ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント
ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント
Image by: FASHIONSNAP.COM

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「ヴェイパーフライ エリート フライプリント」が借りられたのでざっくりレビュー 31足しか販売されなかった幻のスニーカー

ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント
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 世界中のランナーから熱視線を浴びる「ナイキ(NIKE)」の新作厚底ランニングシューズ「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」(以下、アルファフライ)。東京マラソン2020で日本新記録を更新した大迫傑選手が着用していたことでも大きな話題を集めました。今春には一般販売を予定してますが、先行して販売された時の条件が「男子は2時間50分以内、女子は3時間40分以内の規定タイム内で完走した」人たちのみ抽選券がもらえるという激ムズでした。しかし、ナイキのランニングシューズにはもっと限られた人しか持っていないレアモデルがあります。それが「ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント」(以下、フライプリント)。日本ではなんと31足しか販売されなかったと言われるレアシューズを運良く借りることができたので、FASHIONSNAP.COMのシューズ担当者たちがざっくりレビューします。

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値段も作りも限定にふさわしすぎる

A:凄いスニーカーを借りてきましたよ。

「ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント」。綺麗に保管されていたようで未使用に近い状態。

B:初めて見たけど作りが凄いね。素材がプラスチックっぽい感じで独特の光沢感がある。アッパーは3Dプリンターで作られているんだよね。

A:そうですね。この「フライプリント」は、フルマラソンで2時間切りに挑戦するプロジェクト「Breaking2」で作られた「ズーム ヴェイパーフライ エリート」が前身モデルなんですが、エリウド・キプチョゲ選手のフィードバックによるフライニットの汗や雨の水を吸って重くなるという課題を解決させるために改良されたモデルになります。ナイキの競技用フットウェアで初めて3Dプリンターを活用したモデルとして約2年前に発表されましたが、他のスニーカーでももう使われているんですかね。

B:見たことないね。でも水対策として改良されたけど、吸わないだけで水自体は中に入ってくるんだね。

A:熱の排出も考えて素材が水を吸わないようにしたのみに留めたという感じなんでしょうか。デザイン的には、ナイキのランニングシューズの中でもかなりクールだと思いますがどうですか?

B:近未来感があるよね。デザインというよりもこのアッパーのヌメリ感は見たことないかも。色もなんといっていいかわからない絶妙なカラーリングで見る角度で表情が変わる。

A:公式では「ナイキ フライプリント技術は、固体堆積モデリング(SDM)と呼ぶ、コイル状になっているTPUの繊条組織を解き、それを溶かし層に重ねるプロセスにより作られます」と書いてあります。

B:なんのこっちゃだよね(笑)。でもニットだと縦糸と横糸が交差するんだけど、これはその交差部分が融合してる。なので、縦素材と横素材が擦れることがないってのがミソだよね。

A:2018年のロンドンマラソンでエリウド・キプチョゲ選手が着用して優勝したんですが、履いていたのはロンドン限定のオレンジをベースとしたカラーでした。

B:オレンジベースのカラーも格好良いよね。

ソールの開発・進化はもう限界?

B:今も続いているナイキの厚底は、前身モデルの「ズーム ヴェイパーフライ エリート」が始まりだよね。

A:おそらくそうですね。「ズーム ヴェイパーフライ エリート」のアップデート版が「フライプリント」ですが、この2つが少数生産モデルで、一般販売モデルとして「ズーム ヴェイパーフライ 4%」が製作されて、そこからエリウド・キプチョゲ選手が2018年09月のベルリン・マラソンで当時の世界記録を打ち出した「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」(以下、4% フライニット)、そしてMGCや箱根駅伝で話題を集めた「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」(以下、ネクスト% )、「アルファフライ」という流れで作られています。

B:なるほどね。アッパーは、「4% フライニット」と「アルファフライ」ではニット素材を使っているけど、「ネクスト%」は軽量で通気性に優れた「ヴェイパーウィーブ」を使ったりといろいろ模索段階なんだろうね。「アルファフライ」は一応、高温多湿が予想される東京大会(開催地札幌)を見据えて通気性のある「アトムニット」を使っているらしいから開催場所の環境によって変えていく方向性なのかな。世界陸連の規制でソールに入れられるプレートが1枚だったり、ソールの厚さが40mm以下だったりルールが追加されてソールは開発の余地がどんどんなくなっているから、今後はアッパーの開発にも力を入れていくと思うんだよね。

A:東京マラソン後に大迫傑選手に話を聞く機会があったので、アッパーについて話を聞いたところ「4% フライニットは、足にフィットするホールド感があり、ネクスト%はシュータンが斜めに作られているのでずれにくく、ニットとは違った良さがある。今回のアトムニットは2つの良いところを合わせたような履き心地だった。フライニットは水を吸収してしまうことがありましたが、アトムニットはもし雨が降ったとしても影響受けずに走れそう」と言っていました。

B:つまり、アッパーに求めるものは足にフィットするホールド感と汗や雨の問題のクリアなんだろうね。この「フライプリント」はその2つの課題をクリアしているけど、より良い素材の開発は続きそう。「フライプリント」は着用状の課題があるのか、現状は汎用性が低くて高価格でしか作れないので一般販売を考えると使いにくいのか。

A:定価税込8万1,000円ですからね。簡単に手を出せない価格です。

B:しかもフォーム(ソール部分)の耐久性の問題で、ベストなパフォーマンスを発揮できるのは約400kmと言われているから履くタイミングをかなり選ぶよね。

A:ちなみに「ネクスト%」は税込3万250円でこちらも値が張ります。なので、練習では「ペガサスシリーズ」などもう少しリーズナブルなシューズを使用して、本番前の慣らしと本番に「ネクスト%」を使うという人も結構いるそうですよ。

