Art 若き写真家の肖像

【連載】若き写真家の肖像 -小林健太-

 ファッションの世界でも活躍する若き写真家を紹介する連載「若き写真家の肖像」。3人目は「クロマ(chloma)」の2015−16年秋冬コレクションの撮影を手がけ、「ノリコナカザト(NORIKONAKAZATO)」の中里周子企画展を行った23歳の写真家・小林健太。

 

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−神奈川県の川崎市出身

横浜にある高校に通ってました。でも全然友達できなくて(笑)。それが嫌で美術予備校に通ったんですが、そこでは友だちもできて楽しく過ごせました。

−ファインアートを志す

そうですね。でもファインアートかデザインかどちらに進むか悩んでいた高3の夏休みに、クリエイターなど男女約30人が暮らす「渋家(シブハウス)」のパーティーに行くことがあって。「家」自体がアート作品だって言ってて、そのカオスな空間にとても刺激を受けましたね。それでアートの道が面白そうだなと思い、そのまま絵画で東京造形大学に進学しました。そしてそのあと渋家にしばらく住みました。

−東京造形大学では絵画専攻領域の中で広域表現を学ぶ

言ってしまえばなんでもやっていいコースです。映像や写真、立体、パフォーマンスなど色々なことができる環境でした。僕は絵で入学したんですが、入学してからはほとんど絵をやらず変な立体つくったり大学に行かずに渋家で企画打ったりと色々と実験してましたね。周りからは不真面目な学生に見えていたかもしれないですね(笑)。

−写真に目覚めたきっかけは?

渋家で写真家の石田祐規に出会い感銘を受け、写真に傾注していきました。

−渋家のコミュニティから徐々に仕事を増やしていった

そうですね。今年の3月に大学を卒業したんですが、在学中から渋家周りの人たちから仕事をもらっていました。撮影だけではなく、フライヤー作ったりして、27,000円だった渋家の運営費をなんとか払っていました。

−使用しているカメラは?

Nicon D800、D60、Powershot G9、iPhone6 plusなどです。

−写真の魅力は?

一つは衝動的なところですかね。そもそも写真を初めた当初はスナップをしていたのですが、それもアメリカのユースカルチャーやアンダーグラウンドシーンをとらえたスナップに影響されたからで。あとは、結構写真ってフィジカルというか、スポーツみたいなところがあってその人の身体性が写真に表現されてくるところが面白いなと考えています。

−カメラは身体性を延長するツール?

そうですね。ストレートに上手い写真はボディの柔らかさというか、そういうのがにじみ出てる気がします。本当に身体が柔らかいかどうかはわからないですが、身のこなしやコミュニケーションの取り方が上手いんだろうなと思っています。

−ヒッピーカルチャーが好き

最初に会ったとき石田祐規は、渋家で彼女でも彼氏でもない男女が一緒に裸でお風呂に入っている様子を撮影していたりしていて、とても面白いなと感じました。彼は渋家の初期メンバーで、6年くらいずっとハウスの様子を撮っているんですが、僕の解釈では、渋家という作品はライアン・マッギンレーのプロジェクトの、もっと複雑なバージョンみたいなものだと思っていて。ライアンのとは違って洞窟やトランポリンが都市アクセスの中央にあって、そこに集まった人は裸になって作業をしたりしながら、数ヶ月から数年の長い期間を一緒に過ごし、みんなで考えあってその洞窟を運営しているんです。そこには若者の悩みや、セックスの匂いがあって、しかもアーティストがひとりじゃないのでとにかくたくさんのハプニングが起きるんです。

−写真で何を表現している?

ベースにあるのは「画像(イメージ)に触れる」ということですね。写真の面白いところは、イメージに変換されることだと思っていて、例えば現実のコップと写真のコップというのは決定的に違うわけですよね。そのイメージというのはデジタルだったらピクセルやドットの集合なんですが、それをイメージとして別のものに変化させたいという思いがあります。それこそ写真はパラレルワールドというか、ある光景が分岐して別のイメージを生むパラレルな世界を可能にする媒体だと捉えています。僕の作品じゃなくても、Googleの画像検索でもどんどん複製されていて、劣化したり拡張子が変わったりして変化しています。そういったイメージのズレというのがすごく面白いことだなと思っていて、僕は作品でそれを掘り下げていきたいと考えています。

−撮影したコップは虚構?

どちらが現実でどっちが虚構みたいなそういう対立構造とは考えていないですが、違うものとして扱っていきたいですね。もう少しコアな部分の話をすると、そもそも僕達は皆同じ景色を見てると思っていると考えがちですが、そう思う理由を写真が作っている面があると思っていて。写真に写っているのが真実の世界だと錯覚するみたいに、みんなが同じ本当の世界を見ていると考えがちですけど、たとえば色弱だったり、思想や宗教が違えば同じものを見ても全然違います。写真だったらフィルムとデジタルでも差異はありますし、紙面でみるかウェブで見てるかでも変わってくる。こうしたイメージの歪みを重ねあわせることでしか本当の世界を見ることはできないのではないかとの考えています。

−つまり差異を明確化することで本質を見つける

シェアハウスに興味があるのも、歪みの複合で世界を見ることに興味があるからで。複数の人で何かを作っていると、お互い違うものを見ているんだなということに気付かされ、重なった部分の集合体が作品として立ち現われてくる。その部分が本質的なところに近いんじゃないかと思っています。

