

FASHIONSNAPでは、ファッションを中心とした国内の次世代クリエイターを特集中。4本目となる今回は、現代の音楽シーンとそれを取り巻くポップカルチャーを、独自の視点で捉えた文章や音声コンテンツで知られる音楽ライターのつやちゃんに、音楽性だけでなくファッションの個性も光る気鋭のミュージシャンを、ジャンルレスに推薦・寄稿してもらった。
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音楽とファッションは、いつの時代も密接に結びついている。パンクロックにおけるライダース、ヒップホップのバギーなシルエット、グランジのネルシャツ。音楽から生まれたコミュニティにはそれぞれを象徴する装いがあり、ファッションとは、どんな文化に属しているのかを伝える記号でもあった。しかし、今の若いミュージシャンたちを見ると、その関係性は変化している。「このジャンルだから、この服」という定型のスタイルよりも、目を引くのは一人一人のユニークな組み合わせだ。Y2Kやギャル、アウトドア、モード、アニメ、さらに古い時代のスタイルまで、異なる時代や地域の文化を横断し、自分の感覚で選び取っていく感性に満ちている。
だからこそ、今、ミュージシャンの服を見るのが面白い。どんなアイテムを選び、何と何を結びつけるのか。その選択と組み合わせに、その人自身のアイデンティティや美意識が表れる。ファッションは、ジャンルやシーンへの所属を示すものから、よりパーソナルな美学を映し出すものへと広がっているのだ。本コラムでは、そんな次世代アーティストの中から、特に注目したい6名を紹介しよう。
目次
iVy


Image by: iVy
iVy(アイビー)は、fuki(Vo/Gt)とpupu(Vo/Key)による、2023年結成のオルタナティブポップユニット。ドリームポップやシューゲイズなどを横断するバンドサウンドとともに、二人が作り上げる夢のような世界観が注目を集めている。服飾系の専門学校出身ということもあり、衣装をはじめ、MVやアートワーク、ステージの演出、マーチャンダイズに至るまで、一貫した美学のもとで作り上げているのが特徴だ。淡い色彩のドレスなどのはかなげでドリーミーな装いには、どこか不穏で人工的な感触も漂い、音楽が持つ幻想的なムードとも呼応する。なかでも象徴的なのが「白」の使い方。白いドレスやレースは、無垢なイメージをまといながら、人形や天使、幽霊のような非現実的な身体を浮かび上がらせる。iVyにとってファッションとは、音楽から生まれた世界観を身体にまで反映するためのものなのだろう。音、服、映像、グラフィック、空間までをひとつの美学でつなぎ、「iVyの世界」を形にしている。
sheidA


Image by: sheidA
LAで生まれ、NYや東京など多様な環境で育ったシンガーソングライター、sheidA(シェイダ)。ヒップホップやR&B、エレクトロニックミュージックを横断しながら、アニメやオタクカルチャーからの影響を音楽へと落とし込む一方、ヴィンテージショップによるオリジナルブランド「ユーフォリア(Euphoria)」*のモデルを務めるなど、ファッションアイコンとしても注目されている。ローライズやミニ丈、厚底、ルーズソックス、鮮やかなピンクといったY2Kギャルの要素を軸に、キャラクターを思わせるヘアやメイク、アニメ的なモチーフを大胆にミックス。イラストレーター 村田蓮爾の世界観などからの影響を語っており、アニメやクラブカルチャーなど自身の好きなものを詰め込み、現在進行形の感性でパーソナルなスタイルへと更新しているのがポイントだ。既存のカルチャーを自由に組み替え、自分だけのキャラクターへと変換していくという編集感覚にこそ、sheidAの美学が表れている。
*2025年9月に千駄ヶ谷にオープンしたヴィンテージショップ。「ギャル」と「ラグジュアリー」をミックスした唯一無二の世界観で、ファッション業界人にもファンが多い。
DOGGIE


Image by: DOGGIE
東京を拠点にアーティストやソングライター、プロデューサーとして活動するDOGGIE(ドギー)。楽曲では「J-EDM」の提示を試みるなど、過去の様式を意識的に現在の感覚でアップデートしている。そんなサウンドと呼応するように、ファッションから感じられるのは2000年代後半〜2010年代初頭のギャル男的なムード。長めのレイヤーヘアや細身のパンツ、腰回りのアクセサリー、大ぶりなブーツなど、当時を思わせる要素を取り入れながら、現行のオルタナティブな感性で軽やかに更新している。興味深いのは、ファッションと音楽の双方で、少し前まで「古い」とされていた時代の感覚を積極的に拾い直していること。かつてユースカルチャーを彩ったスタイルを、単なるノスタルジーに収めることなく、現在進行形の美学へと変換している。
REJAY


Image by: REJAY
2024年にデビューした北海道・ニセコ出身のシンガー、REJAY(リジェ)。フォークやインディロック、オルタナティブなどを横断しながら、温かみのある歌声と繊細なギターサウンドで、日常にすっと溶け込むような親密な音楽を鳴らしている。そんな彼女のファッションもまた、肩の力が抜けていて自然体。ゆったりとしたスウェットやパンツ、古着を思わせる風合い、落ち着いた色使いなど、一見すると何気ない装いながら、シルエットや素材の選び方にはさりげなく個性がにじむ。ファッションはその人の美意識が自然と漏れ出すものと言えるが、REJAYは服と音楽の双方からそれらを通貫する一つの感性が伝わってくる──そのたたずまいが彼女ならではの魅力だ。
Hina(スーパー登山部)


Image by: スーパー登山部
2023年に愛知で結成された5人組バンド スーパー登山部のボーカルであるHina(ヒナ)。ロックやジャズ、フォークなどにルーツを持つ音楽性と、透明感のある伸びやかな歌声で注目を集めている。その名の通り、バンド活動と並行してメンバーで実際に山へ登り、標高2832メートルの白馬山荘でライブを行うなど、「山 × 音楽」をコンセプトに活動。Hinaのファッションにも、そんなライフスタイルが表れている。山ではシェルジャケットなど機能的なアウトドアウェアを身につける一方、ステージでは柔らかなシルエットや軽やかな素材の服を選び、異なる装いにも自然体のたたずまいが感じられる。面白いのは、登山が単なるバンドのコンセプトにとどまらず、実際の活動内容から音楽性、装いまでを一つにつないでいること。何を着るかだけでなく、何をして、どう生きるか。そんなライフスタイルまでを映し出しているのが、Hinaのファッションだ。
heykazma


Image by: heykazma
8月31日に新曲「blueberry ft. 北村蕗」をリリースするheykazma(ヘイカズマ)は、2010年生まれ、弱冠16歳のアーティストだ。幼少期から音楽に親しみ、9歳でDJ活動を開始した。学業と並行して、自主企画のオーガナイズやメディアでのコラム執筆、さらにモデルとして「VOGUE'S Best Dressed 2025」に選出されるなど、さまざまな分野でマルチな才能を発揮している。そんなheykazmaの装いは、特定の年代やジャンルでは簡単に括れない。古今東西の膨大なファッションのデータベースから、そのとき惹かれるものを直感的に選び、自由に組み合わせていくようなスタイルが特徴だ。その感覚は音楽にも通じており、好奇心の赴くまま世界中のアンダーグラウンドミュージックを軽快に行き来する。時代やジャンルを超えて自在に選び取り、組み合わせるというキュレーション感覚そのものが、heykazmaの美学になっている。
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