
左から森下リョウジ、モハメド・アズハリ・アフメド、モネ
Image by: FASHIONSNAP

左から森下リョウジ、モハメド・アズハリ・アフメド、モネ
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次のファッションシーンを作るのは、デザイナーだけではない。どんな服を選び、どう見せるか。独自の感性で新たなスタイルを提案するショップもまた、新しい才能や価値観が広がっていくきっかけを作る存在だ。
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そこでFASHIONSNAPの「次世代クリエイター」特集の2本目では、20代でそれぞれショップを立ち上げた「スタジオラボ404ドットコム(studiolab404.com)」(以下、スタジオラボ)のモネと、「ディソナンス(DISSONANCE)」の森下リョウジ、モハメド・アズハリ・アフメド(Mohamed Azhari Ahmed)の鼎談を実施。スタジオラボは、デッドストックと国内外のデザイナーズブランド、オリジナルアイテムを独自の視点で提案。一方のディソナンスは、国内外のデザイナーズブランドのアーカイヴを軸に、オリジナルレーベルの販売やヴィジュアル制作、「エイチ ビューティー&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」の古着コーナー「H_VINTAGE」のキュレーションなどを手掛けている。異なるアプローチで店を作る彼らは、今のファッションをどう見て、何を面白いと感じているのか。20代で店を始めた理由から、セレクトの基準、同世代への意識、そしてこれから作りたい景色まで、同世代だからこその率直な会話を記録した。
目次
キーワードは“スピードスター”? 20代の店の始め方
⎯⎯本日はお忙しい中ディソナンス店舗にお集まりいただき、ありがとうございます。みなさん面識はありましたか?
モネ:そうですね。2人のことは知ってましたけど、ちゃんと話すのは多分今日が初めて。でも実は昨日、下見も兼ねてここにきました。今日遅刻したらあかんなと思って、場所を確認しに(笑)。
モハメド・アズハリ・アフメド(以下、モハメド):え、昨日来てくれたんですか? 全然知らなかった(笑)。嬉しい、ありがとうございます。
森下リョウジ(以下、森下):スタッフから「試着もせずにさらっとオリジナルブランド、ニュートラルのトップスを買っていった」って聞きました。さすがすぎる。
モネ:いやいや(笑)。クロップド丈がかわいかったし、薄手のメリノウールで使いやすいし、これは買いでしょって思って。接客してくれたスタッフも商品のことをちゃんと説明してくれて、めっちゃ喋ってくれましたよ。
モハメド・森下:よかった。ちゃんと接客してた(笑)。

