社会を彷彿とさせ、その価値を問うよう。タートルネックとヘッドバンドをドッキングしたようなフェイスマスクや、ウェアのフロント、バックと随所に「GIVENCHY」の文字が大胆にあしらわれている。
マシュー独自のラグジュアリーなアプローチ
冒頭は「ストリートウェア×ラグジュアリー」を提案してきた「1017 ALYX 9SM」に見られるようなマシューならではのアイテムが登場。一見テクニカル素材に見えるミントグリーンのシェルジャケットは超軽量のレザーで仕立てられたほか、カモフラージュ柄はホワイトとプリントのナイロンを重ねて手縫いし、手作業でサンド加工とウォッシュド加工を施したという手の込みようで、現代的かつ典型的なワードローブをメゾンが持ち合わせる巧みなテクニックでラグジュアリーウェアに昇華している。
アメリカンユースカルチャーの影響
また、所々にマシューの母国であるアメリカンユースカルチャーの要素も垣間見ることができる。デニムベストやスウェットの袖はハサミで断ち切りにしたようなほつれ感がグランジムードを助長。終盤のエレガントなテーラードのジャケットやコートに合わせたセットアップのパンツにも同様に、膝部分の切り込みからライニングが露出しているのも特徴的。
ロゴが大きく入ったヴァーシティ風スウェットのセットアップや、股浅の"腰パン"から覗くのはロゴ入りのアンダーウェア。コーラルピンクやグリーンといったカラーが鮮やかに主張し、それはまるでティーンが、ブランドに対して持つ「憧れ」や「自己顕示」といった感情の表れのよう。
そこにマシューが得意とするパドロックチェーンやパールのネックレスといったアクセサリーや、角張ったG型のリムとテンプルがフューチャリスティックな新作アイウェア「Gカット」、シューズではTKシルエットを中心にタフなレインブーツなどを組み合わせ、コンテンポラリーなルックが完成した。
マシューはショーについて「身近にいる男性たちを反映したものであり、男性が日常的に着飾る方法 ——新しい世代が自身の進歩を通じて過去のドレスコードやファッションの原型を受け入れ、さらに進化させていく方法—— を形作るための時間と文化の対話」と語る。それは同時に、マシュー・ウィリアムズを取り巻く環境(コミュニティ)や彼のライフスタイルそのものを覗き見しているかのようだ。
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