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「タナカ ダイスケ」5年目の現在地 ものづくりの美学、G-DRAGON衣装制作のきっかけも

聞き手&文平原麻菜実

 FASHIONSNAPでは、ファッション領域を中心に日々さまざまな新世代のつくり手を取材している。そして気がつくのは、いつの時代も新たな才能を持つ若者がカルチャーの担い手であるということ。そこで、今日から始まる「次世代クリエイター」特集では、ファッションとその周縁を取り巻くアップカミングなクリエイターたちにフォーカスしていく。

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 まずは、設立5年以下で独自の世界観を持ち、今後の活躍に注目が寄せられるファッションデザイナー3人を紹介。トップバッターに選んだのは「タナカ ダイスケ(tanakadaisuke)」を手掛ける田中大資だ。設立5年でショーの開催や国内ファッションアワードの受賞、パリでの展示会の実施など堅実な歩みを進めている。卸先は国内16店舗、海外5店舗と、ビジネス面はまだまだ伸び代があるが、繊細な刺繍やビジューを散りばめた装飾は舞台映えが抜群で、BIGBANGのG-DRAGONを筆頭にK-POPや著名アーティストがステージ衣装に次々と起用。エンタメの世界からも熱視線を集め存在感を放つ。特定の誰かのための衣装制作と、ブランドとして多くの人に届けるクリエイションの両輪が相乗効果を生み出し独自路線を走る。

 大人になってもときめきを忘れずにファッションを楽しむ心に寄り添い、混沌とした毎日を生きるための“おまじない”のような服でコアなファンを増やすタナカ ダイスケ。5年の節目を迎え、変わらないことと変わったこと、10年目に向けたブランドらしさとの向き合い方を聞いた。

■田中大資|Daisuke Tanaka
1992年大阪府生まれ。大阪文化服装学院(現・ヴォートレイル ファッション アカデミー)ファッション・クリエイター学科ニットコース在学中に、第89回装苑賞のファイナリストに選出。卒業後はドメスティックコレクションブランドに入社し、独立後に刺繍アーティストとして活動した。かねてより親交があった長谷部啓介が手掛けるアパレルOEM企業パッチワークスの自社コンテンツ第1弾として、2021年秋冬シーズンに「タナカ ダイスケ」をスタート。デビュー3シーズン目に初のランウェイショーを開催し、翌年第42回毎日ファッション大賞「新人賞」ノミネートに加え、「TOKYO FASHION AWARD 2024」を受賞G-DRAGONアンジュルム、BLACKPINKのジェニー(JENNIE)、中島健人など、人気アーティストの衣装制作も多数手掛けている。

細部から全体に広げるデザインプロセス

——田中さんはデザイン画を描かずに、装飾のパーツやディテールといった細部から全体を作り上げるそうですね。設立当初からずっと変わらないのでしょうか。

 基本的には変わりません。ビーズやビジューといった繊細なパーツとの出合いがクリエイションの核になっています。細かい装飾のデザインが起点になって、視点を引きながら、どんな素材、色と組み合わせたら最も美しく輝かせられるのか、ということを考えています。

——“美しい輝き”は文字通り以外の意味もあるのでしょうか。

 ファッションでも何でも、"圧倒的に美しいもの"から得られる栄養があると思っていて。それを糧に、自分は人生を進めることができる。僕はそういう人に向かって服を作り続けたいんです。

——膨大なパーツの中から、運命の「原石」を見つけることが各シーズンのスタートになる。

 そうですね。暇さえあれば日暮里や浅草橋の問屋に行きますし、韓国もよく訪れます。今度、中国の広州に行く予定。その日の気分によっても心が動くものが変わるので、同じ店に何度行っても新鮮な出合いを探します。素材をみていると、閃くことがあり、自分がこの世で一番この素材を生かせられる、と信じてしまう瞬間があります。まさに「原石」探しですね。

——そうやって見つけたビジューやビーズ、スパンコールなどから、実際どのように毎シーズンのコレクションを作っていくんですか?

 このパーツの魅力を引き出し、最も輝いて見えるモチーフや形は何かと考えていきます。最近は意識的に自分の中での方程式を崩さないといけないと思っていて、同じお題でも表現のバリエーションを複数考えてみるようにしています。工数に差をつけるというか。これからブランドが成長するために、“らしさ”は保ちながら挑戦しないと広がらないんだろうなと。

——設立当初と比べて、クリエイションに対する考えが変わったポイントは?

