日本ロレアルのジェローム・ブリュア社長
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日本ロレアル社長に聞くサステナビリティ 「売上を拡大しながら、製造でのCO2削減も実現している」

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 化粧品業界でグローバル売上No.1を走り続けるロレアルグループは、2013年からサステナビリティプログラムを始動し環境・社会問題に取り組んできた。2020年を一つの区切りに、日本ロレアルにおいては、女性管理職比率52%達成や、ゴミ・廃棄物の削減、全拠点で100%再生エネルギーに切り替え完了など、着実にグローバル企業として社会的責任における存在感も高まっている。日本ロレアルのジェローム・ブリュア社長は「ロレアルのパーパスは人と地球を美しくすること。サステナビリティとビジネスは両立できる」と語る。2021年10月31日をもって社長職から退くが、約6年の社長在任中、サステナビリティプログラムを推進し結果を残してきた。ブリュア社長に日本ロレアルが推進するSDGsの現状と2030年を次の指標とするこれからについて聞いた。

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ーロレアルグループがSDGsを推進する意義とは?

 それが「パーパス」だからだ。パーパスは、我々は世界の美を創造するリーダーであるだけでなく、地球、社会全体をもっと美しくしたいという理念がある。

ー日本ロレアルはSDGsの17の目標のうち、5番 ジェンダー平等を実現しよう、12番 つくる責任・つかう責任、13番 気候変動に具体的な対策を、17番 パートナーシップで目標を達成しよう、の4つの項目に注目し、①CO2削減、②廃棄物削減、③女性活躍支援に注力する。これらに注力する理由は?

 まず、気候変動に対する取り組みと女性のエンパワメントはロレアルのグローバルフレームとして課題解決への貢献のために投資をしている。またロレアルは事業を展開する各国における課題解決への貢献も目指している。シンプルにSDGsの17の項目で日本のランキングが低いのが、これらとなる。日本の重要課題であり、ロレアルとしても見逃すことができない。

ーCO2の削減では各社様々な意見がある。例えば、飛行機を使った輸送の場合、ガラス瓶よりもプラスティックの方が飛行機からのCO2排出量を抑えられるという意見もある。日本ロレアルのCO2削減に対する考えとそれに対する行動は?

 我々は2020年に第二世代のサステナビリティプログラムとして、ロレアル・フォー・ザ・フューチャー・プロジェクトをスタートしたのだが、これは2030年に向けて「SBT(科学的根拠に基づく目標)」を決定したというものだ。国際的なSDGsの2030年までの目標が、地球の温度上昇を1.5度以下に抑えることで、ロレアルの温室効果ガス削減目標も「1.5℃目標」としている。プラスティックを削減する、輸送の排気ガスを削減するなど、そういったことを分離して考えるのではなく、全容を見て何が地球にとって大事なのか。そのために我々が何をすべきかを考えている。例えば、我々は15年以上前に「劇的にCO2の排出量を削減する」ことを掲げ、輸送における排気ガスを12%削減してきた。今のフォーカスは、できる限り早い段階で、100%カーボンニュートラル企業に変わることを目指している。日本は、グリーン電力を全拠点ですでに導入済みで、工場における旧式ボイラーを切り替えることにより来年度中にカーボンニュートラルを達成見込みだ。それには100万ユーロを超える投資をしている。製品輸入に伴うCO2排出の削減や営業車や出張時のCO2排出削減などももちろん実行している。また、地球にインパクトを与えない、産業排出の炭素ガスを再利用した化粧品用プラスティックを開発し、将来的に活用していくことも視野に入れている。

紙製チューブ
紙製チューブ
洗髪時の水の使用量を80%削減するシャワーヘッド
洗髪時の水の使用量を80%削減するシャワーヘッド

ーゴミ・廃棄物削減では取引先との協力や画期的な製品開発など様々に推進する。

 まずロレアルはほとんど全ての製品において科学的根拠に基づく革新的な製品(リサイクルプラスティック容器や化粧品の紙製チューブ、洗髪時の水の使用量を80%削減できるサロン向けシャンプー台などを含む)を開発している。また、日本では今年に入り、テラサイクルと包括的パートナーシップ契約を結び、各ブランドによる容器無料回収を実施している。できるだけ早く多くの製品をリサイクルできるように整え、廃棄を減らし、過剰は生産をしないことを進めたい。

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ー女性のエンパワメントにおいては、1990年代からユネスコと共同で女性科学者の活躍に対する支援を行なっており、また2000年代に入ってからはシングルマザーの支援も行なっている。社内の女性活躍支援も進んでいるのか?

