イタリアならではの上質な素材使いやテーラリングなどマチュアなイメージが強かったミラノだが、近年はアバンギャルドなプレゼンテーションが増加傾向。SNSの影響も大きく、これまでのファッションショーの概念を打ち破るような新たな潮流が生まれている。2024年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウィークで話題を集めた気鋭ブランド「スンネイ(SUNNEI)」と「アヴァヴァヴ(AVAVAV)」のランウェイを振り返る。
モデルの脳内がダダ漏れのスンネイ
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「スンネイ」は2015年に設立。フォトグラファーの元アシスタントという経歴を持つロリス・メッシーナ(Loris Messina)と、セレクトショップでバイイングを経験したシモーネ・リッツォ(Simone Rizzo)が独学でデザインを手掛ける。スンネイというブランド名は、ボニーM(Boney M.)の曲「Sunny」のつづりをアレンジした造語だ。彼らの特徴はなんといっても、大胆なパフォーマンスとスパイスの効いたクリエイション。2023年秋冬シーズンは、モデルがランウェイから客席へとダイブし、次々とクラウドサーフィンする演出。続く2024年春夏シーズンは、客席に数字入りのパドルが配られ、観客が各ルックを採点していく演出が大きな話題をさらった。
今シーズンのショーでは、サウンドトラックの代わりにモデルたちの脳内を表現したナレーションが流れ、無表情でウォーキングする姿とのギャップが笑いを誘った。初めてのランウェイに緊張しているモデル、靴が脱げそうになっているモデル、失恋したモデルなど、31人のモノローグが各キャラクターを引き立たせ、画一的なショーの在り方に疑問を投げ掛ける。
Image by: SUNNEI
また、キャットウォークの代わりにフロアを覆っていたのは、デザインブランド「CCタピス(cc-tapis)」とのコラボレーションによって作られた巨大なラグ。モデルの何人かはストライプのラグ生地で作られた服を着用しており、これらのルックはスナップボタンを外すと平面の形となり、ラグの一部に戻るようになっている。フィナーレではモデルたちがラグの上に集合して座り、観客たちがその中で自由に撮影をし始めた。「ここではすべてが許され、束縛されず、奨励される。視界に境界線はなく、偏見もない」とコレクションノートに記されていたとおり、シームレスな世界観がランウェイと観客を温かく結び付けた。
生ごみが飛び交うアヴァヴァヴのランウェイ
「アヴァヴァヴ」は、リンダ・フリベリ(Linda Friberg )とアダム・フリベリ(Adam Friberg)によって2017年に設立された。2020年からクリエイティブディレクターを務めるベアテ・カールソン(Beate Karlsson)は、セントラル・セント・マーティン(Central Saint Martins)でファッションを学んだ後、「コーチ(COACH)」でアクセサリーデザイナーを務めた経験を持つ。アヴァヴァヴのショーもまた、前代未聞な試みが毎シーズン話題をさらっている。2024年春夏シーズンは「No Time to Design, No Time to Explain(デザインする時間も説明する時間もない)」と題したショーで、ファッション業界や現代社会の目まぐるしいスピード感やストレスを表現。ポストイットやガムテープで作られた服や、涙でマスカラが流れたようなメイクがSNS上で大きく注目された。
今シーズンは、インターネット上の誹謗中傷に対する風刺をランウェイで表現。会場のデジタルサイネージには、ブランドへのヘイトコメントが映し出され、モデルたちにはバナナの皮や缶ジュースといった生ごみが観客席から次々と投げつけられる(ゲストにはゴム手袋が配布され、ごみ投げに参加するよう推奨されていた)。中世の魔女狩りへの言及として、ルックには中世風の十字架のようなネクタイやテーラードスーツがスタイリングされ、ゴシック要素を感じさせる。ドレスはごみによって汚されていくが、“自己尊重の象徴”を演じるモデルたちは一切ひるまず、表情を変えない。
フィナーレに登場したデザイナーの顔面にはなんとケーキが投げつけられ、本人はダブルピースをして去っていった。その大胆かつシニカルな演出には、ブランドの信念と社会へのアンチテーゼがにじんでいる。
Image by: Hiroyuki Ozawa(FASHIONSNAP)
Video by AVAVAV
いずれもハイブランドの客層とは異なり、若いクリエイターたちが個性あふれる装いで参加し、独自のコミュニティを形成しているのも印象的。彼らのカルチャーや時代を反映したコンセプチュアルなショーは、ライブ感と活気にあふれている。ブランドと観客たちの距離感をぐっと縮める“参加型イベントとしてのファッションショー”は、これからも大いに支持を集めそうだ。
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