「ケイスケヨシダ」2021年秋冬コレクション
Image by: FASHIONSNAP
デザイナー 吉田圭佑が手掛ける「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」が3月15日、「Rakuten Fashion Week TOKYO 2021 A/W」で2021年秋冬コレクションを発表した。自然光が差し込むワールド青山の会場には、紫にペイントされた机と椅子が並ぶ教室のような空間が出現。デビューから6年を迎えた今季、立ち上げ当初から掲げる「思春期」というテーマに、改めて向き合ったコレクションとなった。
■「思春期」や「若さ」に今の視点から向き合う
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ショー全体を通して浮かび上がるのは「学生っぽさ」。教室のような会場に登場したのは、チェック柄のプリーツスカートやハイソックス、ローファー、パーカ、ベージュカーディガンなど学生服を彷彿とさせるアイテムの数々だ。
デビュー時から掲げるブランドコンセプトは「明るいのか暗いのかわからない青春の空気と、そこにいる彼らの装い」だが、新荒川大橋下の河川敷で行った2021年春夏ショーで向き合い方に変化が生まれたという。「初期の頃にやっていた『半径5メートルの若さ』みたいなものから、シーズンを重ねるごとに表現として遠ざかっていた部分があった。しかし、河川敷でのショーをやったことで、今一度、自分の今の視点を持ってあの頃に立ち戻るのも良いのかも、と思うようになった」(吉田圭佑)。
紫に塗られた教室、ベートーヴェンのピアノソナタ「月光」のBGM、俯くような姿勢のモデル......と演出からは思春期の鬱々としたムードも感じられるが、根底にはデザイナーのポジティブな考えが潜んでいる。「いつも以上の過密なスケジュールによる追い込まれていく感じ、そして(社会全体的に)先が見えない現在の状況に、冴えなかった自分の学生時代に若干重なる部分があった。僕はファッションに興味を持ち明るくなっていった過去があるため、『冴えない姿』そのものが、これから前向きになっていく希望のメタファーとして使えるのではないか、と」。デビューから6年目にして、ブランド立ち上げ当初に強く打ち出していた「思春期」や「冴えない学生」っぽさを改めてフィーチャーしたコレクションとなっている。
また、今季表現したのは、思春期を生きる若者の「装い」ではなく「佇まい」だといい、2枚重ねのブルゾン、そして背中部分にカットが入り身体を通すことでドレスのように着られるロング丈のジャケット(普通のジャケットとして羽織ることも可能)といったアイテムが、「うつむく」シェイプを作り出す。
■コレクションタイトル「死んだ鳩のように」の意味は?
吉田のコレクション製作において重要なプロセスの一つが、リサーチを詰め込んだ『脳』を持って日常を過ごすこと、そしてそこで得た『気づき』をどう落とし込むか。今回は21年春夏の展示会終了(12月)から約3ヶ月という短期間でのショー開催となったため、いつも以上にインプットに割く時間が短かったという。
コレクションタイトル「like a dead pigeon(=死んだ鳩のように)」は、製作期間中のエピソードから。アトリエから帰宅した際、アパートの廊下で一羽の死んだ鳩を見かけ、翌日ドアを開けるとそこに鳩の姿はなく「猫か何かに持っていかれたのか」羽根だけが残っていた光景が、数日間頭から離れなかったという。限られた時間の中でそれが貴重な気づきだったことと、「Dead Pigeon」という言葉が「救いようのない人」をスラングで意味することも重なり、タイトルに決めた。鳩や羽根は、グラフィックとしてTシャツやジャケット、パーカ等に取り入れられている。
■注目は、アウターの上に重ねられた「カットソー」
注目のアイテムは、首元が歪んだ線を描くカットソー。ファーストルックのように素肌の上に一枚で着るほか、テーラードアイテムのようなかっちりとしたスタイリングの上に重ねる「外しアイテム」としても提案された。
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