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【トップに聞く2023】前澤洋介 花王・化粧品事業部門長 カネボウ化粧品社長 「G11を海外でも支持されるブランドに」

前澤洋介 花王・化粧品事業部門長およびカネボウ社長

Video by: FASHIONSNAP

 FASHIONSNAPの新春恒例企画、経営展望を聞く「トップに聞く 2023」。本年は、アフターコロナにシフトする中で各企業に求められる「イノベーション」をテーマに送る。第6回は、1月1日付で花王の上席執行役員 コンシューマープロダクツ事業統括部門 化粧品事業部門長および、グループ会社のカネボウ化粧品代表取締役社長、モルトンブラウン会長に就任した前澤洋介氏。長年化粧品事業に携わり、国際マーケティンググループ統括マネジャーを務めるなどグローバル市場にも精通している。直近では化粧品事業部門 プレステージビジネスグループ長と兼務し、グループ会社のエキップ代表取締役社長として経営の舵を取ってきた。今回、花王グループの化粧品事業部門全体の責任者として、さまざまなイノベーションでさらなる成長を目指す。

■前澤洋介(まえざわ ようすけ)
1963年11月10日生まれ、東京都出身。1986年立教大学社会学部を卒業後、鐘紡に入社。2005年7月にカネボウ化粧品 欧米マーケティング室 欧米マーケティンググループ統括マネジャー、2010年10月にマーケティング部門 国際マーケティンググループ統括マネジャーを経て、2013年1月にKanebo Cosmetics(Europe)Ltd.Presidentに就任。2017年3月からエキップ代表取締役を務め、2021年1月から花王 コンシューマープロダクツ事業統括部門 化粧品事業部門 プレステージビジネスグループ長を兼務する。2023年1月から現職。

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2022年は「霧中の夜明け」

ーまず2022年を一言で振り返ると?

 コロナの影響から少しずつ解放されて下期は経済も動き出していることから、「霧の中ながらも夜明けが見えてきた」という印象を持っています。ただ円安や原材料、輸送費の高騰など、地政学的なリスクはあり、簡単には解決しない問題が多い…。そんな中でも、この先は明るさがさらに増してくれればと願っています。

ー2022年の化粧品市場はどんな年だったと思いますか?

 少しずつインバウンド需要は増えていると言われますが、それでもコロナ前の2019年比で1割程度の戻り。日本人客も同様に2019年には戻っていません。ただアイテム別の売上ではスキンケアが2019年を超え、ベースメイクは9掛けとほぼ同水準になっています。ポイントメイクではリップが6割程度ですが、アイメイクは2割増と好調です。同社ブランドも市場とほぼ同様で、ルナソル、「スック(SUQQU)」などでアイシャドウが好調です。加えて、ベースメイクは「カネボウ(KANEBO)」の「ライブリースキン ウェア」が大ヒットし、リップは「ケイト(KATE)」の「リップモンスター」が爆発的な人気を獲得し、マーケットをけん引。リップモンスターシリーズは2022年12月時点で累計出荷本数800万本を突破しています。

成長する「G11」「R8」

ー具体的に化粧品事業の足元の状況はいかがでしょうか?グローバル戦略ブランド「G11」、国内で重点育成するリージョナル8ブランド「R8」の成果は?

グローバル戦略ブランド「G11」
・センサイ(SENSAI)・アールエムケー(RMK)・スック(SUQQU)・エスト(est)・カネボウ(KANEBO)・アスレティア(athletia)・ソフィーナ iP(SOFINA iP)・モルトンブラウン(MOLTON BROWN)・ケイト(KATE)・フリープラス(freeplus)・キュレル(Curel)
リージョナル8ブランド「R8」
・トワニー(TWANY)・リサージ(LISSAGE)・アルブラン(ALBLANC)・プリマヴィスタ(Primavista)・ミラノコレクション(Milano Collection)・デュウ(DEW)・アリー(ALLIE)・メディア(media)

 G11、R8ともに、コロナ前の前年を上回る実績となる見込みです。特にリップモンスターが奏功するケイトと、カネボウが好調です。カネボウは2020年のリブランディングが転機になりました。リブランディングにより、ジェンダーインクルーシブな視点を取り入れ、多様性や個性を尊重する時代に合わせた「I HOPE.」という直球のキーワードが、消費者だけでなく社内メンバーにも好循環を与えています。とにかくチャレンジしていこうという勢いが感じられますね。一方で、中国で人気が高い「フリープラス(freeplus)」がゼロコロナ政策などもあり苦戦していましたが、今後リブランディングを計画しています。

2022年12月期連結決算
・売上高1兆5510億5900万円(前期比9.3%増)
・営業利益1100億7100万円(同23.3%減)
・親会社の所有者に帰属する当期利益860億3800万円(同21.5%減)
化粧品事業
・売上高2515億円(同5.1%増)
・営業利益141億円(同66億円増)
2023年12月期連結通期予想
・売上高1兆5800億円(同1.9%増)
・営業利益1200億円(同9.0%増)
・親会社の所有者に帰属する当期利益880億円(2.3%増)

美容部員を「ブランド エバンジェリスト」に

ー市場では暗い話題も多かった2022年、化粧品事業のイノベーションを教えてください。

 まずは人財面ですが、最大資産である美容部員の役割を最適化することに伴い、2023年1月から美容部員の総称を“ブランド エバンジェリスト(ブランドの伝道師)”に変更しました。ブランド エバンジェリストとは、店頭とオンラインの垣根を越えて、ブランドを体現し、ブランドの魅力をあらゆる場所、場面、手法で伝えることのできる高いスキルとマインドを有したブランド専属の美容部員のことです。そのためブランド エバンジェリストの育成を行います。

ー全てのブランドで育成するのでしょうか?

 まずは花王グループのカウンセリングブランドであるカネボウ、ルナソル、「センサイ(SENSAI)」「エスト(est)」「トワニー(TWANY)」「アルブラン(ALBLANC)」の6ブランドにブランド エバンジェリストを配置し、そのための研修を進めています。応対スキル研修やオンライン基礎スキル研修、オンライン実践スキル研修などを行いながら、2025年までに全美容部員が店頭とオンラインの両輪で活躍できるブランド エバンジェリストを目指します。

ー研修を始めて見えてきた課題はありますか?

 ブランド エバンジェリストの活動にはオンラインカウンセリングやLIVE配信・動画配信もあります。美容部員のみなさんは、普段からYouTube配信を視聴したり、自分自身でもSNSを活用したりしているからか、想定よりも動画での表現に慣れていると感じます。もちろん最初はぎこちなさもありましたが、回を追うごとに各自で工夫をして上達しています。課題とすれば、そこからさらにお客さまの満足度を高め、ビジネスとしてどう拡大していくかです。

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