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アントワープ発の“シュールなエレガンス”──注目の若手ジュリー ケーゲルスの魅力とは

LVMHプライズのセミファイナリスト

 ジュリー・ケーゲルス(Julie Kegels)は今、業界から熱い視線を集める若手デザイナーのひとりだ。ベルギー・アントワープ出身、27歳。エレガントでありながら、どこかシュールなユーモアが漂うデザイン。女性の多面性を肯定する、クラフトと直感を軸に生み出される服。デビューからわずか2年で、パリでのショーやLVMHプライズへのノミネートを果たし、その名は瞬く間に世界へと広がった。

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 今年3月末、ドーバー ストリート マーケット ギンザのオープンハウスに合わせて来日し、デッドストックのアイウェアを用いた“アイジュエリー”を披露。「焦らず、一歩ずつ着実に」と語る彼女が、ブランドの現在地とこれからを語った。

失敗から、道が開かれる

Image by: FASHIONSNAP

──「ジュリー・ケーゲルス」を立ち上げて約2年ですが、パリでのショーを継続し、世界での展開も広がり、LVMHプライズへのノミネートなど、躍進が目覚ましいですね。

 正直、2年という感覚があまりなくて。もっと長い気もするし、あっという間だった気もします。チームはまだ3人と小さく、失敗もあります。最初はそれがすごく怖かったのですが、今はむしろ、その失敗から道が開かれていくとも感じます。1ヶ月後に「あの出来事があってよかった」と思えることも多いんです。急成長しているように見えても強引なことはしたくないし、準備ができたときに次に進みたい。ステップを飛ばすと、必ずどこかで崩れてしまうと思います。

──これまで確立してきたシグネチャースタイルについて教えてください。人気の高いアイテムや、ご自身のお気に入りはありますか?

 定番のダブルバッグをはじめ、シャツも同じボディをベースに、毎回少しアレンジを加えています。以前はストリングをあしらったものを出して、2026年春夏シーズンはフェルトカラーを付けたデザインにしました、グリッタースカートもとても人気がありますね。

2026年春夏コレクションより

Image by: JULIE KEGELS

2026年春夏コレクションより

Image by: JULIE KEGELS

 それから今、シグネチャーピースだけを集めたコレクションのローンチを考えています。キャットドレスやグリッタースカート、デニムスーツ、オールインワンなど、アイコニックなアイテムをカラーを変えて販売する予定。ブランドを代表するピースでも、シーズンのテーマが変わると再登場させにくいことがありますよね。その悩みを解消したいというのもありますし、どんどん前に進んでいくだけではなく、定番をちゃんと残していきたいという気持ちもあります。

人気アイテムである バイオグリッターが入ったスカート

Image by: JULIE KEGELS

アイコニックな"ダブルバッグ”

Image by: JULIE KEGELS

地元アントワープからの影響

──ジュリー・ケーゲルスのデザインには、エレガンスの中にどこかシュールなユーモアが感じられますね。それがとてもベルギーらしいとも思います。

 無意識でしたが、そうかもしれません。ベルギーはいつも空が灰色で暗いから、ユーモアや温かみのあるものを求める傾向があります。そして、ベルギー人は自分自身をあまりシリアスに捉えすぎず、皮肉で自虐的な笑い話も得意。だからデザインの中にも、どこか「少しおかしい」「ちょっと変」な要素を含めるのは、私からすると自然なことなんです。

 シュールなユーモアだけでは、面白くないかもしれないけれど、美しいものと組み合わせることでバランスが生まれる。そのバランスを、いつも探しています。

Image by: Julie Kegels

──ジュリーさんの地元にあるアントワープ・ファッション博物館(MoMu)で展覧会「The Antwerp Six」が始まりました。アントワープ・シックスからは影響を受けましたか?

 私は子どもの頃からファッションが好きで、8歳の頃にはすでにこの世界に憧れていました。ガブリエル・シャネルやポール・ポワレ、マダム・グレといった歴史的なファッションアイコンの本をよく読んでいたんです。

 でもあるとき、親に「アントワープ・シックスのことも調べてみたら?」と言われて。最初は「何それ?」という感じで、正直あまりピンとこなかったんです。でも調べていくうちに驚きの連続で、だんだんと強く惹かれていきました。

 彼らが、それぞれまったく異なる独自の世界を持っていることも興味深かったです。そこからアントワープ王立芸術アカデミーに進みたいと思うようになりました。

──実際にアントワープ王立芸術アカデミーでは、アントワープ・シックスのメンバーであるウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)とダーク・ヴァン・セーヌ(Dirk Van Saene)に学ばれたそうですね。

 ウォルターは、個性や“自分自身であること”を常に強く後押ししてくれる存在でした。一方でダークはより繊細で、感性を大切にする人。この異なるアドバイスが、自分のアイデンティティを見つけるうえで大きく影響を与えてくれました。