モネがリアルバイしたニュートラルのトップス
⎯⎯みなさん20代で自分たちのショップを立ち上げていますが、そもそもファッションを仕事にしようと思ったきっかけは?
森下:僕は、唯一飽きなかったのがファッションだったからです。ほかのことは続かなかったけど、ファッションだけはずっと好き。だから「これがやりたい」というより、「ほかができなくて最後に残ったもの」みたいな感じで。スタートはそういう消極的な動機だったような気がします。
モネ:分かるわ。消去法みたいなね。
森下:そうそう。もともとアパレル会社員だったんですけど、毎週同じ時間に起きて、同じ場所に行って、上司に言われた仕事をする、みたいな生活が自分には向いていなくて。それで会社を辞めて、スタイリストのアシスタントを始めたんです。そこからファッションを通じていろんな人と出会って、気づけば仕事も人間関係もほとんどファッションを通じて広がっていて。今の僕からファッションを全部抜いたら、友達も一から探さないといけないくらい(笑)。それくらい、自分にとって大きな存在になっています。
モネ:面白いな。私は、ファッションって仕事の選択肢がめっちゃ多いと思ったのが大きいかも。ひとつがダメでも、そこで得たものを別の仕事に応用できる。あと、何かを自分で生み出そうとしたときに、比較的自分の力で形にしやすい業界だとも思っていて。例えばアプリを一から作ろうとしたら専門的な技術もかなりのお金も必要だけど、ファッションなら、もちろんお金は必要だけど、センスと頭とコミュニケーション能力があれば、自分でできることが結構ある。横に広げていけるから、「この世界でなら自分でいろいろできるな」と思ったんですよね。
モハメド:もともとモデルの仕事をしていたので、僕は2人とはちょっと順番が違って。キャリアをスタートした当初は、ファッションがめちゃくちゃ好きだったわけではないし、自己肯定感もそんなに高くなかったんです。でも、撮影でいろんな服を着せてもらううちに、「あ、これ意外と似合うな」と思える瞬間が出てきた。それで少しずつ自信がついて、自分でも似合う服を探して買うようになって。気づいたらファッションの沼にハマっていました。
——スタジオラボは2021年12月に、ディソナンスは2022年10月にオープン。20代でお店を出そうと決めた経緯を教えてください。
モハメド:僕らは最初から店をやろうと思っていたわけじゃないんです。もともとは2人でファッションのウェブマガジンを作ろうとしていました。当時、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」がデジタルジャーナル「イシュー 01(Issue 01)」を始めた頃で、僕自身も大学でウェブデザインを勉強していたので、「自分たちでもこういうメディアを作れないかな」と思って、リョウジ君を誘ったんです。
森下:その頃ちょうど僕は会社を辞めて、スタイリストを目指していました。モハメドとは以前から一緒に撮影したり、遊んだりする仲だったので、「じゃあやってみよう」と。そこからウェブマガジン用に服を集めて、見よう見まねでヴィジュアルを作り始めました。
モハメド:ただ、これが全然うまくいかなくて(笑)。「ウェブマガジンをやっていくのは難しそうだけど、集めた服はどうする?」となって、「じゃあ店を作って売るか」と。そうしたら、リョウジ君が次の日にはもう物件を探し始めてました。
モネ:次の日? 早すぎる(笑)。
モハメド:彼、スピードスターなんですよ(笑)。僕は逆にかなり慎重派なので、彼が先に走って、僕が「ちょっと待って、ここ足りてないよ」と後ろから拾っていく。結果的に、そのバランスがうまくハマっているんだと思います。
ウェブマガジン自体は挫折したんですけど、そこでやりたかったことは、今の店のヴィジュアル制作にもつながっているんですよね。形は変わったけど、やりたかったことはちゃんと残っているというか。モネさんはどうだったんですか?

ディソナンス店舗外観。開業資金には2人の自己資金を充て、中目黒への移転を機に法人化。日本政策金融公庫から融資を受けた
モネ:流れでみたいな部分は一緒かも。最初から「将来お店が開きたい!」ってわけではなかった。アパレルのいろんな仕事をしてきて海外から帰国したタイミングで、自分の性格ならフリーランスか、個人で会社を作るかどっちかだなと思ったんです。どうせやるなら細かいところまで見たくなる性格だし、仕事の幅を広げたい気持ちもあった。色々考えたら、お店という形が一番いろんなことをまかなえたんですよね。
——自分のスキルを活かす挑戦としてお店を選んだ?
モネ:そうですね。「できないことを、できるようにしたい」っていうのが根本にあるから、自分が培ったファッションのカテゴリーでさらに挑戦する場所が必要だったというか。だから、結果的にお店だったという感じです。
勢いで始まったので、物件探しもめちゃくちゃで(笑)。最初に借りようとしていた東京の東側、馬喰町(ばくろちょう)の物件は、いろいろあって急遽白紙に。それで「4日で次の物件を決めないといけない」となって、東京中を見て回りました。初めての上京で土地勘も無かったのですが、「中目黒がおしゃれらしい」というぼんやりした記憶を頼りに中目黒から祐天寺まで歩いて、偶然良い物件を見つけたんです。不動産屋さんに「今建物の前にいるので内見させてください」って電話して、その日に契約を決めました。
モハメド:すごい!モネさんもスピードスターじゃないですか(笑)。
モネ:いや、無知って強いねん(笑)。敷金のルールとかも、全部後から知ったから。でも、最初からいろいろ調べすぎてたら、怖くなってできなかったこともあると思うんですよ。結果的に祐天寺の雰囲気も店に合ってたし、あの勢いで決めてよかったと思います。

