オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™「IMAGINARY TV」チャンネル一覧
ファッションウィーク期間中ではない2月初旬、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)」は2021年春夏コレクションをデジタル形式で発表した。「んっ? 21年秋冬じゃなくて?」と思った業界人は不正解。どうやらヴァージルは、4年ほど前に急激に盛り上がって盛り下がった「シーナウバイナウ」を、所属するイタリアのニューガーズグループとともに再始動するようなのだ。
(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎)
オフ-ホワイトからメールで送られてきたリンクを踏むと、女性のアニメーションのポップアップが現れた。うーん、怪しい。英語のいかがわしいサイトを閲覧した時に不意に出現するアレに似ている。でも、これは歴としたオフ-ホワイトのTVチャンネルの画面上のコントローラー。チャンネル1は「2021年春夏コレクション」、チャンネル10は「DOMI & JD BECK / JAZZ」、チャンネル19は「KIRI OKUYAMA / DJ SET」などと書かれていて、チャンネル数は22にも及ぶ(チャンネル番号は随時変化する)。
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この 「IMAGINARY TV(架空のテレビ)」と題されたオンラインコンプレックスは、特注で製作されたインターフェイスを使って、チャンネルごとのスペシャルパフォーマンスをインタラクティブに視聴できるというもの。それぞれのチャンネルは、コレクションの背景にあるコンセプトを表現し、国際的に活躍するパフォーマーたちが各国から参加して制作したという。
最初に選択したチャンネルは「LIANG BY YING / 太極」。オフ-ホワイトの白シャツとパンツを着た中国人女性が太極拳を披露するという内容で、優雅でしなやかな体の動きに魅了された。お次はチャンネル10の「DOMI & JD BECK / JAZZ」のライブ。インスタグラムやユーチューブで話題の10代ジャズユニットで、そのテクニックと力の抜けた様は次世代のスーパースターの台頭を感じさせるものだった。
本題の「2021年春夏コレクション」のチャンネルを覗いてみよう。全体的な印象は、メンズとウィメンズの境がほぼなくなっているということ。メンズはプリーツスカートを当たり前のように取り入れているし、ウィメンズはマニッシュなスーツをバリッと着こなしている。それもそのはず、これまでメンズとウィメンズで別々で発表していたコレクションを、初めて統合(同じテーマ、コンセプトで製作)したのが今シーズンなのだ。
CH01 : SPRING SUMMER 2021 コレクションムービー
今シーズンを象徴するのが、マスク的なフェイスカバーとジャケットが一体となったディテール。同じ素材でジャケットのVゾーンにフェイスカバーを差し込んだような雰囲気で、ウィメンズのレザーのジャケットはラペルと完全に一体化しているように見える。穴開きのディテールもいつも以上に多い。ラペルがネズミに齧られたような穴だらけのジャケットは、以前からメンズで提案してきたもの。ウィメンズのドレスは、脇と脇腹の部分が丸くくり抜かれている。穴開きのオリジナルは言うまでもなく川久保玲だが、クロスアローに次ぐヴァージルのシグネーチャーになりそうだ。
テーマは「Adam is Eve」。アダムとイヴではなくて、アダムはイヴ。通常のメンズのスケジュールだと前年の6月に発表するのが常だが、ヴァージルはコレクションの発表と発売の時差がない「シーナウバイナウ」を選んだ。今回発表したコレクションは、2月から5月にかけて3回のプロダクト・ドロップで販売する予定で、私のメールアドレスにもドロップを知らせるメールが既に何通か届いている。これはシュプリームの販売手法とほぼ同じで、同じニューガーズグループの「MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN(マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン)」や「Palm Angels (パーム・エンジェルス)」もファッションウィークに参加していないから、グループ全体がこの流れに沿うことになるのだろう。
「Celine(セリーヌ)」や「Saint Laurent(サンローラン)」「Gucci(グッチ)」が、ファッションウィーク外で独自にコレクションを発表するようになって久しい。日本勢に目を向けても、「UNDERCOVER(アンダーカバー)」と「Sacai(サカイ)」はコロナ禍のパリコレに参加していない。コロナ後のファッションウィークがどういう形になるのかまだ見えないが、ビッグメゾンが独自にショーを開く傾向が加速し、若手主体のファッションウィークに様変わりすると個人的には予測している。オフ-ホワイトのシーナウバイナウが成功すれば、同様の手法を選択するビッグメゾンも出てくるのではないだろうか。
■OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™:IMAGINARY TV
文・増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。>>増田海治郎の記事一覧
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