B:なるほど。サブシューズの需要も見逃せないね。

スマホの進化に似ているシューズ事情

B:「フライプリント」、これ手に取って思ったんだけど、凄く軽いね。

A:公式では、前身モデルの「ズーム ヴェイパーフライ エリート」よりも11g軽くなっているらしく、このサイズは計ってみたところ片足160gでした。

B:それは凄いね(笑)。

A:「ネクスト%」の同じサイズを計ってみたんですが、190gでした。「アルファフライ」はズーム エアが入っていますし、フォームのボリュームも増えているのでおそらくネクスト%より重くなっていると思います。そう考えるとナイキの中で軽さを追求するタームは終わったのかもしれないですね。

B:携帯電話みたいだね。昔の携帯電話って新しいものが出るたびに軽くなっていたんだけど、スマホになったらそういう傾向は減って、機能性のほうが重要っていう感じで。機能性が上がるなら重さは多少増えてもやむを得ないっていう考えと同じなんだろうね。これからは少し重さが増えてもいいから、重さに変わる機能を入れて全体のパフォーマンスを良くするということになっていくのかも。

A:たしかに。規制はされているけれどフォームは増えていっていますし、「アルファフライ」はズーム エアが搭載されましたしね。

B:この「フライプリント」は、土踏まずの部分がかなりえぐられている作りが特徴的だね。

A:31足という限定的な数だったので、かなり実験的な作りだったのかもしれませんね。足入れさせてもらったんですが、横幅はかなり小さめに作られていると思いました。

「ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント」。アッパーは光の当たり方で独特の風合いに。

B:「Breaking2」のために作られたから、誰もが履きやすい靴を目指しているわけではないのかな。でもここ数年で厚底になると本当に速くなるということが実証されたね。昔は薄くて素足に近い感じで走るというのが流行りだったけど、クッション性と反発を利用するという流れになって。

A:色々なブランドがこぞって厚底に向かいましたね。厚底の足の動きをサポートするのがプレートでもあるんですが。

B:さっきも言ったけど規制でフォームの厚みとプレートの枚数に制限がかかったから今後ソールでいじるとしたらフォームの素材を変えるか、あとはプレートの形をアレンジする成型技術の問題になってくるかもね。

A:「アルファフライ」に使われているプレートは、「ネクスト%」に使われているものと素材・長さは同じですが、エア ズームの連動性を高めるために幅を広くしたり、より前へ進む動きをサポートするために硬めに作られているらしいです。

B:そうなんだ。大迫選手は「アルファフライ」のソールについて何か言ってた?

A:ソールについてはフォームが増えたので「クッション性があがった」というのと、「ズーム エアによってより反発があって、今までよりも地面を叩いたときのエネルギーのロスが少ない」ということを言っていました。プレートによって生まれたエネルギーをズーム エアで反発させて足を前に運ぶというのは、たしかに理にかなっているなと思いました。

B:エアと言えばナイキというイメージがあるし、「ネクスト%」で話題になったタイミングでエアを使ってくるマーケティングと開発センスが上手いよね。徐々に改善されているとはいえエアって意外に重いし、軽さ追求の過程では搭載しないって方向だったと思うし。

A:「ネクスト%」の色の打ち出しも凄かったですね。MGCでピンクを打ち出して、ランナーが並んだ絵が印象的でしたし、"ピンクのシューズ"と言えば速い靴みたいなイメージが付いたと思います。「アルファフライ」は黒ベースの緑でしたが、これからまた新しい色が出てくるかもしれないですね。エリウド・キプチョゲ選手は、白ベースのピンクの「アルファフライ」を履いていましたし。

B:個人的には黄色で出してほしかった。黒ベースの黄色、たぶん格好良いと思う。

A:出るといいですね(笑)。

「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」。マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で優勝した中村匠吾選手や、2位の服部勇馬選手らが着用。

B:あと、ナイキのランニングシューズの流れを見ていたらどんどんスウッシュが大きくなってきているよね。最初は「うわぁ、デカロゴだ」とか思ったけど今では格好良いと思うし。でもみんながこぞって同じモデルを履くというのはランニングくらいかな。バスケとかサッカーではそういう現象が起きないよね。

A:ポジションや人によってプレイスタイルが変わったりして、統一するのは難しいんでしょうね。

B:急に止まったりするからね。「フライプリント」も「ネクスト%」も接地面は少なめに作られているし、急ブレーキするのは難しそう。逆を言うとマラソンってスタートしてからだいたい2時間以上は止まれないから、そういうことを考えるとアッパーがずれなくて安定しているというのはかなり大事なんだろうね。

A:世界陸連の新ルールで4ヵ月以上の市販期間が必要になったので、ランナー着用シューズの同一化はどんどん進んでいくかもしれないですね。「アルファフライ」も春に一般販売されるそうですし、今後「フライプリント」のような記録保持者だけが買えるというモデルは少なくなっていきそうです。

B:公平を期すためにみんなが買える状態になったからね。「アルファフライ」のソールも39.5mmでギリギリ範囲内という情報もあったし、規制の中でどう差別化していくか。開発の余地はどんどんなくなっているからこそズーム エアだったり各ブランドの強みが活きてくるかもね。

A:注目も集まっていますし、加熱するランニングシューズ業界は今後も楽しみですね。

写真左から)「ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント」、「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」。ロゴがどんどん大きくなっているのがわかる。

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