スタジオラボ祐天寺店外観(1・2階左部分、3階右部分)

スタジオラボのオリジナルトートバッグ(各5500円)は発売当初から人気のアイテム
セレクトショップを支えるのは研ぎ澄まされた「直感」
⎯⎯商品のセレクトにも、それぞれの店らしさが表れています。セレクトはどのように決めていますか?
モネ:うちは結構、感覚派かもしれないです。明確な基準を決めているわけではなくて、自分の中で「これが好きな人なら、次はこっちに行くやろ」みたいに自然につながっているものを選んでいます。
あとは、祐天寺という場所も結構意識しています。ここで買った服が、表参道や渋谷に行かないと成立しないようなものではなく、そのまま祐天寺を歩いていてもなじむ。でも、すれ違った10人のうち1人くらいが「あれ、ちょっと面白いな」と気づく。そのくらいのバランスが好きなんですよね。
⎯⎯スタジオラボのラックには、デッドストックとデザイナーズブランドの新作が混在しています。新旧を分けずにセレクトするのも店の特徴ですよね。
モネ:そうですね。そもそも、シーズンや年代で服を区切って考えていないんです。デッドストックは過去のものだからシーズンをまたいで出せるし、去年仕入れたものを今年並べることもできる。だからブランドの新作も、「今シーズンらしいか」というより、来年になってデッドストックと同じラックに掛かっていても違和感がないかどうかは意識しています。

デッドストックとデザイナーズの新作をミックスしたスタジオラボのラック

スタジオラボ3階
森下:ディソナンスも感覚派ですね。2人とも普段からコレクションや海外誌をかなり見ているので、話していると「最近こういう感じが気になるよね」って自然と共通項が出てくるんです。そこから今の自分たちが提案したいものを絞って、仕入れに反映しています。
モハメド:この感覚は、仕入れだけじゃなくてヴィジュアルにもつながっています。「この服ならこう見せたい」「このモデルが合いそう」と、セレクトしたものからスタイリングやキャスティングを考えていく。僕らの場合は、何を置くかと、それをどう見せるかをセットで考えている感じですね。
モネ:2人の「好き」が近いんや。
モハメド:近いところもあるし、違うところもあります。リョウジ君はスタイリストでもあるので、モデルのキャスティングやスタイリングは彼が主体になることが多い。そこに僕が「今回はもう少しこうした方がいいんじゃない?」と意見を出して、そこで調整する。最終的には2人の感覚が混ざったものがディソナンスらしさに繋がっています。

「モデルの人種の偏りとか、結構気にしちゃいます」(モハメド)

