ファッションの世界でも活躍する若き写真家を紹介する連載「若き写真家の肖像」。10人目は「コトハヨコザワ(kotohayokozawa)」の撮影を担当した24歳の写真家ソウ・ヤン・ラン(Tseng Yen Lan)。

- 生まれは?
台湾です。シングルマザーの家庭で育ったのですが、母もずっと仕事をしていたので家で1人ぼっちで過ごすことが多くて。中学生の頃はいじめられていて友達がいませんでした。
- 小さい頃は何をしていたんですか?
主にパソコンです。ネット上に友達を作ってチャットをしたりして遊んでいました。年上の人が多くて、色々な知識を得ることができことは良かったと思います。
-その後服飾学校に進学
高校、大学と服飾学校に通いました。パターンや縫製などの技術面を重視する学校だったのですが、細かな作業が苦手で19歳のときにファッションの才能が自分には無いと思うようになり大学を辞めました。その後すぐデジタルカメラを買って、写真にハマっていったんです。
-なぜカメラを買おうと思ったんですか?
自分でも理由が良くわからなくて。実は父がカメラマンなのですが、父との記憶はほとんどないので影響されたということはないと思います。ファッションのことで悩んでいたので、救いを求めるために購入したということなのかもしれません。学生時代は触れもしませんでしたが、家に父の壊れたフィルムカメラがずっと置いてあって。デジタルカメラを買ってから半年後ぐらいにそのフィルムカメラを修理して使うようになり、作品としての写真に興味を持つようになりました。
-初めて撮影した作品は?
従姉妹のヌードです。当時から女性の体にしか興味が持てなくて、今でも女性ばかりを撮っています。そもそも女性の体への興味は、いじめられていたことが関係しているんだと思っていて。いじめの理由は私がとても太っていたからで、大学時代には体重を落としたんですがそれでも自分の体に自信が持てませんでした。だから私の表現の根底には美しい身体に対する憧れがあるんです。
-どういうときに美を感じますか?
自然体であることに美を感じます。キャリアをスタートさせた当初はモデルのような体型の女性をずっと撮っていたんですが、一度ぽっちゃり体型の女性を撮影したことを境に、個性的な体も美しいと感じるようになりました。それ以降は周りの友達も撮るようになって、体型が違う女性からそれぞれの美を発見することができるようになって。特に最近は個性的な顔や身体の女性が好きで、直近の撮影ではぽっちゃり体型の学生にモデルをお願いしました。
-男性は撮影したことないんですか?
一度だけ男性を撮影したことはあります。事前に男性を撮ると聞かされていなかったのでかなりストレスだったんですが、モデルの人が同性愛者だと知って徐々に撮れるようになりました。ただ自分の作品で男性を撮りたいと思ったことはまだないですね。
−男性が嫌い?
嫌いではないですよ。恋愛対象は男性です(笑)。
-撮影中はどういうことを意識しますか?
カメラ越しだとモデルが鑑賞の対象として見えてくるというか、生命あるものを撮っているという感覚が無くなってしまうんです。そこは改善したい課題だと考えていて、コミュニケーションを取りながらの撮影を心がけるようにしています。特にヌード撮影のときはたくさん会話をするように意識しています。
-カメラは何を作っていますか?
ニコンのF4を使っています。
-写真のどんなところが好きですか?
新しい場面や空間を作っているというクリエーティブな感覚にドキドキするところです。あとは瞬間瞬間のアイデアが記録されているという感じが好きです。
-なぜ日本に来ようと思ったんですか?
台湾の写真業界は商業的な写真が多くて、作品として評価されないことが多いんです。日本は台湾に比べるとアートとして評価される土壌があると思っていたので、通用するのかどうか挑戦してみたいと思って来ました。2年前に日本に来て日本語学校に通い、卒業してからフリーで活動しています。今後はニューヨークやロンドンなどの都市での活動も考えています。
-日本へ来て作風に変化はありましたか?
台湾時代は持っていなかったマクロレンズを購入したことが大きいです。身体と同じように目も魅力的に感じるので、マクロレンズを使用して寄りの写真を撮ることが増えましたね。
-印象に残っている撮影を教えてください
2つあります。1つは日本で初めて撮影した「RED」という作品です。ビジネスを考えずに撮影したので、モデルやヘアメイク、アシスタントなどすごくお金がかかりました(笑)。夜の歩道橋で、ライトをたくさん使う自分の中では大掛かりな撮影で印象に残っています。2つ目は雑誌の仕事で撮影した「PRIVATE」という作品です。映像の撮影をしたことに加え、和室で撮影できたことが印象的でした。モデルさんの顔も、男性のような個性的な顔つきですごく魅力的でしたね。
-今後の目標は?
12月に写真集を出版する予定です。あと恐らく台湾になると思いますが、個展を開催できればと思っています。
Tseng Yen Lan(ソウ・ヤン・ラン)
1993年生まれ。台湾台中市出身。19歳からキャリアをスタートし、身近な女の子をフィルムで記録し始める。"若い女性たちの美しさ"が中心のテーマ。
= Self-Portrait For FASHIONSNAP =
■VOL.1 若き写真家の肖像 -草野庸子-
■VOL.2 若き写真家の肖像 -小見山峻-
■VOL.3 若き写真家の肖像 -小林健太-
■VOL.4 若き写真家の肖像 -高木美佑-
■VOL.5 若き写真家の肖像 -嶌村吉祥丸-
■VOL.6 若き写真家の肖像 -松永つぐみ-
■VOL.7 若き写真家の肖像 -トヤマタクロウ-
■VOL.8 若き写真家の肖像 -Takako Noel-
■VOL.9 若き写真家の肖像 -Yusaku Aoki-
■VOL.10 若き写真家の肖像 - Tseng Yen Lan -
■VOL.11 若き写真家の肖像 - 八木 咲 -