2022年も残りわずか。ビューティ業界は依然としてコロナの影響を受けつつも、未来に向けてハイスペックな製品が続々登場。2022年のビューティトピックの振り返り後編では、相次いだ社長交代や買収のほか、サステナブル容器の開発や次なる一手に強化するメンズ事業についてピックアップします。
大手企業の社長交代
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2022年の化粧品業界を振り返ると、大きな転換期を迎えたことが分かる。コロナ前まで、インバウンド需要を中心に右肩上がりの業績を残していた化粧品業界だが、コロナがその成長を鈍化させ売り上げは大きく減少した。コロナ禍の3年間、各社はじっと我慢のときとしながらも、ピンチはチャンスにと改革を進めてきた。2022年、業績は回復基調にあるものの、メイクアップ需要を左右する日本国内でのマスク生活の継続や、中国やロシアなど混沌とした海外情勢、円安、物流や資源などの高騰など、さらに抜け出すには課題が多い。
そういった先が読みにくいとも言える化粧品業界で2022年、日本国内の上場企業の社長交代発表が相次いだ。現社長は代表権のある会長職に就くが、資生堂やアイスタイルは現社長が代表取締役会長CEOに就くなど、多くの企業が次期社長と数年の併走期間を設け磐石な基盤を構築する。
資生堂は11月に2023年1月1日付で、海外事業に精通する、常務 中国事業担当の藤原憲太郎氏が代表取締役社長COOに昇格し、代表取締役社長CEOの魚谷雅彦氏は代表取締役会長CEOに就任する人事を発表した。魚谷氏は「私の任期を2024年末までとする従来の方針にあたり、藤原氏と二人三脚で並走し経営体制を強固なものとする」とし確実な継承を行う。ポーラ・オルビスホールディングスは12月に取締役 グループ海外展開担当 海外事業管理室長の横手喜一氏が代表取締役社長に昇格し、現社長の鈴木郷史氏は代表取締役会長に就任する2023年1月1日付けの人事を発表。横手社長は成長事業である中国現地法人の立ち上げをはじめ、中国事業の総責任者といった要職を歴任した人物だ。カネボウも2023年1月1日付で、花王コンシューマープロダクツ事業統括部門 化粧品事業部門 プレステージビジネスグループ長および、グループ会社のエキップ代表取締役社長を務める前澤洋介氏が代表取締役社長に就任する。前澤氏は花王 上席執行役員 コンシューマープロダクツ事業統括部門 化粧品事業部門長も担う。8月15日に米アマゾンおよび三井物産のそれぞれと業務資本提携を発表したアイスタイルは同日に、プラットフォーム事業セグメント長だった遠藤宗氏が代表取締役社長兼COOに昇格。創業者で代表取締役社長兼CEOの吉松徹郎氏は代表取締役会長兼CEOに就任し、共同代表として引き続き経営に携わっている。
2023年1月1日付で資生堂 代表取締役社長COOに就任する藤原憲太郎氏(左)と、代表取締役会長CEOに就任する魚谷雅彦氏
外資ブランドでは、2月にSK-IIのグローバルCEOにスーキョン・リー氏が就任した。ロクシタンジャポンはマーケティング本部長だった木島潤子氏が2月に、「ベアミネラル(bareMinerals)」を展開するベアエッセンシャルはレブロンの社長を務めた菅野沙織氏が7月に、代表取締役社長に就いた。
SK-II グローバルCEO スーキョン・リー氏
買収
2022年の買収で大きな話題となったのが、エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES、以下 エスティ ローダー社)の、「トム フォード(TOM FORD)」の買収だろう。トム フォードの買収ではフランスのラグジュアリーコングロマリット、ケリング(Kering)なども名前に挙がっていた。買収金額は28億ドル(約3900億円)とエスティ ローダー社にとって過去最大規模となる。同社は2005年にトム フォードのビューティ事業のライセンスを取得し、フレグランスやメイクアップ事業を運営。両カテゴリーともに確固たるラグジュアリーの地位を築いて、今後数年間で年間売上高は10億ドルに達すると予想される。
そのほか、国内ではオリックスによるディーエイチシー(DHC)の買収が発表された。海外では独ヘンケル社による資生堂プロフェッショナル事業の、ラグジュアリーECのファーフェッチ(FARFETCH)による高級化粧品小売のViolet Greyの買収があった。
サステナブル容器開発
資生堂は、1897年に初めて発売した化粧品「オイデルミン」の、2023年3月に発売する最新作である化粧液「SHISEIDO オイデルミン エッセンスローション」(145mL 税込9680円、レフィル 145mL 同9130円)で、ボトル製造と中味液充填をワンステップで実現する技術「リキフォーム(LiquiForm)」を応用した新パッケージを採用する。バラバラだった液体の充填と成形が同時に行えることで、運搬コストや環境リスクを軽減できる。ポーラ・オルビスグループのオーガニックコスメブランド「ジュリーク(Jurlique)」は、9月にリニューアルした「レアローズ」シリーズの容器・包材の最大94%を再生可能な素材に変更し、2024年までに全商品の容器・包材を再生可能な素材に切り替える。「ナチュラグラッセ(naturaglace)」などオーガニックコスメを展開するネイチャーズウェイは、自社回収した使用済み化粧品容器キャップの水平リサイクルプロジェクト「Cap to Cap」を実現している。
ボトル製造と中味液充填をワンステップで実現する技術を応用した新パッケージを採用する最新作化粧液「SHISEIDO オイデルミン エッセンスローション」
ビジネス拡大へメンズ市場に本格化
コロナ前の2018年に、「シャネル(CHANEL)」や「スリー(THREE)」などでメンズのメイクアップアイテムが登場し、男性の化粧品に対する見方が変化していく中で、コロナ禍でパソコン上での自分自身の表情を目の当たりにして、スキンケアはもちろん、整った眉を目指したアイブロウや肌の表面のカバーを意識したBBクリームなどへの関心の高まった。またK-popアイドルの台頭なども追い風となり、若年層の男性の化粧品に対する抵抗は薄れていった。その若年層をターゲットにした化粧品が大手化粧品メーカーから誕生した。
資生堂がアジアのZ世代をメインターゲットにしたメンズ向け新スキンケアブランド「サイドキック(SIDEKICK)」が6月にデビュー。資生堂からメンズブランドが誕生したのは、実に18年ぶりとなった。スキンケアアイテムを揃え、日本では資生堂ビューティ・スクエアで、中国ではオンラインで展開している。花王からは12月にZ世代男子向けたD2C新ブランド「アンリクス(UNLICS)」がデビューした。アンリクスは同社新入社員の「なぜ男子は、堂々と化粧直しができないのか」という言葉がきっかけで、男性の「美しくなりたい」という欲望を満たすようなブランドを構想し誕生した。第1弾としてメイクアップベースと化粧水を、第2弾は2023年1月に美容液とタオル状マスクが登場する。
資生堂「サイドキック」
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