 学院には世界中から幅広い世代の学生が集まっていて、それも刺激になりましたね。私は18歳で入学したので、同期の中ではいちばん若かったと思います。若いときは柔軟で、何度でもやり直せる。経験を重ねるとプライドが邪魔をすることもあるかもしれませんが、18歳の頃は「あ、そうか」と素直に受け入れることができた。そういう柔軟な時期に学ぶことができて、とてもよかったと思っています。

Image by: FASHIONSNAP

──卒業後は、「メリル ロッゲ(Meryll Rogge)」や、ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)率いる「アライア(ALAÏA)」のチームで経験を積まれたそうですね。

 メリルの元では5ヶ月間インターンをして、初めてクリエイティブだけでなく、ファッションという産業そのものに触れました。一つのブランドを動かすために、どれだけ多くのステップが必要なのかを知り、もっと深く理解したいと思うようになりました。

 アライアでは、規律や精密さ、そしてクラフトの重要性を学びました。一つの美しいものを生み出すために、どれだけ多くの人の手が関わっているのかということ。作品の中に人の存在を感じられることが、感動を生むのだと思います。それは単なるプロダクトではなく、ストーリーや職人の仕事が宿っているからこそ。今の時代において、とても大切なことだと感じています。

 ピーターもアントワープ出身なので、パリにいてもフラマン語(ベルギー北部のフランドル地方やフランス北東部で話されるオランダ語の諸方言)で話せたのが嬉しかったですね。彼はリサーチをとても大切にしていて、インターネットで簡単に調べて終わりではなく、図書館に足を運び、本を読みながら深く掘り下げていく。その姿勢にも大きな刺激を受けました。

最新コレクションは
ウォーホルの著書が着想源に

──最新の2026-27年秋冬コレクションは、影が印象的なコレクションでした。

 アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)の書籍「アンディ・ウォーホルの哲学 AからBへ、そしてまたAへ(The PHILOSOPHY OF ANDY WARHOL (FROM A TO B & BACK AGAIN)」がとても好きな本で何度も読み返しているのですが、その中に”名声”についての章があるんです。「人は口を開くまではオーラを持っているけれど、話した瞬間にそれは消えてしまう」という言葉があって、とても興味深いと思いました。

2026年秋冬コレクションより

Image by: JULIE KEGELS

2026年秋冬コレクションより

Image by: JULIE KEGELS

 同時に、SNSの時代においてパブリックとプライベートの境界がとても曖昧になっていることについても考えていて。一方で、自分の見せ方をコントロールできる時代でもありますよね。影は自分の分身のようだけれど、どこか操作できるものでもあるし、完全に自分に“正確”な存在とは言えないかもしれない。だからこそ今季は、自分を守るオーラのバブルのようなディテールも取り入れています。

Julie Kegels 2026年秋冬

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JULIE KEGELS

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

──今回、日本で披露したアイウェアを用いた“アイジュエリー”について教えてください。

 アントワープのアイウェアブランド「テオ(theo)」とのコラボレーションで、彼らが持つデッドストックのフレームをアップサイクルしています。実用品というよりは、顔のジュエリーのようなものですね。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

 最初はジュエリーを考えていて、そこから眼鏡にたどり着いたのですが、そのままだと実用的すぎるなと。そこでレンズを取り除き、フレームだけにすることにしました。

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

──日本の印象はいかがですか?

 今回が4度目の訪問なのですが、直近の2回は仕事が忙しく、あまり街を探索できていなかったのが心残りで。今回は少し時間があるので、新しい場所を見に行くのがすごく楽しみです。

 昨日到着して、さっそく渋谷の「茶亭 羽當」でお茶をしました。そのあと銀座で焼き鳥を食べて、ヴィンテージの時計店にも立ち寄って、かわいい時計を見つけました。銀座の「エルメス(HERMÈS)」にあるギャラリー「ル・フォーラム」や、東京タワーにも行きました。

春の陽気の日本を楽しんだそう

──では最後に、今後の目標を聞かせてください。

 まずは健全なビジネスを築くことです。少しずつ成長して、チームも増やして、もう少し余裕が持てたらいいなと思っています。あまり先のことを計画しすぎず、一歩ずつ進んでいきたい。まずはこの“赤ちゃん”のようなブランドを大人になるまでしっかり育てるという覚悟でいます。

Image by: FASHIONSNAP

ジュリー・ケーゲルス(Julie Kegels)
1997年、ベルギー生まれ。アントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、「メリル ロッゲ(Meryll Rogge)」、ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)率いる「アライア「アライア(ALAÏA)」での経験を経て、2024年に自身のブランドをスタート。同年からパリでの発表を開始し、LVMHプライズにノミネートされるなど、早くも国際的な注目を集める。

最終更新日:

ファッションジャーナリスト

大杉真心

Mami Osugi

文化女子大学(現文化学園大学)でファッションジャーナリズムを専攻、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学ぶ。「WWD JAPAN」記者として海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当。2019年、フェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家を取材。2021年8月に独立後、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。2022年4月より文化学園大学非常勤講師。

(編集:平原麻菜実

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