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Fashion インタビュー・対談

人気企画「パリコレ学」はどう生まれた?キーマンたちに聞く裏話<4. 先生:アン ミカ>

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 TBS系列で放送中の「林先生の初耳学」内の1コーナー「アン ミカ先生が教えるパリコレ学」。"パリコレ"デビューを目標にタレントでモデルのアン ミカさんが先生となり、モデルの卵(=学院生)たちのパリコレまでの道のりと現地での挑戦を追った人気企画です。企画は反響を受け、第1シーズン放送終了後まもなく第2シーズンがスタート。この半年間、第2期生の切磋琢磨し成長する様子がお茶の間に届けられました。そんな「パリコレ学」のカメラに収まりきらなかった裏話について制作陣、出演者など関係者にインタビューします。第4弾となる最終回は先生を務めたアン ミカさん。パリコレ期間中に現地で話を聞きました。

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2期生の困惑と厳しい教え

ーついに「パリコレ学」の第2シーズンが終了を迎えます。振り返ってみていかがですか?

 第1シーズンのときよりも私が求めるものが高まってしまった為、難しい部分はありましたね。ファッションはすごいスピードで進化していて、モデルはそれに順応しなければいけませんが、第1シーズンを参考にして「前回のようにしておけば大丈夫」と思い込んでしまっていた生徒も目立ちました。

ー指導方針は、第1シーズンから何か変わりましたか?

 良いモデルを育てるためには、一人一人の個性に合わせた授業が大切です。"その個性を否定せずに伸ばす授業を"と心がけたのは、前回から変わりません。例えば門田(門田玲)は2回連続で授業を受けてくれましたが、第1シーズンでは尖ったイメージ。でも第2シーズンでは高校生になって少し丸く女の子らしくなっていて、その変化をどう伸ばしていくかを考えました。様々な特別講師にも来て頂いたのですが、それまで伝えていたこととは真反対の指導を受けることもあって、生徒たちは困惑しつつも理解しようと努力していましたね。

ー特別講師は山本寛斎さんや桂由美さんなど、大御所揃いでした。

 山本寛斎さんはイベントプロデューサーもされているので、デザイナーではなくプロデューサーとしての視点でご指導を頂きました。TVをご覧になった方は「パリコレなんてくそくらえ」というフレーズだけが印象に残っているかもしれませんね。山本寛斎さんは、個性や生命力、躍動感がいかに大切かということを伝えていました。生徒たちはその真意を自分で考え抜き、いかに自分のものにするかが重要だったんです。

ー服が主役という考えがありますが、モデル自身も個性が必要なのでしょうか。

 そうですね。結局は人を感動させるくらいの熱量があるかどうかなんですよ。静かにキャットウォークをしなければいけない時もあるので、内に秘めた炎でもいい。情熱を持つ人間かどうかを山本寛斎さんは見ていたということです。服に合わせて無個性になるのはいけない、という根本的なことを伝えてくださいました。

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ー腰に手を当てるかどうかというポージングの指導では、一部の生徒は困惑していた様子でした。

 「ブルックス ブラザーズ(Brooks Brothers)」のウィメンズクリエイティブディレクターを務めるザック・ポーゼン(Zac Posen)さんは「腰に手を当てるな」と指導していましたね。あれは構築的なジャケットを着用しているときに言った言葉です。ジャケットを身につけて腰に手を当てて歩いたら、バストのところが広がってしまい美しく見えません。あの時に最も評価が高かった岡本(岡本百恵)は腰に手を当てましたが、なぜ良かったのかというとボタンを外したから。前のボタンを外して中の服を見せるために、腰に手を当てる必要があったんです。

 一方で桂由美さんが作るドレスは、腰に手を当てた方がウエストのラインが美しく見えます。肘下にフリンジがあるドレスを着用した生徒がいましたが、腰に手を当てないとフリンジが綺麗に下がらないんですね。"腰に手を当てるな"の言葉を鵜呑みにして、服によって応用するなど自分なりの解釈ができていなかった。なぜそう言われたかの「なぜ」を考えなかったばかりに、桂由美さんの時には誰も腰に手を当てずに、全員やり直しになりましたから。

ー生徒達に自分で考えることを促していたんですね。

 よくよく考えれば当たり前のことなんですよ。ザック・ポーゼンさんと桂由美さんが違うように、デザイナーは同じ服を作っていませんから。この時は1本あたり8〜9時間のロケをして10分の映像にまとめられていますが、オンエアされていないところで生徒達はもっと細かく指導されているんですよ。ザック・ポーゼンさんも「腰に手を当てるショーもある」と言っていましたから。デザイナーが違えば言うことが違うのは当たり前。だから全てのデザイナーの服に対応できる"自分"が大事で、それをいかに表現するか。パリコレ学はそのための授業だと私は考えています。

 

平田かのんが選ばれた理由

ー今の時代のモデルに必要なことは何だと思いますか?