−今年中里周子と企画展「ISLAND IS ISLANDS」をはじめ様々な展示を開催

初のプリント展示となった「THE EXPOSED #7」(2014)を皮切りに、様々なイベントに参加しました。使い捨てカメラや、iPhone、スクリーンショットなど、撮影デバイスのバリエーションを持たせり、UVプリントやVRなど出力メディアもいろいろ試したりしています。あと立体作品として人と同じぐらいの大きさのZINEを作るプロジェクト「MMGGZZNN(メガジン)」というものをやっていて。色々なアーティストとコラボレーションして作っています。

−今年は中国でも展覧会を開催。

展示した場所がアモイ市のJimeiっていう新興都市でした。埋め立てて、新しく島を作りそこに新しくビル作っている土地で、まだ人はあんまり住んでないんですけど、来年ぐらいに地下鉄も通るようで。そこにアモイの名誉市民になってるロンロンさんという、写真家兼三影堂という印刷会社の社長の方が企画した国際写真フェスティバルに招待されました。後藤繁雄さんがキュレーターで、大森克己さん、横田大輔さん、細倉真弓さん、川島崇志さん、山崎雄策さんも参加していました。

−イギリスやオランダでも作品展示を行うなど世界で活躍している

作品が売れたらそう思えるかもしれないんですけど全然売れていないので(笑)。バイトができない人間なので、お金には大変苦労しています。

−ファッション雑誌の仕事はしていない?

やりたいですね。今写真でトップを走ってるヴォルフガング・ティルマンスはもともとi-D MAGAZINEでスナップを載せたりしながら、現代美術のトップにいて。絵画は、デザインとファインで全然文脈が異なりますが、写真はそもそもの始まりから横断していて、そういうところも面白いなと思っているんです。だから可能性を広げられる気がする仕事はなんでもやりたいと思っています。

−動画需要が高まっているが

興味ありますね。写真家の中でも映像やる人も結構いるので。写真の編集作業に合わせてノイズを生成する映像と音のパフォーマンスを原宿にあるVACANTで行ったのですが、その記録映像は公開しています。

SOUND & VISION Performance by Kenta Cobayashi and Yuuki Takada from Newfave on Vimeo.

−写真界に対する不満は?

これを言うと周りの人を敵に回してしまうかもしれないんですが、若いのにオールドスタイルなひとが多いなという印象を持っています。それこそ「フィルムの質感いいよね」などと言う人が多くて。その気持はわかりますし、そういうプレイヤーがいることも必要だと思うのですが、「多すぎるな」というのが正直な感想です。その路線だと、どうしても大御所がいい仕事を持っていって、若手は安い仕事だけ請け負うという状況が続いてしまいますから。もう少し変化球を投げるプレイヤーがいてもいいなと思っていて、「俺が新しい写真を作るんだ!」と言う若い人が増えると面白くなると思います。

−小林さんが新しい写真を作る?

せっかく未熟なんだから新しいことやらないとつまんないと思っていて。いろんなことにどんどん挑戦していきたいですね。

−作品をモノとして形に残すことについて

先ほどの話にも戻りますがモノもひとつの変換ですからね。変換に興味があるので、モノとして形に残すことも大事だと思っています。

−今後の予定について

来春にNEWFAVEから写真集を出版予定です。あと恵比寿 G/P galleryで2月27日〜3月27日まで個展を開催します。

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Kenta Cobayashi(小林健太)


1992年神奈川県生まれ。東京で同世代のアーティストらと共同生活をしながら、そこで撮影した写真を編集しブログに掲載している。巨大なZINEをコラボレーションしながら制作するMMGGZZNNプロジェクト主宰。主なグループ展に、「ISLAND IS ISLANDS」(G/P gallery Shinonome、東京、2015年)、「The Devil May Care」(Noorderlicht Photogallery、フローニンゲン、オランダ、2015年)、「New Japanese Photography」(DOOMED GALLERY、ロンドン、2015年)、「THE EXPOSED #7」(G/P gallery Shinonome、東京、2014年)など。キュレーションを手がけた展覧会に「PICTURE-PARTY 2」(TAV Gallery、東京、2014)、「MEGA MAX GIGA GREAT ZERO ZILLION NEBULA NOVA」(TANA Gallery Bookshelf、東京、2013)など。

HP

= Self-Portrait For FASHIONSNAP =

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VOL.1 若き写真家の肖像 -草野庸子-
VOL.2 若き写真家の肖像 -小見山峻-
VOL.3 若き写真家の肖像 -小林健太-
VOL.4 若き写真家の肖像 -高木美佑-
VOL.5 若き写真家の肖像 -嶌村吉祥丸-
VOL.6 若き写真家の肖像 -松永つぐみ-
VOL.7 若き写真家の肖像 -トヤマタクロウ-
VOL.8 若き写真家の肖像 -Takako Noel-
VOL.9 若き写真家の肖像 -Yusaku Aoki-
VOL.10 若き写真家の肖像 - Tseng Yen Lan -
VOL.11 若き写真家の肖像 - 八木 咲 -

(聞き手:芳之内史也)

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