 初めは誰が着るかより、とにかく自分が作りたいという願望を服に詰め込んでいました。それはそれで純粋な服作りだったと思っていますが、今は「タナカ ダイスケに興味がある人に、こんなファッションも楽しんでみて欲しい」と着る人を思い浮かべるようになりました。ファンタジーの出発点が自分から他者に移ってきたような感覚です。

 ブランドのコンセプト「おまじないをかけたような服で、自分の中にいる、まだ見ぬ自分と出会えますように」は、好きなものを身につけて自信を持ち存分にファッションを楽しんでほしいという思いから掲げたものでしたが、今その気持ちがより強く具現化できているんじゃないかなと感じています。

——タナカ ダイスケの服はロマンティックな華やかさだけでなく、ダークではかないムードもあるのが魅力だと思います。

 大前提として、何歳になっても可愛いもの、美しいものをまといたいという気持ちを肯定したい。でも人生を重ねていくうちに、単一的なデザインだと奥行きがなく、似合う人物像の幅が狭くなります。ときめくような華やかさにどんな要素を掛け合わせたら、リアルな日常になじむだろうかというのは重点的に考えている部分ですね。ありきたりかもしれませんが、人間は多面的だからこそ魅力的だし、僕の創造の源でもあるアイドルやDIVA(歌姫)たちにも、危うさがあるから惹かれる——そういう感覚がシーズンのキーヴィジュアルやショーの雰囲気に出てくるんだと思います。

ブランド初のショーとなった2022年秋冬コレクションは、強さともろさ、透明感と影といった相反する要素を表現しようと思ったという

Image by: tanakadaisuke

メンズ拡大も変わらぬ精神

——4シーズンぶりにショーを行った2026年秋冬コレクション「Hitting the Star」では、ドラマチックなドレスやローブが目を引いた一方で、スウェットやシャツといった日常的なアイテムも多く、ブランドの幅が広がったように見えました。

 「憧れのスター」と言いますが、アイドルやDIVAは手が届かない存在として強く輝いていますよね。僕自身も彼らのようになりたいと思うけれど真似したいわけではなくて、精神性やエネルギーを糧にして生きたい、ということだと思っていて。だからこそ、着なくても見るだけで心が掴まれるようなドレスアップ向けのものと、着るだけでスッと立ち上がれるような毎日を支えてくれるもの——そのどちらも作りたかったんです。

2026年秋冬のショー「Hitting the Star」から

Image by: FASHIONSNAP

——ショーの会場は約100年の歴史を持つ三越劇場。歌舞伎界の巨匠や銀幕のスターたちによる公演が行われてきたこの場所で発表することにも、意味があったのでしょうか。

 会場はショーディレクターの酒井さん*に提案していただいて即決しました。三越劇場のように、人の手で作られた装飾や美しさへの狂気じみた情熱が生み出したものを"浴びる"と、心が燃えるんですよね。ただ今回は、この会場の格式に気圧されることなく、着る人の日常になじむデザインのバランスを取るのが難しかったです。

 ショーをするシーズンは、「会場に対して、こんなドレスを作らなければ!」とショーピースが自然と湧いてくる。手が動くので作ってしまう。そんなアイテムが意外と受注会でオーダーが入る。そういうことがあると素直に励みになります。
*国内のデザイナーから信頼が厚く、さまざまなショーの演出を手掛ける「VISIONS AND PARADOX」の酒井文章。

2026年秋冬のランウェイショーの様子

フェザージャケットは着てみると見た目以上に軽い

2026年秋冬シーズンに発表した手作業で羽根を取り付けたジャケットは、受注会でファンが購入

——2026年秋冬から本格的にメンズの提案を強化していますね。

 立ち上げから2年目くらいに装飾を施したスーツを作ってSNSに上げてみたら、スタイリストの方からリースの依頼(衣装としての貸し出し)が殺到したんです。自分が作りたかっただけなのですが、こういうムードの服をまとったメンズに魅力を感じる人が意外と多いんだと気がついて。そこからメンズも着られるアイテムを徐々に増やして、メンズモデルを起用したルックも多くなりました。ここ数年、国内外の卸先からメンズサイズのリクエストが目立ってきたこともあり、このタイミングで思い切って拡充しようと。

 でも、デザインするときは特にメンズ・ウィメンズの区別はしていなくて、「ユニセックス」と言うのもしっくりこないんです。刺繍やビジューのついたジャケットを男性が着ると幻想的でデコラティブな強さが際立つし、女性が着るとロマンティックでもあり、アーマーのようなハードな印象にも見える。結局は着る人の個性によって服の印象は変わるので、楽しむ幅のあるアイテムが生まれるといいなと思っています。