 「私たちの時代は」という表現は大嫌いなんです。でもこれからのコレクションモデルにとって大事だからあえて伝えますと、努力が足りないと感じます。私たちの時代はスマートフォンはありませんでしたし、洋雑誌も簡単に手に入りませんでした。それでも何とかショー写真を手に入れて、トップモデルたちのようなポーズを表現できるよう、1ミリ単位で指一本の動きを覚えました。今の時代はスマホで気軽に見られるのに、それを自分の体で覚えようとしてないので、いざという時にできないことが多いんです。便利がゆえの弊害というか、当たり前すぎていつでも見られると思うと、本当の努力をしないんですね。これについては、とても厳しく2期生に伝え続けました。

ー生徒のSNSもチェックされていると聞きました。

 SNSで自己プロデュースができる時代において、例えばパリコレモデルだと胡坐をかき読者モデルやインスタグラマーより素敵に服を見せられていないとしたら、それはやはり努力不足だと思いますから。他人から認められたいという承認欲求の問題は別として、せっかく自分を表現する場がある時代なんだから、それはうまく使いましょうよと。1期生のときは、温泉に行ってピース、のような写真ばかり載せている生徒がいました。確かにそれもナチュラルな良さかもしれませんが、パリコレ学に出て良いモデルになろうと思っているのなら、そこはなりたい自分をイメージして格好良い写真を載せていくことも大事だと思うんです。今はSNSを見てデザイナーがモデルを選ぶような時代ですから。

平田かのん ©︎FASHIONSNAP.COM

ー平田かのんさんを選んだ理由を教えてください。

 後半の伸びです。1期生の小野寺(小野寺南友)もそうでしたが、平田も途中までは上位でも下位でもなく、背は高いし若いんですが肌の状態が良くなかったり、課題が多くて伸びきらない生徒でした。でもレスリー・キーさんとの撮影から、印象がガラリと変わりましたね。難しいポーズをせずただ立っているだけ、男の子と手を繋いで首をかしげるだけで格好良かった。彼女は泣いて「撮影が5分で終わってしまって、これはダメってことですよね?」と言ってきたんですが、そんなことは全然なかった。むしろ良いモデルは時間を作らせない、と伝えました。例えば1日15カット撮ることもあるモデルが、1カットに1時間もかけていると仕事になりませんから。バレエ経験者特有のガニ股歩きは直さなければと思いましたが、「この勘を持っているならいけるな」と思えました。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の服を身にまとい難しいポージングをしたときも、風をうまく捉えて顔の向きを調節して、良いムードが作れていましたね。

ー癖はすぐに直せるものではないと思いますが、どのようにして改善したのですか?

 丸山敬太さんのショーのときも、まだガニ股だったんです。その後にたった5分、バレエ歩きを直す方法を初めて伝えました。平田は高校生で大阪に住んでいますから、いつも居残りできず最終便で帰らなければならなかったんです。ですが収録後に彼女が初めて一泊できるからと言うので居残り指導をしたんですが、勘が良くて13年間のバレエで身についた体の癖を即座に直したんです。私はその運動神経の良さと感覚の良さを見てびっくりして。でも、そこから先は恐らく習得しようと家でも努力し続けていたんだと思うんですよ。

LEONARDのショーでキャットウォークする平田かのん ©︎FASHIONSNAP.COM

ー実際にパリコレでモデルオークションに受かり「アフターホームワーク(AFTERHOMEWORK)」や「レオナール(LEONARD)」のランウェイを歩きましたが、平田さんのウォーキングは堂々としたものでした。