ディソナンスのセレクトには2人の意見を反映
⎯⎯買い付けはどのように行っていますか?
モネ:デッドストックや古着は基本アメリカですね。仕事の関係でニューヨークには年2回くらい行くので、そのタイミングで見ています。パリではコレクションを見たり、ディーラーさんに会ったり。最近はミリタリー系もパリで見ることが多いかな。
森下:僕らも最初はパリまで買い付けに行ってましたけど、今は個人のディーラーや卸の人から仕入れることが多いです。海外の個人アカウントと直接やり取りして、「これあります?」って聞いたり。モネさんは「これは店に置きたい」と判断する決め手はありますか?
モネ:ブランドで言うと、軸が一貫しているかは結構見ますね。毎シーズン同じものを作ってほしいわけではなくて、そのブランドらしさは残しながら、「今回はここまで攻めたんや」と思えるような変化がある方が面白いなって。
森下:分かります。僕らは、それをヴィジュアルから判断することが多いですね。ルックやキャンペーンを見ていると、そのブランドが何を大切にしていて、今シーズンは何を新しく見せたいのかが自然と伝わってくる。服だけじゃなくて、ヴィジュアルまで含めてブランドとして筋が通っているかが響くポイントなのかも。
⎯⎯それぞれ自己流のセンスの磨き方はありますか?
森下:僕は海外のクリエイティブエージェンシーのサイトをよく見てます。作品一覧ページから、フォトグラファー、スタイリスト、アートディレクター、ヘアメイクまで一人ずつ辿っていくんです。そうすると「この人、今季はこのブランドもやってるんだ」とか、「このメゾンは今こういう質感や撮り方を求めてるんだな」とかが見えてくる。ブランド単体というより、誰がどういうクリエイションに関わっているかをチェックすることが多いです。
そうやって見てるうちに、「最近この色多いな」とか「このサイズ感いいな」っていうのが自然に溜まっていくんですよね。それを古着の仕入れに反映したり、ヴィジュアルを作るときに使ったり。別に「覚えなきゃ」と思って見てるわけじゃないけど、気づいたら頭の片隅に入ってる感じです。
モネ:私はブランドの情報を大量に追うみたいなことはあんまりしないです。それより「おしゃれな人って何なんやろう」っていうのはずっと考えてる。例えばアートキュレーターとか、ファッションとは違う仕事をしている人が選ぶ服って、見方や切り取り方が全然違う。そういう人を見る方が面白いと感じます。
森下:ファッションを外から見るんですね。
モネ:そう。トレンドなんて嫌でも目に入ってくるし、そこを全部追いかける必要はないと思っていて。むしろ自分とは違う職業の人が「なんでこれを選んだんだろう」と考える方が、自分の感覚が固まりすぎなくていいなと思っていて。そんな感じなので来年には全然違うものを良いと思うかもしれないし、それでも別にいいと思ってます。
モハメド:僕は2人の中間かもしれないです。海外のコレクションやブランドも見るし、普通に服も買う。あとは服好きの友達とか、お客さんとの情報交換も大きいですね。ディソナンスのお客さんって、自分でかなりディグってる人が多いので、「これ知ってます?」って教えてもらうことも結構あります。SNSもよくチェックしますが、血眼になって「全部把握しなきゃ」と思ってるわけじゃなくて、日常のルーティンの中で入ってくるものを拾ってる感じです。
森下:結局、いっぱい見ることよりも、自分がどこに反応したかを覚えておく方が大事なのかもしれないですね。

ディソナンス店内の什器はシルバー・白・青で統一しミニマルな印象に

店内に置かれた雑誌は自由に読むことができる
これからのファッション業界、「トーナメント制」じゃつまらない
⎯⎯オープン当初と比べて、店の運営方法は変わりましたか?
森下:全然違いますね。僕らも最初は2人だけでやっていたんですけど、1年くらい前からアルバイトを入れ始めて、今は4人ほどスタッフがいます。2人の時は自分たちの感覚だけで動けたけど、人が増えると、今までなんとなくやっていたことを人に伝えたり、任せたりしないといけない。そこで初めて気づくことは多いですね。
モネ:人を雇うの、めっちゃ大変じゃない?
モハメド:いやー大変です(笑)。最初は採用にも特に基準を設けていなかったんですけど、一緒に働く中で「こういう人が必要なんだ」というのが少しずつ見えてきて。僕らの場合、まずは服がめちゃくちゃ好きなこと。ちょっと好き、ではなくて、振り切って好きな人じゃないと、この仕事を続けるのはなかなか難しいと思っています。
あとは、自分から楽しめる人ですね。「これをやって」と言われたことだけをこなすのではなく、自分で服を調べたり、スタイリングを考えたりする。仕事として店に立つ以前に、本人がファッションを楽しんでいるかは結構見ています。
モネ:うちは逆かも。もちろん服が好きなのはいいことだけど、「めちゃくちゃファッションが好きじゃないとあかん」とは思ってない。それよりホスピタリティがあるとか、人に気を使えるとか、そういうベーシックな部分の方を見ています。あと、負けず嫌いな子がいい(笑)。すぐ譲っちゃう子より、「ここは私が取る」って前に出られる子の方がいいから、時代錯誤かもしれないけど部活経験とか聞いちゃう(笑)。
うちはお客さんの年齢層も広いから、服の知識だけあっても接客できないんですよ。自分の親より上の世代の方を接客することもあるし、その時に「これかわいいですよね」しか言えなかったら会話が続かない。なのでいろんな年代の人と話せるように、ファッション以外のことも勉強してもらいます。お客さんが何に興味を持っているかを察して、ちゃんと会話できることも接客だと思うから。