 現在、日本における社員の男女比はほぼ半々で、女性管理職比率が52%に達した。役員の40%も女性が占めている。ただ、女性比率が高いだけでなく、役員・管理職レベルにおいても、男女比のバランスが取れていることが重要だ。ロレアルは、ジェンダー、人種、宗教など全てにおいて、ダイバーシティを尊重する文化を持っている。一般的に女性のキャリアアップは難しいとされる中で、性別を問わず皆に平等で、バランスの取れた職場環境を推進している。育児参加は男性にとっての権利でもあり、最近では育休を取る男性社員も増えてきている。また、ブランド単位でも女性エンパワメントの活動を推進している。「ロレアル パリ(L'Oreal Paris)」がスタンドアッププログラムを通じて、ストリートハラスメントに立ち向かう人を応援したり、「ランコム(LANCÔME)」は女性のデジタルリテラシー向上のための日本独自プロジェクトを立ち上げたりしている。この先10年間は、女性のエンパワメントは強くなるだろう。

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テラサイクルと包括的パートナーシップを締結し行う、ラ ロッシュ ポゼ」の容器回収ボックス
テラサイクルと包括的パートナーシップを締結し行う、ラ ロッシュ ポゼ」の容器回収ボックス

ーサステナビリティの推進には社員の意識改革、さらには消費者の意識改革も必要だ。

 ボトムアップで社員一人ひとりからアイデアを募って活動に参加してもらうようしたり、サステナビリティについての社員教育に注力したりしている。自分事化することでモチベーションがアップする。例えば、コロナ渦で困窮を窮める女性たちへの寄付、オンラインでファミリーセールを開催し、廃棄削減へ貢献することなども社員からのアイデアのひとつ。ディスプレイをプラスティックから段ボールにするというアイデアも採用した。一方消費者には、まず使用済み容器を回収箱に持ってきてもらうことで、リサイクルの取り組みに協力してもらいたい。また他国でテストしている段階だが、ロレアルの製品の環境負荷に関する情報を共有する仕組みを構築しようと考えている。2030年までにグループ全体で、全製品に対して導入するという目標ではあるが、早い段階で日本でも提供できるようにしたい。

ー今、世界中でサステナブルビジネスを推進する動き、それに伴う投資も活発だ。これを機にサステナビリティの実践を目指す企業が増えてきたが、ビジネスとの両立に悩む企業も多い。ロレアルグループは2020年度、全事業本部で2ケタ成長で増収増益を果たした。日本ロレアルも堅調に推移する。

 従業員のみならず、ビジネスパートナーに対して、サステナビリティとビジネスは両立できることを伝えていかなければいけない。我々は売上を拡大しながら、製品の製造におけるCO2の削減に成功している。店頭什器をプラスチックから再生段ボールへ切り替える取組みが、当社において、また業界全体でも進みつつあるが、それにより利益率や売上が下がると決めつけるべきではないだろう。短期的に見ると無理だと思えることでも、将来を見据えた時に企業やブランドが努力することが重要であり、最新の技術の活用、共通した理念を持つことで、達成できうることだ。例えば、「キールズ(Kiehl’s)」ではここ数年、サステナビリティアクション「フューチャー メイド ベター」を推進している。使用済み容器の回収やショッピングバッグの有料化、ギフティングでのプラスティック不使用などを行なっているのだが、結果として売上も伸びている。消費者もサステナビリティに対する哲学や精神を持っている人が増えている中で、何もしないブランドよりも、志を示しているブランドに支持が集まり売上も拡大していくのではないだろうか。日本の美容市場は成熟しており、さらに、コロナ禍の影響を受けている。そのため、グローバル規模でのロレアルグループの成長に比べると、日本ロレアルは厳しい状況ではあるが、売上、利益ともに伸ばしている。日本のラグジュアリー化粧品業界における外資系企業としては初めて1位になり全体でも3位につけている。

ーラグジュアリーからマス、サロンまで幅広いマーケットの商材を持つ。どういった商材が好調か?