2026年秋冬のランウェイショーに登場したメンズルック

「DIVA」は服作りのエンジン

——2026年秋冬コレクションは特に目立っていましたが、タナカ ダイスケのインスピレーションを語る上で「DIVA」という言葉が印象的に出てきます。

 僕にとってのDIVAは、単なる「歌姫」以上にライブ会場の空気を完全に掌握するエネルギーを持っている人たちのこと。ビヨンセ(Beyoncé)、リアーナ(Rihanna)、ケイティ・ペリー(Katy Perry)、レディー・ガガ(Lady Gaga)、ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)……名前を挙げたらキリがないですが、とにかく衣装にしろレディ・トゥ・ウェアにしろ、自分の服作りのエンジンのような欠かせない存在。DIVAたちは表現に妥協しないからこそパワーを発揮していると思っていて、自分もそういう突き詰めたクリエイションを届けなければと奮い立たされます。

——憧れのDIVAを、自分の手で着飾る機会が衣装制作ですよね。

 スタイリストさんやアートディレクターの方と話していると、外から見たブランドの個性を知れるのが新鮮なんです。例えばG-DRAGONさんの衣装でお世話になったスタイリストのジウン(GEEEUN)さんには、色使いや装飾性を魅力的に感じてもらえてるんだと思います。日本のアーティストの方だと、モノトーンにクリスタルやビジューを装飾したスーツなどの依頼が多いです。衣装の場合は着る人が特定されているのがレディ・トゥ・ウェアを製作する時との明白な違いですが、その中でどう自分らしさを潜ませながら、本人にしか似合わないデザインに仕上げ、尚且つ観客を"沸かせる"ものができるか、と燃えてきます。

——G-DRAGONの衣装は過去3回制作していますが、最初のきっかけは?

 韓国のセレクトショップに卸していたジャケットをたまたまジウンさんが見つけて、ブランドを知ってくれたそうです。実際に衣装を作ったのは2025年のワールドツアーが最初ですね。ジャケットは2025年秋冬シーズンのカーディガンをベースに、本人の着用を想定してボリューム感や装飾を整え、ジャケットにパワーアップさせました。王冠を作ったことはありませんでしたが、ヘッドアクセサリーはよく作っていたので、依頼を受けた時は「自分なら絶対いいものができる」という謎の自信がありました。

実際に衣装で提供したジャケット

Image by: tanakadaisuke

2025年秋冬シーズンに登場したカーディガン

Image by: tanakadaisuke

実際に衣装で提供したジャケット(左)と2025年秋冬シーズンに登場したカーディガン(右)
Image by: tanakadaisuke

——衣装制作とコレクションが影響し合うことはありますか?

 時々あります。衣装の時は複数のパターンを提案することがありますが、そうなると採用されたもの以外はボツということになる。自分としては傑作と思っていたり、もっとタナカ ダイスケらしくしたら日常的にも楽しめるんじゃないかと感じて、次のコレクションで出してみることはあります。



衣装用に制作した王冠(赤)と、その後の2026年秋冬シーズンに登場した王冠(シルバー)。衣装とコレクションのアイデアは良いバランスで相補的になっているという
Image by: tanakadaisuke



2026年8月にBIGBANGデビュー20周年記で公開されたデジタルシングル「BiiiG」のMVで着用されたジャケットとパンツ。羽をスパンコールやクリスタルで施し、BIGBANGのシルエットモチーフや「太陽」を意味するハングルをあしらった
Image by: tanakadaisuke

素朴で純粋な可愛いものへの憧れ

——今年は設立5周年を記念して、表参道ヒルズでポップアップ「Star Haven」を開催。店名に込めた意味を教えてください。

 「Star Haven」は「星の安息地」や「星たちの避難所」という意味です。星はタナカ ダイスケのアイコンモチーフのひとつで、これまでビーズやビジュー、スパンコールのほか刺繍やプリントなど多様な方法で表現してきました。2026年秋冬のシーズンテーマ(Hitting the Star)にも入っていて、いろいろなアイテムに落とし込んでいます。5年という節目でブランドらしさを改めて提示したかったというのもありますが、同時にここを一区切りとして、次へ進むためにも一度出し切ろうと思ったんです。

 ポップアップの会場も、これまでの軌跡を辿りながら今シーズンへと繋がるような空間を設計。店内の至る所に、僕が収集した星モチーフのアンティーク品を散りばめ、併設したエキシビションでは週替わりで各シーズンを象徴するルックを展示し、肌でブランドの世界に浸れる仕掛けを追求しました。

◼️tanakadaisuke LIMITED STORE「Star Haven」開催概要
期間:2026年8月21日(金)〜9月27日(日)
会場:表参道ヒルズ本館 地下1階 HILLS BOX
所在地:渋谷区神宮前4−12-10
時間:11:00〜20:00

ショーウィンドウのドレスアーカイヴは毎週変わる

Image by: ©mitograph

——将来的に実店舗をオープンする計画もありますか?