心斎橋店はショップインショップ形式でも、スタジオラボらしいヴィンテージ感とモダンな雰囲気を演出
Image by: studiolab404.com

「ちなみに今うちでは働いている子たちは運動部と吹奏楽部出身です」(モネ)
森下:そういう接客の仕方はスタッフにどう共有しているんですか?
モネ:ストイックに仕組み化しています。今は祐天寺と心斎橋の2店舗があって、扱う商品数も多いので、感覚だけでは回らなくなってしまって。新しい商品が入荷したら、特徴やセールスポイントを共有するし、「このお客さんはこういうものが好きだった」といった接客で得た情報も残すようにしています。あとは担当を決めて、そこで得た情報は全員に共有してもらう。誰か一人だけが知っている状態をなるべく作らないようにしています。
モハメド:すごい。かなり組織的ですね。
モネ:そうせざるを得なかったから。私も昔アルバイトしてた時は、朝礼とか全体ミーティングとか、「これ何の意味があるん? 私バイトなんやけど」って思ってたけど、自分が経営する側になって、ようやく「あれ全部意味あったんや」って気づいた(笑)。
モハメド:耳が痛い(笑)。僕ら、スタッフと普段そんな話してないもんね。
森下:恋愛の話とかはするけどね。
モネ:恋愛事情は共有してんのに、業務は共有してへんの?(笑)。
モハメド:今の話聞いて、ちょっと反省してます(笑)。
モネ:でも、店によって必要なやり方は全然違うと思う。セレクトショップは扱うものも変わるし、ファッション業界のトレンドや働き方もどんどん変わるから、その変化に合わせて店のやり方もアップデートしていかないといけない。スタジオラボも今の形が完成形ではなくて、1年以上かけてずっと調整中ですね。
森下:ディソナンスも店が大きくなってもっと人が増えたら、そういう仕組みが必要になると思います。今までは2人の感覚だけでなんとか動けていたけど、それをどうスタッフに共有していくかはこれから考えないといけないですね。勉強になります。
それに今年に入ってからは、「エイチ ビューティー&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」の地下に新設された古着コーナー「H_VINTAGE」のキュレーションを任せてもらうなど、自分たちの感性を店の外で形にする機会も増えていて。だからこそ、自分たちの美的感覚を言語化して共有していく能力をもっと磨いていかないとです。

