
Image by: FASHIONSNAP
歴史的な背景を持つ、ヴィンテージ古着。製造された年代が古いものや希少性が高いものが一般的に珍重されていますが、ヴィンテージの楽しみ方はそれだけではありません。この連載では、さまざまな視点でヴィンテージ古着の楽しみ方が味わえるアイテムを、国内最大規模のヴィンテージの祭典を主催するVCM代表 十倍直昭が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に紹介。第58回は「ポロ ラルフ ローレン(Polo Ralph Lauren)」総柄セットアップ編。
2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
ラルフがヴィンテージ愛好家から人気を集める理由
ADVERTISING
世界的な人気ブランドである、ポロ ラルフ ローレン、通称「ラルフ」。当連載ではこれまでオープンカラーシャツ、 レザースイングトップ、 キューバシャツを紹介してきました。
そして今回ピックアップしたのが、総柄のセットアップです。ラルフはヴィンテージ愛好家から高い評価を受けているのですが、その理由のひとつがヴィンテージアイテムからの秀逸なサンプリングです。ただ単純にヴィンテージのデザインや仕様を再現するだけでなく、的確なアレンジを加えることで、ヴィンテージの良さを踏まえつつモダンな印象も持ち合わせたアイテムに生まれ変わらせることに、非常に長けているのです。

Image by: FASHIONSNAP
例えば、このセットアップは老舗アロハシャツのメーカーとして名高い「デューク カハナモク(DUKE KAHANAMOKU)」をはじめとする、マニア垂涎のヴィンテージアロハシャツをサンプリングしているのだと思われます。ヴィンテージではこのように同じ柄のシャツとパンツをセットで見つけることはかなり難しいでしょうが、ラルフならばヴィンテージと遜色ないデザインと雰囲気でありながら、気軽に着られるアイテムをセットアップで出してくれるのです。

Image by: FASHIONSNAP
ちなみにこちらのセットアップは、1990年代初頭に「ポロ スポーツ(POLO SPORTS)」というラインから発売されました。当時、同ブランドのデザインを手掛けていたのはマイケル・タピア(Michael Tapia)で、スポーツをはじめとするアメリカのカルチャーをモチーフにした、ポップなデザインのアイテムを数多く展開していました。

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP
続いて紹介するのはポロ ラルフ ローレンの1990年代のアイテムで、この柄は「ヘミングウェイ」と呼ばれています。

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP
ヘミングウェイとはもちろん、「老人と海」でノーベル文学賞を受賞したアメリカの文豪、アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)のこと。釣りをはじめとするアウトドアライフを楽しんだヘミングウェイを彷彿とさせる、ルアーや浮きなどのフィッシングモチーフが特徴で、ラルフのなかでも非常に評価が高い逸品です。スポーツやフィッシング、ハンティングなどのジャンルに特化した蒐集家も多数存在していることも、ブランドの奥深さの証左と言えるでしょう。
ギャングやヒップホップアーティストまで、幅広い「ラルフ」の魅力とは
最後に紹介するのはラルフの歴史を語る上で欠かせない、「スタジアムコレクション」のセットアップです。

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP
同コレクションは1992年のバルセロナオリンピックに合わせて発表されたものだったのですが、1920〜30年代のアメリカのスポーツウェアからインスピレーションを受けたデザインに、意外な人々が反応しました。それは、当時ニューヨーク・ブルックリンで活動していたストリートギャンググループの「ローライフ(LO LIFE)」です。スタジアムコレクションのカラフルでキャッチーなデザインはニューヨークのストリートで彼らの存在を誇示するのに好都合だったらしく、彼らは全身をスタジアムコレクションのアイテムで着飾って、ニューヨークを闊歩していたそうです。さらに、ローライフに共鳴するヒップホップミュージシャンたちも着用するようになったために、スタジアムコレクションはストリートカルチャーの文脈でも愛される存在となりました。ラルフは現在もランウェイショーを行っています。格調高いイメージがあるにも関わらず、今回紹介したようなストリートの匂いも持ち合わせている、稀有なブランドなんです。
ちなみに、今回ピックアップしたパンツには全てライナーが付いています。ビーチでリゾートウェアとして着用することを想定したアイテムだったのでしょう。中央のヘミングウェイ柄のアイテムは、前所有者がライナーを切り取った跡があります。おそらく、この個体を着ていた方は、街着として活用していたのでしょうね。こういったアイテム自体の歴史に思いを馳せることも、古着の醍醐味のひとつです。

