
2026年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
渡辺淳弥が手掛ける「ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)」は、前回の2025年秋冬で、ゴールドラッシュの労働者に向けたウェアを生産する為に設立された「フィルソン(FILSON)」の「マッキーナクルーザージャケット」に焦点を当てた。「快適、安全、耐久性は、流行遅れにはならない」と信じるフィルソンのブランド哲学に共感して生まれた"最上のワークウェア"が披露されたが、2026年春夏は「古いのに新しいと感じるもの、また古いものを再現する過程で生まれた新しいもの」を探求。渡辺はジュンヤ ワタナベ マン2004年秋冬で発表した、アンティークマーケットのインテリアファブリックを使ったテーラードスーツを、再現して新しく見せようと試みたという。
2004年秋冬コレクションは、ヴィヴィッドなシャツに合わせた英国風のツイードジャケットや総柄ジャケットなどが特徴だったシーズンだが、20年を経て、ジュンヤ ワタナベ マンは過去の作品にスポットを当てる。2026年春夏ショーはショパンの「Minute Waltz」のBGMとともに、、20年前のオリジナルコレクションを現代的に解釈したジャケットスタイルで幕を開けた。インテリアファブリックの柄をイメージしたような総柄のノッチドラペルジャケットに始まり、ソファ柄のようなピークドラペルジャケット、植物柄のテキスタイルをあえてほつれさせ、風合いを出した2つボタンジャケット、ピンストライプのダブルブレストジャケットなどを披露。裾丈は統一されているが、アイテムによって袖が短いものなどがあり、バリエーションも豊かだ。なお、ファブリックは今回一から作り上げ、加工によってヴィンテージ感を出している。
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同コレクションの真髄は、2004年当時とは一線を画すパンツスタイルの提案にある。裾を余らせたブーツカット、精緻に計算された細身のテーパード、センタープレスが入ったサルエル、そしてジュンヤ ワタナベ マンらしいクロップドパンツと、多様なシルエットが、ジャケットとの絶妙なバランスによって新鮮さを醸成している。このコレクションが、単なるリバイバルではなく、過去の価値ある要素を現代的視点で再解釈する試みと言える所以がここにある。

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2026年春夏コレクションでは、ジュンヤ ワタナベ マンらしくコラボレーションを豊富に展開。「カンペール(CAMPER)」「リー(Lee)」「リーバイス(Levi’s®)」「ニューバランス(New Balance)」「トリッカーズ(Tricker's)」「カーハート WIP(Carhartt WIP)」「ディッキーズ(Dickies)」「GUY ROVER」「Innerraum」「Luigi Borrelli」「マリア サンタンジェロ(Maria Santangelo)」「Merz b. Schwanen」「The Face Magazine」と手を組み、さまざまなアイテムを製作した。また、アートワークコラボとして、トーベ・ヤンソン(Tove Jansson)の「Smoking girl(Self portrait), 1940」やエリザベス・ペイトン(Elizabeth Peyton)の「Lunch(Nick). 2003」、エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)の「Portrait of Hans Jæger 1889」を、柄としてシャツなどに落とし込んだ。

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2026年春夏コレクションは、ジュンヤ ワタナベ マンが長年貫いてきた「既存の価値観を解体し、再構築する」という哲学の結晶といえる。その解体し、再構築する対象が他者ではなく、当人のクリエイションだということも、俯瞰して本質を見極めるジュンヤ ワタナベ マンらしい所作であろう。パンツシルエットという現代的要素を加えることで、デザインの時間軸を自在に操作してみせたことは、ファッションにおける「時間」と「創造」の複雑な関係性を探求する、知的で深遠な試みである。
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