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「機能をデザインし、ファッションになった」 ハップ・クロップに聞くノース・フェイスの60年

文・五十君花実

ケネス・ハップ・クロップ氏のポートレート

展覧会に合わせて来日したケネス・ハップ・クロップ氏

Image by: FASHIONSNAP

ケネス・ハップ・クロップ氏のポートレート

展覧会に合わせて来日したケネス・ハップ・クロップ氏

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ケネス・ハップ・クロップ氏のポートレート

展覧会に合わせて来日したケネス・ハップ・クロップ氏

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 ゴールドウインが、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE、以下TNF)」のブランド創業60周年に合わせて、東京・北青山の本社1階で展覧会を開催している。10月2日に開かれたレセプションには、業界関係者を中心に600人以上が詰めかけた。その会場でひときわ注目を集めていたのが、TNFの2代目オーナーであるケネス・ハップ・クロップ(Kenneth Hap Klopp)氏。1968年から20年にわたってブランドを率い、今日のTNFの礎を築いた人物であり、創業者の故ダグラス・トンプキンス(Douglas Tompkins)*氏と共にブランドを語る上で欠かせないレジェンドだ。レセプション会場でクロップ氏に即席インタビューを申し込むと、84歳とは思えない明瞭な口調で語ってくれた。

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*1966年に登山とスキーの店としてTNFをサンフランシスコで創業した人物。後にライフスタイルブランド「エスプリ(ESPRIT)」も立ち上げた。「パタゴニア(Patagonia)」創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)とは長年の親友で、共に自然保護活動に取り組み、南米パタゴニアの自然保護に生涯を捧げた。2015年、チリ南部でカヤック中に事故に遭い、72歳で死去。

開催中のTNF60周年記念の展覧会から。中央はブランドを代表するドーム型テント「オーバルインテンション」

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——60周年おめでとうございます。

ケネス・ハップ・クロップ(以下、ハップ): ええ、長い時間が経ちましたね。私のこの白髪を見てください。

——ハップさんがTNFを手掛けていた時代(1968〜88年)と現在を比べて、ブランドにとって変わらないものは何でしょうか?

ハップ: まず、ハーフドームのロゴ*は当時から変わっていません。もう一つ、ブランドの根底にある基本原則も変わっていません。私たちは機能的なものをデザインし、その結果、それがファッションになったということです。ファッショナブルであることを目的に、何かをデザインしたわけではありません。人々がその価値観を理解するまでには時間がかかりましたが、そうした考え方は今もブランドの中に息づいています。

 ポルシェの車にも似ています。ポルシェが最初に登場したとき、人々はそれを醜いとさえ思ったかもしれません。しかし、時が経つにつれて「形態は機能に従う」という考え方が理解され、ファッションも形態に従うようになったのです。

*米ヨセミテ国立公園にある巨大な花崗岩の岩山「ハーフドーム」をモチーフにしたロゴ。1971年にグラフィックデザイナーのデイビッド・アルコーン(David Alcorn)がデザインした。ハーフドームは、クライマーにとってロッククライミングの歴史を象徴する、世界的に有名な岩壁の一つ。

——「機能をデザインし、それがファッションになった」ということですが、結果的にファッションに近づきすぎることへの危機感はありませんか?

ハップ: いいえ。TNFが自らの存在理由に忠実であり続ける限り、問題はありません。私たちには、ブランドを貫く基本的なコンセプトがあります。一つは自然を保護すること。もう一つは、どんな環境下でも確実に機能する製品を作ることです。そして、そうした製品は長く支持され続けるでしょう。

 もし人々がロゴだけを見たり、ある一つの製品だけでTNFを判断したりするのであれば、ブランドの本質を理解することはできないでしょう。しかし、私たちが大切にしているコンセプト、つまり自然を守ること、決して機能を損なわない製品を作ること、細部にまでこだわることに目を向けてもらえれば、その価値は決して失われません。

開催中の展覧会の、創業初期のアーカイヴコーナーから

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——ゴールドウインとはどのような関係を築いてきましたか。ゴールドウインの渡辺貴生社長は「ハップから、ブランドとは“違いを作ること(make different)”だと学んだ」と話していました。

ハップ: 彼(渡辺社長)と一緒に仕事をしたことは、まさに革命的な経験でした。私たちは常に違いを作ることを目指していました。だからこそ、常識にとらわれないことに取り組む人々に魅力を感じていたんです。私たちが迎え入れたアスリートたちがまさにそうです。崖から飛び降りて滑降するスキーヤーなど、とんでもないことをしている人たちでしたから。あるいは、まったく新しい構造を生み出したバックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)*のような人もそうですね。

 そうしたすべての人々が、私たちにとって魅力的だったんです。ただし、私たちは単に他と違うことをするために、差別化を志したわけではありません。そうする機能的な理由があったからこそ、そうしたんです。

*米国の建築家、発明家、思想家。三角形を組み合わせた軽量かつ強固なドーム構造「ジオデシック・ドーム」の考案者。建築やデザインを通じて、限られた資源を効率的に活用する思想を提唱した。TNFはその理論を応用し、1975年に画期的なドーム型テント「オーバルインテンション」を発表。1976年の英国・カナダのパタゴニア遠征隊などで使用された。

——TNFが今後80年、100年と続くブランドであるために、何が必要だと考えますか?

ハップ: これまでの成功を見ていると、TNFやそのチームは今後も素晴らしい仕事をしていくだろうと期待しています。ただし、ブランドはこれからも少しずつ変化し続けなければなりません。

 私たちが大切にしてきた原則の一つは、自然に貢献すること。地球がますます脅威にさらされる中で、今後はそれがさらに重要になっていくでしょう。自然を保護するという考え方は、より幅広い製品や活動につながっていくはずです。例えば、自然公園を整備したり、自然の中に散策路を作ったりすることもそうです。登山やスキーといった、限られた活動のみが自然を身近に感じる手段ではありません。自然に対する理解や関心がより幅広いものになっていくと思います。

 ブランドとしては常に同じ原則を守り続ける必要があります。高い品質、破壊的なイノベーション、そしてトリプルボトムラインに等しくコミットし続けていくことです。トリプルボトムラインとは、企業として利益を生み出すこと、地球環境、そして従業員や地域社会の人々に対して、等しく責任を持つという考え方です。

最終更新日:

◾️「NEVER STOP EXPLORING EXHIBITION」
会場:ゴールドウイン本社1階イベントスペース
所在地:東京都港区北青山3-5-6 青朋ビル
会期:10月1日(木)~10月31日(土)
時間:11:00~19:00
入場:無料

文・五十君花実

Hanami Isogimi

FASHIONSNAP ディレクター

1983年愛知県出身、早稲田大学政治経済学部卒。繊研新聞記者、WWDJAPAN副編集長、編集委員を経て、25年10月から現職。山スキー、登山、ラン、SUPを愛するアウトドア派。ビジネスからクリエイション、ライフスタイルまで、多様な切り口でファッションを取材。音声、動画、コミュニティーなど、活字以外のアウトプットも模索中。

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