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP

Image by: FASHIONSNAP
今回のアイテムは、東京・祐天寺のヴィンテージショップ「ビッグアップルストア(BIG APPLE STORE)」からお借りしました。今回はセットアップでの提案でしたが、シャツとパンツどちらかだけでも十分存在感があって格好良いアイテムです。ラルフにはこのほかにも様々な柄のアイテムがあります。スポーツや乗り物、植物や風景など、非常にバラエティが豊富なので、ぜひ古着屋さんでチェックしてみてください。
編集:山田耕史 語り:十倍直昭
最終更新日:
vol.1 カーハート × ステューシー編
vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編
vol.3 エルメス ヘラクレス編
vol.4 リーバイス ギャラクティックウォッシュデニムジャケット編
vol.5 ポロ ラルフ ローレン オープンカラーシャツ編
vol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
vol.7 シュプリーム ゴンズジャケット編
vol.8 ソニック・ユースTシャツ編
vol.9 エルメス アクロバット編
vol.10 ナイキ クライマフィット ジャケット 2ndタイプ編
vol.11 カルバン・クライン「オブセッション」Tシャツ編
vol.12 マルタン・マルジェラ ペンキデニムジャケット編
vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編
vol.14 エル・エル・ビーン ボート・アンド・トート編
vol.15 エルメス クレッシェンド編
vol.16 オンブレチェックシャツ編
vol.17 エルメス アレア編
vol.18 スカジャン編
vol.19 カルチャーポスター編
vol.20 エルメス グレンデシャン編
vol.21 アディダス レザートラックスーツ編
vol.22 コム デ ギャルソン オム シャツ編
vol.23 ハーゲンダッツ編
vol.24 エルメス トルサード編
vol.25 フレンチフレーム編
vol.26 ペンドルトン ボードシャツ編
vol.27 BDUブラック357編
vol.28 アニマル柄シャツ編
vol.29 フェードスウェット編
vol.30 モヘアカーディガン編
vol.31 ウエスタンジャケット編
vol.32 リーバイス「後染め」ブラックデニム編
vol.33 エルメス オスモズ編
vol.34 ラングラー デニムジャケット編
vol.35 ASAT トライバルカモフラージュ編
vol.36 リーバイス アクションスラックス編
vol.37 レインボーレイクジャケット編
vol.38 パタゴニア ドリズラージャケット編
vol.39 ポロ ラルフ ローレン レザースイングトップ編
vol.40 L-2Bフライトジャケット編
vol.41 エルメス ブックルセリエ編
vol.42 アメリカ軍ヘリンボーンツイルジャケット編
vol.43 パタゴニア パフボールベスト編
vol.44 リーバイス コーデュロイジャケット編
vol.45 ステットソン ハット編
vol.46 1930〜50sカバーオール編
vol.47 1940〜60sシャンブレーシャツ編
vol.48 プリントネルシャツ編
vol.49 キャントバステム編
vol.50 ポロ ラルフ ローレン キューバシャツ編
vol.51 リーバイス 70505 ビッグE編
vol.52 M-35 デニムプルオーバー編
vol.53 ヒステリックグラマー スカジャン編
vol.54 リー ウエスターナー編
vol.55 リーバイス「先染め」ブラックデニム編
vol.56 エルメス シェーヌダンクルTPM編
vol.57 オールドステューシー Tシャツ編
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【令和のマストバイヴィンテージ】の過去記事
RELATED ARTICLE