「エイチ ビューティー&ユース」の古着コーナー

US古着をはじめ、ヨーロッパヴィンテージやラグジュアリーピースまで幅広く揃える
⎯⎯年数を重ねる中でお店を訪れるお客さんにも変化はありましたか?
モネ:年齢層はかなり広がりましたね。特に祐天寺のお店は最寄り駅から10分ほど歩いた住宅街にあるので、ふらっと立ち寄るというより、わざわざ目指して来てくださる方が多いんです。だから自然とファッションへの熱量が高い人が集まっている気はします。
森下:ディソナンスはオープンしたてから変わらず大学生くらいのお客さんが多いですね。店に来て服を見るだけじゃなくて、そのまま長話して帰る子も結構います。
モハメド:過去には開店から閉店までいる子もいましたからね(笑)。
モネ:それもうスタッフやん(笑)。
森下:本当に(笑)。あとは店で知り合った人同士が仲良くなったり、常連さんの紹介できてくれる方がいたりと、店をやっているからこそ生まれるつながりも多いです。
モネ:そうだね。店という空間があることで、普通に生活していると会わないような人と会えるのは面白い。少し話が逸れるけど最近思うのは、私らくらいの世代って、上の世代と比べて横のつながりが弱い気がします。
森下:確かに、それは分かります。
モネ:イメージですけど、私たちより少し上の世代のクリエイターたちって、それぞれ違うことをやりながら一緒に仕事したり展示したりしてたじゃないですか。一人はデザイナー、一人は写真、一人はまた別のこと、みたいに。それぞれ役割が違うからこそ共存できてる感じが、めっちゃいいなと思って。
モハメド:僕らの世代は、ちょっと斜に構えてるところがあるのかもしれないですね。「一緒に何かやろうよ」って言うのが、ちょっとダサいみたいな。それにSNSを見れば、同世代が今何をやっているのかも大体分かる。実際に会ったことがなくても、なんとなくその人のことを知ってる気になっちゃうんですよね。
モネ:そうそう。でもそうやってそれぞれが一人でやっていたら、結局トーナメント制みたいになって、最後は一人しか残らない。少しずつ違うことができる人同士がつながった方が結果的により上がっていけると思うんですよね。
⎯⎯ちなみに今、同世代で「この人面白いな」と感じている人は?
モハメド:僕は有本怜生君ですね。グラフィックデザインと写真の両方をやっていて、今はコクヨの「YOHAK DESIGN STUDIO」で働いている子なんですけど、多摩美の卒展で作品を見て「この展示いいな」と思って興味を持ちました。
有本怜生のインスタグラム投稿より。2001年大阪市生まれ、2024年に多摩美術大学統合デザイン学科卒業。グラフィック・エディトリアルデザイナーとして活動するほか、建築やデザインなどの分野を中心に撮影を手がける。個人の活動と併行して、2023年からコクヨ YOHAK DESIGN STUDIOに所属。
モネ:私は上海で出会ったサウンドアーティストの細井美裕ちゃんが気になってます。ファッションとは全然違う仕事なんですけど、音をどう展示するかとか、空間をどう捉えるかみたいな話がめっちゃおもしろくて。自分にはない発想を持ってる人の方が気になるかもしれない。
細井美裕のインスタグラム投稿より。1993年愛知県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。サウンドインスタレーションや実験的なシアターピースを中心に、音が持つ情報伝達の可能性と不可能性を探る。近年は、場所・もの・ひとの記憶と記録について、国内外でリサーチベースのプロジェクトに取り組む。
モハメド:やっぱりモネさんはファッションの外を見るんですね。
モネ:そうだね。ファッションの人ばっかり見ていると、どうしても発想が似てくるから。全然違うことをやってる同世代と話した方が、「これ服に置き換えたらどうなるんやろう」とか考えられるし。
森下:僕は回答になっていないかもしれないんですけど、最近、昔の日本人デザイナーを掘っています。海外で「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」や「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」、「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」などのレジェンドが改めて注目されているのを見て、「なんで今、海外の人たちはこれを面白いと思うんだろう」と遡っていったのがきっかけで。
その中で最近かなりくらったのが、「トキオクマガイ(TOKIO KUMAGAI)」のデザイナー、熊谷登喜夫さんです。レザークラフトを軸にしたものづくりは一貫している一方で、80年代から90年代にかけて、表現やショーの見せ方は大きく変化している。資料を読み進めるうちに、「核は変えず、時代に合わせて表現を変えていく」という姿勢が面白いなと思ったんです。それをきっかけにさらに掘るようになって、今は彼の古着を集めています。