 ラグジュアリー事業部は、先述のとおり外資系トップシェアを得た。また、アクティブ コスメティクス事業部が展開する「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」は、市場のなかで最も成功しているブランドのひとつになっている。コロナ渦により健康に対する興味関心が高まり、敏感肌用の製品や臨床皮膚科医からの推奨を受けている製品が消費者に人気なことが要因だ。またプロフェッショナル プロダクツ事業本部では、ヘアカラー剤「イノア」を筆頭に拡大している。また消費者向けのヘアケア製品も堅調で、集中ケア用のトリートメントなど、これまで大きく動く商材ではなかったが、ここへきて人気が出てきており、これもコロナによる新しい生活習慣に対応した動きだろう。

ー今後強化するカテゴリーは?

 全ての事業を強化しようと取り組んでいる。それ以外の選択肢はない。スキンケアへの消費者ニーズは高まっている。キールズやランコム、昨年12月に傘下に入った「タカミ(TAKAMI)」も好調だ。タカミのサブスクリプションモデルについての知見を取り入れ、さらに強固にしていきたい。またご存知の通り、現状ではメイクアイテムは苦戦を強いられているが、ただ欧米などではメイクアップの市場は拡大の傾向にあり、コロナを経て日本でもニーズが高まると予想する。そのほか、安心・安全、健康に対する重要性がさらに高まっており、高品質でハイパフォーマンスの製品に対する需要が大きいロレアルは科学を重要視しており、R&Iにも大きな投資を行っている。R&Iチームの持つ技術を活かし、安全性、サステナビリティの面でも優れ、かつ高い効果を実感できる製品やサービスを提供していきたい。

ー最後にブリュア社長のサステナブルについて、何か個人的に取り組んでいることは?

 ヨーロッパから日本に初めて来たとき、プラスティックの消費の多さに衝撃を受けた。来日してからはスーパーでのプラスティック製ショッピングバッグを断るようにしている。またロレアルでは、勤務日を1日使いサステナブルな活動に従事する「シチズンデー」という取り組みを行っている。私自身も川の近くでゴミ拾いをする清掃活動や高齢者ケアホームでエアコンを掃除するなどのお手伝いなどへの参加もしてきた。一人ひとりの貢献は小さいかもしれないが、日本ロレアル全体として取り組むことで、大きなインパクトを与えることができ、より良い社会を実現するための貢献ができると考えている。

(聞き手:福崎明子)

ジェローム・ブリュア:1967年生まれ、パリ出身。89年、EDHEC経営大学院修了。経営学修士号取得。1991年、仏ロレアル本社に入社。1999年、メイベリン ニューヨーク米国本部のインターナショナルマーケティングマネージャー就任。日本ロレアルのコンシューマープロダクツ事業本部副社長兼事業本部長などを歴任後、米国メイベリン ニューヨーク国際事業本部のグローバルブランドプレジデントを経て、2010年にロレアル ドイツ社長就任。2015年から現職、2021年10月退任予定。
ジェローム・ブリュア:1967年生まれ、パリ出身。89年、EDHEC経営大学院修了。経営学修士号取得。1991年、仏ロレアル本社に入社。1999年、メイベリン ニューヨーク米国本部のインターナショナルマーケティングマネージャー就任。日本ロレアルのコンシューマープロダクツ事業本部副社長兼事業本部長などを歴任後、米国メイベリン ニューヨーク国際事業本部のグローバルブランドプレジデントを経て、2010年にロレアル ドイツ社長就任。2015年から現職、2021年10月退任予定。

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