カラー 2023年春夏コレクションのバックステージ
IMAGE by: kolor
「カラー(kolor)」がパリのランウェイに帰ってきた。ルールに捉われず、常に新しい試みに目を向けているデザイナー阿部潤一にとって、パリでショーを開催するのは実に5年半ぶり。舞台裏を捉えた写真と阿部へのインタビューから、独創的なクリエイションを放ったショーを振り返る。
ブランドの変化とパンデミック
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「ファッションはクリエイティブな業界なのに、コレクションの形式はずっと変わらない。何がクリエイティブなのか」。
阿部が率いるカラーは2017年、変化の必要を感じてパリのランウェイショーを取りやめた。ショーのためのクリエイションになってしまっていた側面にも見切りをつけたかったという。その後もパリで展示会は続けつつ、シーズンごとに新しいアイデアを取り入れたヴィジュアルでの発表に切り替えた。
様々な試みを経て、再びパリのランウェイに戻ることを考え始めたのが2020年。その矢先にパンデミックが起こり、パリコレ自体もオンライン開催に。コレクション映像でパリコレの公式参加を果たしたが、翌2021年も渡仏できない状況は変わらなかった。ならば「今しかできないことを」と踏み切ったのが、2021年1月に開催した初の東京でのショー。翌シーズンには京急の電車内でのショーが話題を集め、学生らを招待するなど自国で発表することの意味を見出した。
コロナによって多くのブランドが通常とは異なる対応を余儀なくされたが、阿部は変化を前向きに捉え「普通のことができない制限のある中で、皆が試行錯誤したことはよかったのではないか」と振り返る。
5年半ぶりのパリコレ、進化するスタイル
そして迎えたのが、今シーズンのパリ・メンズファッションウィーク。公式スケジュール5日目の6月25日、パリ16区の現代美術館パレ・ド・トーキョー内のフロアをブランドを象徴する色であるブルーに染め、カラーのランウェイショーが行われた。無機質な空間に招待客が続々と来場し、熱気と期待感が徐々に高まっていく。
ファーストルックは、スリーブレスコートをレイヤードしたウィメンズ。素材・色・ディテールのミックスから、カラーならではのバランス感覚が見て取れる。続くメンズルックは「世界一薄い」という3レイヤーの素材をベースとしたアウターに、メッシュの半袖ブルゾンが絡み合うようにドッキング。モデルのウォーキングによってふわりと軽やかになびき、軽快なBGMとともに余韻を残す。
Video by FASHIONSNAP
アウターのプラスチックのような質感、トロピカルウールと見紛うナイロン素材、色落ちしないデニムといったテキスタイルにもギミックが隠れている。ナイロンジャケットの片腕からドレッシーな刺繍とチュールを覗かせたり、異なるテクスチャーの斬新な組み合わせはカラーならでは。
ジャケットスタイルやスポーツウェアなど、コレクションのベースはオーセンティック。しかし片側だけが壊れていたり、中心がずれていたりと複雑な仕掛けが盛り込まれ、遊びを感じさせる。それらを多様なモデルが着用してパリのランウェイを歩いた時、カラーの進化と強さを印象付けた。
Video by FASHIONSNAP
「シンプルなものを作りたい」
カラーのコレクションには、特定のタイトルやテーマは付けられていない。しかしショーの後、阿部の中での近年の探求として話したのは、意外にも「シンプルなものを作りたい」ということだった。
ファッションの歴史を辿れば、1990年代に"ミニマリズムの旗手"と称されたヘムルート・ラングやジル・サンダーなど、その道を極めたファッションデザイナーが存在する。しかし阿部が目指しているのは、新しい時代に向けたシンプルだが強い服だ。その意味を紐解いていくと、服作りの本質が見えてきた。
時間をかけて作られたものを、そう感じさせない軽やかさ。一部が崩れていても成り立つデザイン。一つのアイテムで完成するスタイル。極限まで削ぎ落としても決して強さを失わないバランス——。プレーンなTシャツでも男女で微妙にパターンを変えるように、見えない部分にも惜しみなくテクニックやアイデアを注ぎ込んでいく。
「ゴールのないテーマなのかもしれません。まだまだ完成したとは思っていないので」。
阿部とカラーの探求はこれから先も続きそうだ。
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