Image by: ©Miyu TAKAKI

Lifestyleきっと誰も好きじゃない。

【連載:きっと誰も好きじゃない。】4人目-なんでも出来るエリート大学生の彼

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 死ぬほど人を好きになったり愛したりなんてできないのかもしれない。そんな諦めの気持ちと、それでもやっぱりどこか諦めきれない自分。そこで私は、真の愛を掴むべく出会い系アプリを使ってみようと決意した。「きっと誰も好きじゃない」のかもしれないけれど。時間を共にし、話したことや出来事を、撮ってもらった私自身の写真とあわせて綴る出会い系アプリで知り合った男性とのおはなし。4人目は渋谷で会った22歳のTさん。

(文・写真:高木美佑

木曜日@渋谷 22歳 Tさん

メッセージのやりとりをし、会おうと決まってからすぐ、彼から「身長はおいくつですか?」と訊かれた。
「160cmぐらいです。」と答え、身長を尋ねた理由を訊くと、「身長の小さい人が好きなので参考までに」とのこと。

ちなみに彼は184cmだと教えてくれた。

そして当日、待ち合わせ時間の20分ほど前に彼から連絡がきた。

その日着ている服装の写真を、スマートフォンで撮って送ってきてくれたのだ。
それは自宅の玄関の鏡越しに撮られていたもので、恐らく事前に撮っておいてくれたのだろう。

写真まで送られてきたのは初めてだったので、少し用意周到さを感じ、こういった出会いに慣れている人なのだろうかと思った。あるいはその日のコーディネートをSNSへ載せる為に撮っていただけかもしれない。

現れた彼はもちろん写真通りの服装で、爽やかな好青年。

メッセージでのやりとりでは「カフェに行こう」と話していたけれど、時間は18時をまわっていたので、軽くご飯も食べられるようなところへ行こう、と歩き始めた。

彼が提案したカフェは、とってもお洒落で有名なカフェだった。
私も何度か行ったことがあるお店だったが、私はそのカフェへ連れていく男性を信用していなかった。

ただの偏見だと言われればそうかもしれないけれど、デートでそのお店へ行く男性はことごとく軽い男性が多かった。それ以来、わたしはそのお店のことを嫌っていた。

そんなことを直接彼に伝える訳にもいかず、私は「この間友達と行ったけれど混んでて入れず、リベンジしたいお店があるのでそこに行ってもいい?」と最もらしい理由をつけて、私の知っている別のお店を提案した。

そのお店が入れなかったら、彼が提案したカフェへ行こうということにした。

幸いにも私が行きたかった方のお店へ入ることができた。
席について、2人ともビールを頼んだ。わたしはグラスビールで、彼はコロナビール。

彼はビール瓶の上に乗っているライムを絞り、かじったあと小皿の端へ置いた。

そのライムは瓶の中に入れて飲むものなのだとつい教えたくなったけれど、男子大学生がお洒落な輸入ビールを飲んでいるのをみたらわたしは指摘することができなかった。

食事がきた。私はカレーを頼んでいた。
そのお店の料理はとても美味しいけれど、かなりボリュームがある。

私は「全部食べきれる自信ないな」だとか、終盤にも「苦しい...」と華奢な女性をアピールしたけれど結局全部食べてしまった。

そのことに彼も驚いていたと思う。

ありきたりな、普通の話をたくさんした。
兄弟の話、好きな映画の話、彼の大学の話、彼がやってきたスポーツの話。
正直なところ、私にはどの話にも面白みが感じられなかった。

彼は恐らくなんでも出来る人間だ。
大学名は聞いていないけれど、建築を学んでいて、在学中にイタリア留学をして、英語とイタリア語を話すことができる。
サッカーをやっていて、ジムに通い、水泳とトライアスロンもやっていて、最近ではボルダリングも始めたらしい。
映画もよく観ていて、小説も読む。
日本中を旅行していて、海外旅行へもよく行く。いわゆるエリート大学生だった。

彼はアルバイトをしているらしく、その職場でもすごく可愛がられているようで、食事はいつも先輩に奢ってもらうのだと話した。
アルバイトにも関わらず社員旅行に行き、しかし一銭も払っていないらしい。

こういった社会性もあり誰からも好かれる大学生を、大企業は欲しがるのだろうと思った。

私は「へー」「すごーい」だとかの相槌だけで、ほとんど喋っていなかったと思う。
経歴や実績よりもなにかもっと彼の本質のところ、どんなことを考えているのか、どんなものに感動するのか、そういったことを知りたいなと思ったけれど、そこを探ることへの気力が私にはなくなってしまった。

どうしてか、こんなにも優秀な人間であるのに、人間味があるようで全く感じられなかった。

私はもっと、不器用な人間が好きだなと思った。

私は自分に自信がないせいか、年上らしい威厳をもつことや、人から敬われることがとても苦手だ。

ましてや彼のような眩しい大学生に対して、年上らしく振舞うことなんて出来るはずもなかった。

よく考えたら、わたしが好きになってきたのは年上の男性ばかりだった。

少し小馬鹿にされるぐらいがちょうど良いと思っていた。

けれどそれは単に、自分に自信がないことを、年下だからという理由で誤魔化してきただけだったのだろう。

お互い2杯目を飲み終えて、会話も途切れるようになってきたタイミングで、そろそろお店を出ようということになった。

さすがに学生に払わせる訳にもいかないし、せめてもの償いのような気持ちを抱きながら、支払いを済ませた。

わたしがボルダリングに興味があると言ったことを彼は覚えてくれていて、「次に会うときのボルダリング代は僕が払いますね」と言った。

私は鞄からカメラを取り出し、「このカメラをこれから現像に出しにいきたいんだけど、あと1枚だけフィルムが残っているから撮ってほしい」と伝える。

本当はあと1枚ではなく、まだ1枚も撮っていないカメラだったけれど、フィルムカウンターが「27」を指していたのでそれが始まりの数字なのか終わりの数字なのか、彼にはわからなかった。

「どこで撮る?」「どこがいいかな?」と話しながら、少し歩くと近くに大きなアイドルのポスターが貼ってあり、ここにしようと決めた。

1枚撮ってもらったあと、「2ショットも撮る?」と訊かれたけれど、「最後の1枚だったからごめんね」と謝った。

彼のことを鮮明に残しておくべきではないと思った。

「写真屋さんまで一緒に行こうか?」とも言ってくれたが、「ひとりで大丈夫だよ」といい、交差点で別れた。

別れてすぐ、彼からメッセージが届いた。

次、ボルダリング代は自分が払うのでまた会って欲しい、と。

その日はすごく疲れていて、帰ってすぐに寝てしまった。

企画協力:Tomo Kosuga

高木美佑/Miyu TAKAKI
写真家。1991年生まれ、東京都在住。
好きな男性芸能人:「ハナコ」の岡部さん
Instagram

インタビュー記事:若き写真家の肖像 -高木美佑-

きっと誰も好きじゃない。
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