
JUNYA WATANABE 2026年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

JUNYA WATANABE 2026年春夏コレクション
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モデルたちは慌ただしく歩くのではなく、ゆっくりとした足取りでランウェイを進み、要所で立ち止まってポーズを取る。そして観客に向けて、ルックについての説明が記されたカードを掲げるという、まるで古典的なオートクチュールのプレゼンテーションを思わせるこの演出は、「ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)」が生み出したアート作品のような服を強調するものであった。渡辺淳弥が手掛ける「ジュンヤ ワタナベ」の2026年春夏コレクションは、「日常から生まれた非日常のアート」をコンセプトに日常の中に潜む非日常的な美を見事に抽出し、ファッションという形で再構築してみせた。
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「今までとは異なるアプローチで、アートピースのような服を作ることを目指しました。身近にある既製品(レディメイド)を素材の一つと考え、それらを本来の用途とは異なる文脈で用いて、常識的な手法では生み出せないフォルムの探求する事がテーマ」という渡辺の言葉に集約されるように、今季は新たなフォルムを生み出すために世に溢れる既製品に着目。前シーズンの2025年秋冬コレクションでは「キュビズム」をテーマに、「ドクターマーチン(Dr.Martens)」とのコラボレーションで袖がブーツになったライダースジャケットなどを披露したが、今季はさらに踏み込んで、日常にあるオブジェクトの再解釈に挑戦している。
実際にコレクションでは、黒のプレーンなドレスの肩に複数の赤いパンプスが接着されていたり、ハンガーにかかったままのトレンチコートが前身頃に縫い付けられていたり、カトラリーで装飾されたものやワイングラスを包んで襟のように仕上げたりと、さまざまな日用品を服へと昇華。また、傘で作ったスカートや、ブラジャーをアップサイクルしたデザイン、スーツケースのパーツを巻き付けるようなディテールと、見る者の想像力を喚起するアイデアが次々と登場した。

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後半は、ボーンを入れて流線型のシルエットに仕上げたストッキング素材のドレスを中心に構成され、「ステューシー(STÜSSY)」のTシャツもハンガーで装飾。ラストルックのボレロジャケットは東京の後楽園ホールすぐ側にある格闘技用品を中心に扱う販売店「GRIT」と協業したものだ。その武骨な素材感と洗練されたシルエットの対比は、渡辺ならではの美学を象徴するかのようである。また、「ニューバランス(New Balance)」とのコラボレーションシューズも披露された。

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今季のコレクションは単なる解体ではなく、「再構築」の美学を前面に打ち出している。それは既存の価値観や常識に縛られることなく、新たな美的秩序を生み出そうとする試みであり、混沌とした現代社会における創造の可能性を示唆するものと言えるだろう。日常と非日常の境界を巧みに曖昧化し、見慣れた物体に新たな生命を吹き込む渡辺の手法はファッションという枠組みを超え、「着る」という行為や「服」そのものの意味を拡張する試みでもある。気を衒って視覚効果を狙ったものではなく、「服とは何か」「着ることの意味とは何か」という、ファッションの根源的な問いへの探求なのである。
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