途中からモネのことを「姉さん」と呼び始めるモハメド
⎯⎯ありがとうございます。では最後に、それぞれ今後の展望を教えてください。
モハメド:僕は結構、先のことまで考えるタイプなんです。まず3年以内には、オリジナルのニュートラルだけを扱う店舗を作りたい。今はまだウェブサイトもないので、そこを整えて、広告も含めてきちんと売れる仕組みを作った上で、ニュートラル単独の実店舗を出したいと思っています。
それが軌道に乗ったら、5年くらいのスパンでその仕組みを生かして別の事業も運営していきたい。そしてさらに10年後くらいには、ディソナンス自体で利益を出すことを最優先にしなくてもいい状態にしたいんです。ほかの事業で収益を作れれば、ディソナンスでは服を売ることだけにとらわれず、もっと自由な提案ができる。今のファッションのムードを知ったり、スタイリングに触れたり、店に来ることで何か新しい発見がある。そんな、純粋にファッションを楽しめる場所にするのが目標です。
モネ:それいいな!
モハメド:上の世代の人と話していると、ファッションのルーツとして「どんなカルチャーが好きなの?」「何から影響を受けているの?」と聞かれることが結構あるんです。もちろん、音楽やアートとファッションが結びついて生まれるものもあるけど、僕は「ファッションをファッションとして楽しむだけじゃダメなのかな」と思うこともあって。服そのものを見たり、着たり、スタイリングを楽しんだりすること自体が入り口でもいい。だからディソナンスも、純粋にファッションを楽しめる場所にしていきたいんです。
森下:ニュートラルについては、まずはコレクションの見せ方から変えていきたいと思っています。春夏、秋冬とシーズンごとにまとめて発表するのではなく、毎月2〜3型くらいのペースで新しいプロダクトを出していく。今は来年6月頃までの企画を進めていますが、そこから少しずつ型数も増やして、ブランドとしてできることを広げていきたいと思っています。
ただ、売るために作りたくないものまで作ることはしたくなくて。自分たちが欲しいものと世の中が求めるものが大きくズレるようになったら、売却するという選択肢も全然あり得ると思っています。ただ今はニュートラルを作ることが純粋に楽しいので、まずは自分たちが納得できる形で、どこまで広げられるかやってみたいですね。

「ニュートラルのメリノウールトップスはユニセックスで着用可能。コーディネートの幅を広げるアイテムとして、古着にはあまりないカラーラインナップにこだわりました」(森下)
モネ:3年後、5年後、10年後と、そこまで細かく決めているわけではないです。ただ、近いうちに海外にはお店を出したいと思っています。そのためにも、まずは日本での土台をしっかりつくっておきたい。やっぱり、そこではコミュニティが鍵になりそうですね。
あとは、何をやるにしても、その時に自分が面白いと思えることは大切にしたいです。素敵なブランドを見つけるとワクワクするし、「こんなの見つけたよ」って人に教えたくなる。私は何でも一番最初が好きなんですよね。だから、先の形を決めすぎるより、面白いものに出合った時にすぐ動けるようにしておきたいです。
モハメド:モネさんらしいですね。あと僕は店もそうですけど、個人としての活動ももっと広げたいです。今は自分のセルフプロデュースが全然できていないので、SNSもちゃんとやりたいし、YouTubeとかTikTokも始めたい。
モネ:急にインフルエンサー(笑)。
モハメド:全然やります(笑)。個人として影響力を持てたら、それをディソナンスにも還元できると思うんですよ。あと、もっと先では学校みたいなこともやってみたい。店にいると、若い子から服のことも仕事のことも結構聞かれるじゃないですか。だったら、何かをちゃんと伝えたり、一緒に学べる場所を作るのが面白いなって。
モネ:学校いいやん。さっき同世代の横のつながりが弱いって話したけど、そういう場所があったら自然と人も集まりそう。
森下:確かに。僕らも店を始めたことで、それまでだったら出会わなかった人とつながって、そこから一緒に仕事することも増えたので。店でも学校でも、何かをやっている人同士が自然に出会える場所がもっとあったら面白いと思います。
モハメド:じゃあ、姉さん一緒に何かやりましょうよ。
モネ:いいやん、やろうや。結局、「横のつながりがない」って言ってるだけじゃ何も始まらないからね。立ち上げたらFASHIONSNPさん取材してな。
⎯⎯もちろんです!
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