 彼女は服を着た瞬間の感触を大事にしているようです。レオナールのショーでは「風になびくと綺麗に見える服だと思うから、風を感じるようなウォーキングを」と思ったそうですね。音に乗ってナイフのような鋭さを見せたモデルが多かった中で、彼女は音にはちゃんと乗りながらもスッとした歩き方で、エレガントを表現できていたんですよね。想像以上に良くて、感動しすぎて涙を堪えるのに必死でした。これはお世辞ではなく、本当に平田が着ていたドレスを1番欲しいと思えました。そう思わせることが本当のモデルの仕事だと私自身は思っているので、本当に嬉しくて。このショーを見て、もう教えることは何もないなと思えたほどです。

LEONARDのショーフィナーレ ©︎FASHIONSNAP.COM

ー平田さんにはどういうモデルになってほしいですか?

 当たり前のことですが、どんなに売れても謙虚であってほしいですね。針子さんや舞台のセッティングをする方、ほかにも何百人という方が携わり、初めて1つのショーが成り立ちます。モデルは確かに目立つ仕事ではありますが、横柄にならず現場で会った全員に挨拶ができる、感謝できる人であり続けてほしい。感謝できない人はトップにいたって本物を表現できませんから。愛されるモデルが残っていくので、愛され信頼されるモデルになってほしいと思っています。

 

帰ってきたパリコレ、ライフワークに

ー1期生に続き2期生もパリコレを歩くという目標に到達したわけですが、アン ミカさんが指導をする上で気をつけていることは?

 "指導"は"指摘して導く"と書きますよね。指導者が勝手に理想を掲げて感情的にぶつけていたり、理由を伝えないまま叱り続けるのは、指導ではなくハラスメントです。私は厳しいことを言うときほど、1人1人に合わせて細かく説明するようにしていますね。気が強くはっきり言った方がいい生徒には、英語の文法のように結論のダメ出しから伝え、心が折れそうになっている生徒は良い部分を褒め、その上で高い目標があるのならばこれが足りていないと伝えたり。

ーそういった「パリコレ学」に対する熱量はどこからきているのでしょうか?今回のパリも自費で来られたと聞いています。

 今回は制作予算の関係でパリに同行できないとなってしまったんですが、それなら私は自費で行くから大丈夫ですと言いました。ランウェイを歩けるか分かりませんでしたが生徒の姿は見届けたいですし、彼女たちのモチベーションにもなると思ったからです。あと実はパリコレ学のおかげで、私自身が誰かを導く役割ができるんだという自信にも繋がっていて。制作の方々は「この企画があるのはアンさんのおかげだ」と私を立てるようなことを言ってくださいますが、むしろ逆。私はこの仕事を任せてもらえて、本当に感謝の気持ちでいっぱいなんです。この企画が始まった頃は、テレビの制作とファッション業界の見せ方やルールには異なる部分もあったので、トラブルが多くありましたね。見え方を大事にするファッションサイドの考えと、視聴率のためにいいところを抜粋して面白くしたいというテレビ局サイドの考えの相違など。どちらの考えも分かる立場として、難局を乗り越えなければという使命感もありましたし、大好きなファッションの番組に携われることへの喜びもあり頑張ってこれました。その集大成のラストに私がパリにいないでどうするんだと。パリコレを歩いた26年後に、見る立場としてパリに戻ってこれたのも「パリコレ学」のおかげ。これからもライフワークとして毎回来れたらと思っているんですよ。

ー今後もパリコレに関わっていくんですね。

 日本にはTGC(東京ガールズコレクション)など独自のファッションショー文化があり盛り上がりを見せていますが、それだけではなくパリコレに出ているデザイナーのように、グローバルなテーマやメッセージを込めて1点1点を大事に作る服の素晴らしさも知って欲しい。そこで服に魂を吹き込むことができるのがコレクションモデルだと思うので、その素晴らしさを多くの方に知ってもらえるよう活動していきたいと考えています。

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■ 人気企画「パリコレ学」はどう生まれた?キーマンたちに聞く裏話
Part 1:放送作家:堀江利幸
Part 2:ディレクター:山内健太郎&プロデューサー:内藤結葉
Part 3:モデル:平田かのん

■ 第1シーズン「パリコレ学」小野寺南友モデルデビューへの挑戦に密着
全編を読む>>
Part 1:キャスティング編
Part 2:ランウェイ編
Part 3:インタビュー編  【小野寺南友アンミカ

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