 将来の夢のひとつです。ただ、会社(パッチワークス)には「店をやるなら相当お金がかかりますよ」と伝えてあります。服のデザインで追求している刺繍や細かい装飾の世界観をお店規模でも作り込みたいです。今回のポップアップは、お客さんに「いつかタナカ ダイスケのお店が見たい」と期待してもらうきっかけにもなれば、という気持ちで企画しました。



星のモチーフは幼少期に好きだった「美少女戦士セーラームーン」や「キキララ(リトルツインスターズ)」に登場していたため、自然と愛着が湧くという。取材前に新調したというネイルも星柄

服そのものに一目惚れしてもらえるように

——田中さん自身はものづくりに対して情熱があり、刺繍作家や職人をリスペクトしていると感じています。ブランドを成長させることで、ものづくの背景や職人の仕事にスポットを当てる意図もあるのでしょうか。

 たくさんの工場や職人の方に支えられているのは重々承知していますが、製作にどれだけ時間がかかったか、どんなテクニックが詰まっているのかといった情報を発信していくことには、慎重でいたいと思っています。何百時間かけて作ったものでも、手に取った人が魅了されるかどうかは一瞬で決まる。強いクリエイションは言葉で補わなくてもそれだけで人を惹きつける力があると信じてるし、だからこそ服そのものに一目惚れしてもらえるようなものを生み出すのが僕の仕事なんだろうなと。

 とはいえ、アトリエの職人さんやスタッフさんたちがいなければ、当たり前だけれどブランドは成り立たない。同志のような気持ちで、コレクションの完成時や、著名人の着用など良いことはすぐにみんなに共有して、一緒に喜びを分かち合うようにしています。

ラッフル、レース、ビーズ装飾などで立体的なドレスのディテール

額縁のようなタグのデザインは創業当初から変わらない

——物価高やウルトラファストファッションの台頭、そもそもファッションに対する熱量が下がっていることなどでデザイナーズブランドにとって簡単な時代ではありません。田中さんは生まれ変わってもファッションデザイナーをやっていると思いますか。

 ファッションかは分かりませんが、もし来世でビジネスを何も気にしなくて良いとしたら、ただ作りたいものを作って、販売もせず物撮りだけで満足するかもしれないです。自分の手で、自分の好きなものが生まれる瞬間の快感が、たぶん人より多いんでしょうね。

——最後に、今後の目標や夢を教えてください。

 本当に「夢」みたいなことで言えば、今まで衣装を担当したり、タナカ ダイスケの着用歴があるアーティストを集めたフェスが見てみたいです。アイドル、アーティスト、バンドなど年齢も性別も国籍もかなり幅広くてカオスな集まりかと思いきや、きっとどこかでブランドの世界観に通ずるところがあると思うので。

 より現実的なことを語るなら、若手の世代からもっとファッション業界全体で盛り上げられたらなと思っています。一つのブランドだけが光っていても弱くて、各所でムーブメントが起こらないと伝播していきません。フェスではないにしても、僕は結構エンタメが得意なブランドだと思っているので、良い形で貢献できる形はないかなと考えています。

 ブランドだけのことでいうと、今はこれまでの自分らしさに固執せず、そう遠くないうちに新しいタナカ ダイスケを確立させたいです。

最終更新日:

■タナカ ダイスケ:公式サイト

聞き手&文・平原麻菜実

Manami Hirahara

FASHIONSNAP 編集記者

埼玉県出身。横浜国立大学教育人間科学部人間文化課程卒業後、レコオーランドに入社。国内若手ブランド、国内メーカー、百貨店などの担当を経て、2020年にビューティチームの立ち上げに携わる。ポッドキャストやシューティング、海外コスメレビュー、フレグランス、トップ取材など幅広い観点でファッションとビューティの親和性を探る企画を進行。2025年9月より再びファッションチームに所属。映画、お笑い、ドラマ、K-POP......エンタメ中毒で万年寝不足気味。ラジオはANN派。

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